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Three Point Five  作者: 御告げ人
boy meets girl ─第一章─
2/13

Escape from rules.

帝国の城内から

何とか出て来れた。

外は既に夜で、

城門を照らす灯火が美しく感じた。


凄く綺麗だ。


まあ、ここまで来れたのも

俺の前に居る兵士と

ガラスクラッシャーこと

"素足"のお陰なのだが、

怪しまれる事は何度か有れども

いよいよ城門から出るべく、

何故か茂みの方へ走る三人。


茂みの中にしゃがんで座り、

俺は城門を睨んで口を開く。


「おい、兵士。

見張り番が居るぞ。

まさか俺達を

引き渡すつもりじゃあ....!」


「まあ、待て。

そろそろあいつらは交代の為に

あの場所を退()く筈なんだ。

その機会を狙うぞ。

それに考えてもみろ

俺が城門番に引き渡したとして、

俺は功績を称えられる前に

無計画な脱獄首謀を称えられるだろうが」


俺はぼそっと、


「デッドエンドだな」


一方ガラスクラッシャー、


「いや、アホだろー」


「まあ置いておいて、だ」


兵士の締めに俺が頷いたのに反して、

隣に居たガラスクラッシャーこと、

素足の背の高い青年が口を開く。


「"交代する側"は直ぐに来ないのか?」


しばらくの沈黙、だが

直ぐに兵士が口を開く。


「城門警備も国に

仕える仕事の一つだぞ、

座って話すだけで金が

貰える仕事が有るくらいだから、

だらけた奴らは時間通りに

交代する訳ないだろう」


要するにしばらくは来ないらしい。

肩書きだけの名誉だなー、

とガラスクラッシャー。


というか、

その御国に仕える方が

直々に言っちゃったよ、真顔で。


すると城門前を

見張っていた兵士二人が、

時計を確認した後、だらだらと

話ながら俺達が出て来た

城の中へと歩いて行く。

交代の二人組が来る気配はない。


「「本当だ」」


俺達二人の反応を

見て兵士が愉快そうに笑った。


「俺がまだここに就いてる身なら、

この現状を皇帝に告げてお前ら一緒に

牢にぶち込むところなんだがなあ....」


俺は立ち上がってその続きを述べる。


「それが出来ないから逃げる、だろう?」


隣のガラスクラッシャーも頷いて、


「走るか?」


「「おう!」」


がら空きの城門へと

三人の残念な逃亡者が

走って茂みから出てくる。


まあ、お約束通りその現場はバレる訳で、


「おい!お前ら、何してる」


髪を逆立て鳥肌が総毛立つ、

三人同時にゆっくりと振り返る。

次いでに内心も

三人 一緒で、"逃げるか?"である。


だがそこに居たのは、

囚人だった。それもかなり細い。


「ホルクか」


俺の呟きにホルクなる

ガリガリの男が頷いた。


「脱走にしては、妙だな。

何で兵士も?アンタ変装でなけりゃ

本物のここの兵士だろう」


そうだ、ホルクは勘の鋭い男だった。


だが兵士の方は至って冷静。


「いくらだらけてても

交代がそろそろ来る、話は後だ」


ガラスクラッシャーは何故か笑顔で、


「オレは先に行くぞー」


素足で駆けて行った。

俺はホルクの存在理由を問うべく、


「アンタも脱走か?」


「人聞きの悪いことを言うなよ。

殺されてたまるか。俺はここじゃ

模範囚って形で通ってるんだ。

...外出許可証がやっと出たから

買い物に行くんだよ!

次いでに今アンタらと一緒に居たら

俺まで脱走かと怪しまれるだろうがよ!

頼むからさっさと離れてくれないかっ!」


「言われなくてもっ!

じゃあな、元気でやれよ!」


「ああ!見つかるなよ!」


そう言い合って別れる俺とホルク。

俺は二人の背中を追って、

人気のない街角へ入り、

路地に飛び込む。


兵士は俺を確認すると、

静かに確かめ始めた。


「口外するなと

口止めでもしてきたのか?」


「無駄だろう、

もう少なくとも俺と

アンタは審問の時に顔が割れてる」


「やっぱ、

ドラゴン呼んでから

ステンドグラスを

カチ割った方が良かったかー?」


当初の脱走計画はそうだったのだ。

突如、ステンドグラス割って

現れたドラゴンが暴れだして

囚人と槍兵を食らう....。


まず冷静に考えて、

連れてこられないと言うことと、

人の飼うドラゴンは人を

絶対に食べない事に思い至り、

満場一致でボツになった。


何より、

本当に食われでもしたら、

ある意味首吊りよりも(むご)い。


「どのみち、

ガラスクラッシャーは

ガラス割ったんだな。今思えば」


「オレの呼び名は

ガラスクラッシャーか?」


三人の協定の中では、

本名は教え合わない事になっている。

理由は無論、三人のうち

誰かが裏切る可能性があるからだ。


「じゃあ、なんて呼び名がいいんだよ」


俺の問いに兵士は

ガラスクラッシャー(仮)に付け加える。


「本名言うなよっバカ!」


ギクッとなって

判ってるよ、と言うと、


「....ガラクラ」


兵士の微妙な反応。


「ガラクタみたいだな」


「じゃあ、オッズでどうだ?」


俺の提案に目を輝かせる

ガラスc.....否...オッズ。


すると兵士も頷く。


「なるほど、odds and endsか

いいな、なんかその呼び名」


意味は要するに

"半端もの"や"ガラクタ"の意をさす。


「じゃあ、

アンタの呼び名を

オレが決めていいかー?」


「構わないが、

変な名前付けるん

じゃないだろうな?」


するとオッズは

真剣な顔でこう言った。


「ルー(rule)」


兵士はそれを訊いて、


「規則、か。

いいんじゃないのか?

本名を出さない自体、

お前が言い出してきたのを

俺達は難なく承諾したんだしな」


オッズはうんうん、と

頷いてから俺の方を見る。


「この名前はきらいか?」


「いや、

全くもって嫌じゃないよ。

むしろ俺は今、凄く嬉しい」


すると兵士は口を開いて、


「じゃあ、俺の呼び名は───」


「「ああ、アンタは兵士な」」


俺とオッズが

魔的な笑みを顔に浮かべて

二人揃えてそう言うと、

兵士は泣きそうな顔で、


「ええー」


「安心しろよー」


「俺達が何か考えてやるからよ、"兵士"」


俺達の路地での怪しい密会は続く──。

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