団子屋にて。1
「はぁーかったるい。」
本音をぼそり、と呟くとまだ渇いていない頭をがしがしと布で拭く。髪を乾かす機械がほしいなぁ、などと思っているとカランカランと玄関の鈴の音がなった。まだ閉店じゃないのにお客とは。駆け足で予約表を見るがあったとしても13時からで8時からの予約などない。誰だろう、という不審感と看板見ろや、という苛立ちに襲われる。まぁどうせどこぞのえらい貴族サマだろう。
「はいはーい、」と愛想笑いをして玄関をあけるとそこには私の団子屋の目の前にある茶屋の主人が。
「どうされました?こんなお早くに。」
率直な疑問をぶつけると、相手は後ろで高く結った明るい茶髪を揺らしながら「おはようございます」とまず挨拶をしてきた。
「いえいえ、久しぶりにお笹さんの団子が食べたくなりまして。よろしかったですか?」
にこり、と裏表のない笑顔を向けられればNOと言えなくなる。この主人はなお子さんといい、先程言った通り茶屋の女主人だ。
「どうぞどうぞ、汚いところですがお上がりください。」
「汚いだなんてそんな。丁寧に掃除してあって素晴らしいじゃないですか。」
「ふふ、そんな。」
あはは、と無邪気に笑いが店内にこだまする。失礼しますね、と一言言ってその場を離れ、調理場につく。作り置きしておいた団子を3つずつ串に刺し網の上にのせて火をつける。くるくると器用に回し、焼き目がついたら団子を引き上げみたらしにつけ、更に同じものを2つのせる。「お待たせしました」と団子と共にお茶を出す。茶色にお茶を出すなんて自分も命知らずだな、と出したあとにふと思った。
「相変わらず美味しいですねぇ、お笹さんの団子は。」
団子を受け取るや否や、早速串を手に取り団子を食べる彼女。この人は嘘はつくが裏表がないので、その言葉は本心だとすぐわかると同時になんだか照れ臭い気持ちになった。