眼球
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木崎が俺の前に顔を合わせてすとんと座ったかと思うと、いきなり俺の瞼をおさえてきた。
「何、痛いん……ひえっ!?」
抗議する間もなく眼球をべろりと舐められ、赤く熱い舌先が視界を埋め尽くす。
「何すんだよ!」
「目玉を喰らってやろうと思うてな」
「なんだそりゃ」
目を擦りながらそう返すと、木崎は楽しそうに笑った。
「二見クンは目があんまり大きく無いね」
「……うるさいな」
木崎は、腹が立つくらいに綺麗な顔立ちをしている。
喜怒哀楽どの表情をしても絵を描いたように美しい。
まだ未完成な成長であるのに、きっと誰もが彼に見とれるだろう。おまけに八方美人とくれば、俺のような馬鹿が増えるのも頷ける。
俺がふてくされたような表情をすると、木崎は「俺の眼も食べて良いよ」と意味の解らない事を言ってきた。
「は? なんで」
「要らないの?」
「要らないよ」
「俺は二見の目ん玉欲しいよ」
「……キモいなー」
「俺が食べちゃえばさ、二見は最後に俺を見て、それから何にも目移りしないから」
俺がいつお前以外に目移りしたよ。
一体どの口が言うのかと、彼をぶん殴りたくなった。
けれどその僅かに見せる独占欲のようなものに、俄かに優越感がわき起こる。
こいつは、ちゃんと俺が好きなのだろうか。
「俺は、木崎にとってなんなんだ?」
疑問を素直に口にすると、彼は幼い子供のように瞬いた。
「今更、何言ってんだよ」
「言えよ」
「何を」
「口に出して言え」
ムキになっている。こんな事で。
「どうしたの、二見クン」
木崎が声をたてて笑うから、一気に自分が馬鹿らしくなった。
「……どうもしないよ」
別に、どうもしない。
少し期待しただけで。