団子屋にて。4
「っはぁ~~!」
ぶはぁ、と疲れを吐き出しどてっと席に座る。尻餅に近いのは置いとこう。
常連様と話すのは楽しいのだが、さすがに団子を運びながら何百人と喋るのは疲れる。そうだ、閉店札を出しとこう、ともうすぐ店の終わりを告げる鐘を聞いて思いだし、とてとてと奥へ札を取りに参るとまたもカランカランと鈴が鳴った。夜分遅くに誰だろうか。またあのお役人様か…といささか仏頂面で「なに、」と扉を勢いよく開けると、そこには丸い帽子を被ったショートヘアの男の子が立っていた。男の子と呼ぶには身長が俺と同じくらい…いや、少し高いぐらいだろう。しかし顔付きは少し幼く、身長を除いたらだいぶ小さくみられる。その子は「こんばんは」と帽子を取って挨拶をする。頭をさげた時に大胆なあほ毛がぴょこん、と揺れた。
「そんなしかめっ面しないでくださいよ、新聞者のものです。お上がりしてもよろしいでしょうか。」
首をかしげられながら尋ねられると、自分が初対面に向かってひどい顔を向けていたことを思い出す。ハッとして直ぐ様笑顔を貼り付け「どうぞどうぞ、もうすぐ閉店なのであまりお話はできませんが」と、閉店間際のことを理由にあまり相手をしたくないということを隠した。
「ああ、それはすいません。ちゃんと調べてくるべきでしたねぇ…では後ほど。あ、僕…いや、私こういうものでして。」
軽く謝罪され名刺を押し付けられるように渡される。そこには「新聞記者 ろろろ」という文字が。
「ろろろ…?ん?ろ、ろろ?ろろ、ろ?」
イントネーションに困って何度も名前を口に出していると、ケラケラ笑って「そんなに呼ばれちゃ照れますよ」と微塵も照れずに言う。すると、すぐにフォローするように、
「ろろろですよ。だんだん上がる感じです。」
難しいですよねー、と他人事のように笑う彼。なんだか苦手だなぁ、とふと思う。今日は散々だなーなんて物思いに更けていると、相手が自分が相手にするの面倒、と感じたらしいのか「あ、じゃあこれにておいとまさせて頂きますね。」と短く挨拶しそのまま暗闇に姿を眩ましてしまった。
「明日…お役人様、あ、カロさんか。あとあの新聞記者…ろろろさん、かな、予約は。」
その面子にうへー、と顔を歪める。やな人勢揃いじゃん、と内心毒付く。ふぁあ、とあくびが出たのでつい、と時計を見てみるともう12時が迫っていた。早くお風呂に入って寝るか、と考えながら用意するのであった。