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サイバーバトル【サイバト!】  作者: 澤崎 祐二
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ファーストバトル!

初めまして作者の澤崎裕二及びクロートと申します。

この作品は、自作TRPG「サイバト!」というものを元に作成しています。

TRPGにご興味のある方は感想などでお声を掛けてくださるとうれしいです。

いま現在、この前書きをさせていただいている時点では、自作TRPG「サイバト!」は公開されておらず、テストプレイを重ねて、公開をするにあたって検討中です。

もし公開するときや予定ができましたら、後書きでお知らせできたらと思います。

この小説では、「サイバト!」が知らない人でも読めるように、そして楽しんで読んでくださるような小説でありたいと思っています。

7月9日


今日から父さんの転勤の影響で引っ越すことになった。

引っ越し先は、日本の第二の都市と呼ばれている「倉坂市」。

父さんは「楽しいことがたくさんあるよ。」と言われた。

僕はそれを期待して、転校してきた。

……まではよかった。


転校初日。

僕は父さんと体系がふっくらした校長の五十嵐先生に挨拶をし、その後、僕は五十嵐先生と4年A組へと向かった。


「このクラスは前の学校と少し変わっているかもしれないけど、いいクラスだから友達はたくさんできるよ。」


五十嵐先生はそう言って教室へと入る。


「白井先生、今日から転校してきた小野田くんです。」


教室へ入ると、他のクラスより半分しかいない人数。

そしてとっくに授業が始まっているにも関わらず、机に座った女性は何かの本を読んでいる。


「白井先生、聞いてるかい?」


五十嵐先生が白井先生と呼んでいる女性に近づくと、その女性はようやく気付く。


「あれ?今日だっけ……?まぁいいや、どっか空いてる席座っててよ。」


恰好は教師とは思えない私服姿で、五十嵐先生は小さい溜息を吐く。

こんないい加減なクラスが存在しているなんて……。


「そこの転校生くん!こっちの席に来なよ!」


僕に話しかけてきたのは、髪が茶髪の女の子だった。

今は言われるがままに呼ばれた席まで歩いていく。


「あたしの名前は足立 志穂!よろしくね!」


「僕の名前は小野田 憲一。よろしくね」


「じゃあケンちゃんって呼ぶね!ケンちゃんのアバターは何使ってるの?」


アバター?

何かのゲームのことだろうか?


「あの、アバターって何の……?」


そういうと志穂ちゃんは驚いた声を漏らす。


「もしかしてサイバータブレットを持ってない……?」


サイバータブレット?

どっかで聞いたことあるような……。


「ほらこれがサイバータブレット!今の時代はこれがないと不便だよ!」


見せてもらったのは、薄型で小型の液晶モニターのようなものだった。

画面には可愛らしい女の子が映っていた。


「これが転校生くんなの、志穂ちゃん?」


画面に映っている女の子が急に喋りだしたことにびっくりした僕は、危うく椅子から転げ落ちそうになった。


「うん!転校生のケンちゃん!ケンチャン、これがあたしのアバターのメルカっていうんだ!」


ここまで来てようやく思い出した。

テレビでやっていたアメリカが開発したものを、さらに子供でも遊べるように作ったゲームシステム【サイバーバトル】だ。

そういえば前に住んでた地域では、サイバータブレット対応の電波が届かない関係で、僕たち子供には無縁の物だった。


「たぶんここに住むならサイバータブレットは必須になると思うよ。生活も遊びにもね。」


志穂ちゃんの話を聞いていると、僕も「サイバータブレット」に興味を持ち始めた。

父さんにお願い……しても買ってくれるのだろうか……?


「ケンちゃん、とりあえず今日はあたしと一緒にこの街を歩こっか!道覚えないと迷子になっちゃうからね!」


志穂ちゃんはかなりの世話好きなのだろう。

なんだか志穂ちゃんのおかげで、少し緊張が取れた気がする。

そうこう話していると、授業が終わるチャイムが鳴り響く。


「はい、授業終わり。今日は午前中だけだから気を付けて帰れよガキども。」


白井先生はそのまま教室を出ていく。


「……あの先生、ほんとに教師なの?」


僕は思わず、志穂ちゃんに白井先生のことを聞いた。

すると、志穂ちゃんは苦笑いしながら答えてくれた。


「いつもあの調子だよ。あの人が真面目に授業しているところは見たことないかな。」


なんだか自主的に勉強しないとテストが酷いことになりそうだ。


「まぁ五十嵐先生がいつもサイバータブレットに宿題とか授業のデータとか送ってくれるから、そこまで不安になることはないよ!」


どうやら僕の不安は顔に出てしまっていたらしい。

でもこれでテストが酷いという未来はなくなった。

そう「サイバータブレット」があればね……。


「じゃあまずはサイバータブレットを見に行こっか!」


志穂ちゃんは僕の手を引っ張っていく。

僕は戸惑いながらも志穂ちゃんに引っ張られていく。




引っ張られながらやってきたのは、倉阪市の商店街。

その商店街には、前に住んでいたところとは違い、見たことがないものがたくさん並んでいる。

僕はそれらをキョロキョロしながら見回した。

すると、志穂ちゃんの足が止まる。


「着いた!ここだよケンちゃん!」


そこは「サイバーカードショップ」と書かれた店だった。

カードショップに「サイバータブレット」が売っているのだろうか?


「ここはサイバーバトルをするのに必要なカードが売ってるの!それで、初心者でもすぐにサイバーバトルができるようにサイバータブレットが販売されているの!」


今の僕に理解できたことは、ここでサイバータブレットが買えることだけだ。

まだ買えるとも決まってはないけど……。


「もしかして親に買ってもらえるかわからないとか思ってる?ここはうちの学校と連携してて、サイバータブレットはタダで買えるんだよ!」


それを聞き、僕は驚きを隠せず、言葉に表せない喜びを感じた。


「ほ、ほんとに!?」


その様子にクスクスと笑う志穂ちゃん。


「ほんとだよ!じゃあ店の中に入って、どれにしようか決めよっか!」


「うん!」


転校初日で、いろいろ不安はあったけど、今の僕はこれまでにない楽しい日々を過ごせそうだと予感している。

ここへ来るときに言った父さんの「楽しいことがある」って言葉を実感している。


「いらっしゃい!お、志穂ちゃんか!」


「武井おじさんこんにちわ!今日は転校生のサイバータブレットを見に来たんだ!」


武井と呼ばれる店員は、ハゲて髭を生やしたおじさんだ。

周りを見ると、他に店員らしき人がいないので、たぶんこの人だけで経営しているのだろう。


「学校の生徒さんなら大丈夫だ!学生証があればタダであげるよ!」


「だってケンちゃん!じゃあサイバータブレット選ぼっか!」


志穂ちゃんはまた僕の腕を引っ張っていき、「タブレットコーナー」と書かれた棚へと向かった。

そこには「ソードマン」「ガンナー」「ナイト」「ソーサラー」「クレリック」「グラップラー」「レンジャー」と書かれたタブレットがあった。


「このソードマンとかガンナーとかってのは何?」


「それは職業だよ。サイバーバトルをするには職業はセットされてないと戦闘できないし、スキルカードもセットできないんだ。でもそこら辺はまた買ったときに教えるよ!ちなみに職業はカードがあれば後から変更可能だから好きなもの選んでいいと思うよ!」


そう言われると、なんでもいいかと思い、「ソードマン」と書かれたサイバータブレットを手にした。


「ソードマンかぁ!パワーがあるし、きっとかっこいいバトルができると思うよ!それじゃあ、そこに座って起動してみようか!」


椅子に座り、サイバータブレットを起動する。

「名前の入力」「パスワード」「生年月日」などを入力し、アバター作成までいった。


「このサイバータブレットには、既に必要なカードは読み込まれているから、ケンちゃんは名前を付けてあげることだね。」


「名前かぁ……。」


名前など考えていなかった。

何にしようか迷って辺りを見回すと、窓にカブトムシが張り付いていた。

カブトムシにヘラクレスオオカブトってかっこいいカブトムシがいたんだっけ。

ヘラクレスって名前にしようかな。

名前もかっこいいし、強そうだし、これにしよう。

僕はそのまま「ヘラクレス」と入力した。


「ヘラクレス?ギリシア神話にでてくる英雄?うん、その名前かっこいいよケンちゃん!」


どうやら何かの神話にでてくる英雄の名前と同じらしい。

なんかカブトムシから決めたなんて言いづらい。

名前を入力し、しばらく待つと、遂に念願のアバターが完成される。

そこには細マッチョで強そうには見えないが、なんだかだるそうにこちらを見ている。


「てめぇが俺のオペレーターか?気乗りしねぇなぁ。」


なんだこのアバター……。

思っていたのと違う……。

ステータスを見ると、

「職業:ソードマン」

「スキル:パワーマスタリー」「スキル:ステップブレイド」「スキル:スティンガー」「スキル:ガード」「スキル:チャージ」

「装備:ブロードソード」「装備:ブロンズガード」

「種族:人間」「属性:ノーマル」「アイテム:イエローポーション」

などが書かれていたが、強いのか弱いのかわからない。

すると、箱の中に一枚の紙切れがでてくる。

そこには、「エクストラランダムボックス引換券1回分」と書かれていた。


「あ、引換券だ!その引換券を使えば、もしかしたら強いカードが手に入るかもしれないよ!」


よくわからないが、とりあえず使ってみよう。

クーポン番号をサイバータブレットに入力すれば大丈夫かな。

入力すると、「スキル:フルスラッシュ」と呼ばれるカードが表示された。


「あ、レア3のカードだよ!しかもソードマンの!ケンちゃん運がいい!」


わけがわからないまま進めているせいか、いいカードを引いたようには感じない……。


「じゃあケンちゃんのために、サイバーバトルについて教えるね!」


僕はコクコクと頷くも、ヘラクレスはあくびをしながら気だるそうに寝そべった様子。


「まずカードについて説明するね!カードにはレア1、レア2、レア3ってレア度が設定されてて、レア度が高ければ強いカードって思ってくれてもいいよ。

 そして種類は職業カード、スキルカード、装備カード、属性カード、種族カード、召喚獣カード、アイテムカードが7種類。

 特殊なカードの種類としては特殊カード、カスタマイズカード、シークレットカードの3種類。

 全部で10種類のカードが存在するんだ!」


もうカードの種類を覚えるだけで大変そうだ……。


「それでここが大事なんだけど、カードを手に入れる方法は2つ。

 1つはさっきやったようにランダムボックスを引くこと。もう1つは仮想通貨でカードを買うこと!」


仮想通貨?

現実世界で使うお金では買えない?


「仮想通貨はたぶん最初だと1000ゴールドもらってると思うよ。あと現実世界でのお金で、カードの売買は禁止されているんだ。」


「ランダムボックスは引換券じゃないと引けないの?」


「ううん、ランダムボックスはこのお店で現実のお金で購入できるよ。

 ノーマル、スペシャル、エクストラ、あとは職業毎にスキルがランダムで引ける個別の4つがあるけど、それぞれ値段が違うから気をつけてね。」


ランダムを引くには現実世界のお金が必要なのか……。

うーん、これはお小遣いを貯めよう……。


「あ、でもね!引換券はサイバーコロシアムってサイバーバトルができる会場で大会に参加して優勝すればもらえるし、そんなにカードの入手が厳しいってわけじゃないよ!」


それなら今から大会に向けて練習しないと……!


「あぁ?なんでそんなだるいことしないといけねぇんだよ。勝手にやってろよ。」


あぁ……そうだった……。

僕のアバターはこのヘラクレスだった……。

僕はこのアバターとうまくやっていけるのだろうか……。


「変わったアバターなのね……あはは……。」


志穂ちゃん、本日二度目の苦笑いである。

何故、転校初日がこんなに濃い日になるのだろうか……。


「まぁ気を取り直して、さっそくサイバーコロシアムにアクセスしよっか!」


すると、店にあるパソコンのUSBと志穂ちゃんのサイバータブレットを繋ぐ。


「え!?サイバーコロシアムの会場ってネットの中にあるの!?」


志穂ちゃんは苦笑い。

僕はかなりの世間知らずなんだと実感する。

とりあえず志穂ちゃんの言われる通りにパソコンのUSBにサイバータブレットを繋ぐ。

すると、画面にいたヘラクレスはいなくなり、パソコンの画面にメルカとヘラクレスが表示される。

パソコンの画面には、他の人のアバターがたくさん表示されていた。


「ケンちゃん、このサーバーがバトルコロシアムだよ。あとケンちゃん、このアクセスグラスを付けるとケンちゃんのヘラクレスと同じ視界になるんだよ!」


さっそく「アクセスグラス」をつけてみる。

すると、ヘラクレスと同じ視界になり、実際にそこにいるかのような感じだ。


「おい憲一、俺はバトルなんかやらねぇぞ。そんなことより酒が欲しい。」


「ヘラクレス、少しは主の憲一くんのことを考えてあげなさい。」


メルカがヘラクレスに怒ってくれるのは少し嬉しいが、「アクセスグラス」をつけて視界を同じにしているせいで、自分も怒られているように感じてしまう。

それにしても、ヘラクレスとどうやってこれから一緒にやっていこうか考えなければならない……。


「まずはそこのビギナークラスで戦い方を教えてあげる!メルカと一緒に来て!」


ヘラクレスはやる気なしだが、メルカが強引に引きずっていく。

なんだか、メルカも志穂ちゃんと似ているな……。




ビギナークラスのバトルコロシアムに入ると、そこでは僕と同じくらいのレベルのみんながバトルをしている。

ヘラクレスは相変わらず、あくびをしながらバトルを眺めている。


「ケンちゃん、とりあえずそこのトレーニングコロシアムで練習しよっか!」


トレーニングコロシアムに入ると、ヘラクレスとメルカの上にHPが表示される。


「まずはメルカに攻撃してみて!」


「どうやって攻撃するの?」


「うーん、ケンちゃんができることはヘラクレスに攻撃を任せるか、スキルの使用を指示するかぐらいなんだけど……。」


志穂ちゃんとメルカはチラッと僕とヘラクレスを見る。


「ふん、こいつの指示なんかいらねぇよ。俺の好きなようにさせてもらうぜ。」


ヘラクレスは僕の指示を待たずに、いきなりメルカに攻撃を仕掛ける。

しかしヘラクレスの攻撃はでたらめで、やる気が感じられない攻撃をメルカはいとも簡単に躱していく。


「ヘラクレス、攻撃するならもっと当てるように攻撃しないと躱されちゃうよ!」


「わざとだよ!こんなめんどくさいことはさっさと終わらせろ!」


僕とヘラクレスの息が合わず、メルカもだんだんめんどくさそうな顔をしている。

すると、ヘラクレスは攻撃をやめ、「やーめた。」と一言いってトレーニングコロシアムから出ようとする。

しかしメルカは素早い動きで、ヘラクレスを先回りにし、ヘラクレスを蹴り飛ばす。


「あのね、ヘラクレス。そんなんじゃ憲一くんが可哀想だし、私もあんたと戦闘の相手をしてもめんどくさいと思っちゃうよ。」


メルカの怒りをヘラクレスは立ち上がり聞いている。

すると、ヘラクレスは「ブロンズソード」を握り直し、メルカを睨みつける。


「どう?少しはやる気になった?それなら次はちゃんと攻撃を当てにきなさい。」


「あとで泣きべそかくなよメルカ!俺の本気を見せてやるぜ!」


先ほどとは別人かのようなヘラクレスに僕は息を呑んだ。

ヘラクレスはメルカに素早い剣さばきで攻撃を仕掛ける。

メルカは余裕ではなくとも、ヘラクレスの攻撃を躱す。


「そんなんじゃいつまで経っても、あんたの攻撃は当たらないよ。」


「ちょこまかと動きやがって!くそ!!」


ヘラクレスの攻撃は次第と大振りになり、メルカは再びヘラクレスの攻撃を余裕を持って躱していくようになる。


「ヘラクレス、僕の話を聞いてくれ!」


「うるさい!いま忙しいから後にしろ!!」


やはり僕の言葉は聞く耳を持たないらしい。

だけど、僕はそれでも言葉を続けた。


「ヘラクレス、それでも聞いてくれ!無闇に攻撃をしたって、メルカの素早い動きには意味はない!もっと策を練らないとダメだ!!」


ヘラクレスは僕の言葉を聞くと、舌打ちをした。


「気に入らねぇなぁ。俺は考えるのは大っきらいなんだ!だからよぉ!」


メルカへの攻撃は再び正確になっていく。


「あの小娘を泣かせられるなら、てめぇの言うことをちょっぴりなら聞いてやってもいいぜ!だが、それができないならもうてめぇの言葉は聞かないぜ?」


僕はいま心が躍っている。

いまヘラクレスが僕の言葉を聞いてくれる。

一緒に戦うことができる。

いまの僕とヘラクレスなら、確証はないけど、誰にも負けない!


「まずはメルカに隙を作り、そこでスキルを使うんだ!」


「隙を作るってどうやんだ?」


「余裕がなくなるくらいに正確で素早い動きで攻めるんだ!」


「簡単に言ってくれるな。まぁやれるだけやってるさ!」


ヘラクレスは僕の言った通りの動きで、メルカを攻めていく。

メルカも余裕がなくなり、躱すのに一苦労している様子。

そしてメルカは躱すときに、身体がよろめいた。


「いまだヘラクレス!!【スティンガー】だ!!」


ヘラクレスはメルカに向けて、素早い突きでメルカへ攻撃をする。

しかし、メルカは間一髪でそれを躱す。


「おしかったわね、ヘラクレスに憲一くん。悪くない攻撃だったわ。」


メルカはヘラクレスに振り向きながらそう言うと、ヘラクレスはニヤリとした顔で攻撃を構えていた。


「でっかい隙を作ってやったぜ憲一!!」


「いけ!!【フルスラッシュ】!!」


ヘラクレスは剣を大きく振り下ろし、メルカに攻撃を与えた。

メルカのHPは一気に無くなってしまい、僕とヘラクレスは勝利した。


「やったぁ!!勝ったぁ!!」


僕の心には手加減してくれたとは言え、心が踊った。

いままでの人生で、こんなに心が踊っているのは初めてだ。


「いやぁケンちゃんに一杯食らわされちゃったね、メルカ」


「あーあ、やられちゃったより、ヘラクレスをやる気にさせることに疲れちゃった。」


メルカはその場で座り込んで一息ついた。


「まさか素早い突きの【スティンガー】が攻撃じゃなくそこから大きな隙を作り、自分に隙が多くなる代わりに大振りで大ダメージで攻撃することができる【フルスラッシュ】を仕掛けてくるなんて、ケンちゃんってもしかして才能あるんじゃないの?」


「本当は【スティンガー】を仕掛けるまでは【スティンガー】を当てる気でいたけど、ヘラクレスの動きを見ていたら、ヘラクレスを信じてみたくなったんだ。」


ヘラクレスの動きは、僕の予想できないような動きをする。

だから僕はヘラクレスを信用できた。

ヘラクレスを信用すれば勝てる気がしたからだ。


「頭を使うのはこれっきりにしたいもんだぜ。もうバトルなんかごめんだな。」


バトルが終わるといつものヘラクレスだった。

もっとこう、「これからは一緒に闘おう」とかそんな雰囲気でもいいんじゃないだろうか……。


「とりあえずこれなら私たちと組んでも大丈夫そうね、メルカ!」


「そうね~、ヘラクレスがもう少しやる気になってくれればねぇ~。」


「組んでも」って一体……?


「あの、志穂ちゃん。組んでもって一体どういうこと……?」


志穂ちゃんはニヤリとした顔で僕を見る。


「明後日はビギナークラスのタッグ戦があるんだ!それにケンちゃんと一緒に出れば優勝間違いなしって話!」

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