団子屋にて。2
「ご馳走様でした」
パンッと律儀に手を合わせ会釈するなお子さん。
「お粗末様でした」
姿勢を正し、正座をして床に手をつき深々と頭をさげる私。
「まぁまぁ、そんな堅くならないで。なんなら敬語もとってくださって結構ですよ?」
ふふふ、と柔らかく微笑みかける相手。その言葉は非常に嬉しかったのだが、しかし彼女はひとつだが年上なわけで、私は年下だ。上下関係が厳しいこの世の中、下手したら年齢が下というだけでも差別を喰らってしまう。実際に見た。
「お言葉はありがたいですが、お気持ちだけ受け取らせていただきます。」
眉をよせて笑みを作る。心なしか相手も残念そうに笑って帰っていった。
ハッとして体を起こす。今は何時だろうか、看板も閉店のままだ。急いで時計を見ると2つの針はちょうど12、正午を刺していた。ふぅっと安堵の溜め息をつき、調理場へ向かい水につけていたままの皿を洗う。あと一時間でお役人様がくるんだった、と自分の目覚めの良さに久しぶりに感謝した。なんで寝てたんだっけ、と昼寝の原因を考える。記憶が飛んでいるらしく、うまく思い出せない。なお子さんが来てたのは覚えているんだけどなぁ、と頭を抑えうーんと唸る。ふと、食器棚の隣を見やると大量の調理済みの団子が。律儀にみたらし、あんこ、普通のものとわけているところが私らしい。一仕事終わって眠っていたのか、と勝手に一人でガッテンがいった。
やかんに水をいれ、お湯を作ろうとしていたところにカランカラン、と本日二度目の鈴の音。
看板裏返さなきゃ、いやこれが終わったあとでいいか。なんて考えながら玄関に足を運ばせる。最近のお役人様はすぐに機嫌を損ねる人が多く、下手したらここも潰されかねない。機嫌取るの疲れるんだよなぁ、と内心愚痴りながら玄関をあける。
「いらっしゃいませ、心よりお待ちしておりました。」
一歩後ろにさがり、深く頭を下げる。すると、前方から明るめの声が。
「どもども!ここが評判のお店と聞いて予約とっちゃったんですよー!、あれ?他に人いないんですね?」
挨拶するや否や、ぺらぺらと言葉を紡ぐ。なんだかおしゃべりなお役人様きたなぁ…。