第18話:格闘道場の入門者
俺は、格闘道場を訪問した。
今のままでも十分強いが、来るべき戦いに備えて、鍛錬をしようと思ったからだ。
そう思ってやって来たら、中で小野山と遭遇した。
「小野山さん?」
「坂上か」
表に小野山格闘道場と書かれていたのを思い出す。
「ここ、あなたの?」
「ああ。ここ、じいさんの道場なんだ」
「そうなんだ」
「坂上は何しに来たんだ?」
「私は、ここへ入門しに」
「今のままでも強いだろ?」
「来るべき戦いに備えようと思ってね。それに私、独学だから格闘技の知識なくて。道場長はどこかしら?」
「今、遠征に行ってるよ。私はここの留守を頼まれたんだ」
「遠征?」
「道場経営者同士の交流戦をやりに行ってるんだ」
「そう……なんだ?」
「来るべき戦いって?」
「昨日の怪物の親玉と戦う時、かな」
「そうか。お前もお前で大変なんだな」
「それより、小野山さん、楓のこといじめてたよね?」
「え?」
「あの子、私の初めての友達なの。いじめたら赦さないからね」
「わかったよ。あんたを敵に回したら怖いからね」
その時、道場の門下生が何人か姿を現した。
「帰って来た」
小野山が玄関へ駆け出す。
「今戻ったぞ。今年もうちの道場が優勝じゃわい。変わりはないだろうね?」
「おかえり、じいさん。入門希望者が来てるよ」
「入門希望者じゃと?」
俺は小野山の祖父である道場長に姿を見せた。
「こりゃまためんこい希望者じゃのう。入門の希望理由はなんじゃ?」
「道場長さん、最近、怪物が現れるようになってるの、ご存知ですよね? 私はあのようなものから人々や街を守るため、力をつけたいんです。入門させてもらえますか?」
「メタン人じゃな」
「メタン人?」
「遠征中にワシんところの門下生が襲われてのう。その時に聞き出したんじゃわい」
「で、そのメタン人とやらはどうされたんですか?」
「粉々に砕いてやったわ」
「そうですか」
「そうじゃ。入門希望じゃったな。入門テストをしようじゃないか。心の準備は良いか?」
「いつでも大丈夫です」
「ならば奥の稽古場まで来なされ。門下生たちは遠征で疲れておる故、ワシが直々に相手をしてやろう」
俺は道場長の後を追い、稽古場へやって来た。
「さて、まずはお主の攻撃力を見極めるでな。本気でかかってこい」
「そんなこと言って、大丈夫なのじいさん?」
と、小野山。
「彼女、かなり強いよ」
「お前は黙っておれ」
俺は精神を集中させてマナを高める。
「む?」
「……?」
「お主、マナの使い手か。ワシ以外にもコントロールできるものがおるとはのう」
「道場長さんもマナをコントロールできるんですか?」
「まあ、なんじゃ。本気でかかって来なされ」
俺はマナを最大値まで高めた。
「行くわよ!」
俺は道場長の懐に高速移動し、鉄拳を叩き込んだ。
「ふん!」
拳を受け止める道場長だが、ほんの数センチほど後ろに下がった。
「合格じゃ。教えるものがいないのにここまで強いとはな。育て甲斐があるのう」
だが──と、続ける道場長。「お前さんの攻撃は基礎がなっておらん。それではただの喧嘩じゃ」
「だと思ってたんですよね」
「明日から早速、稽古をつけてやろう。ビシバシ鍛えるからのう。覚悟しておけ」
こうして、俺は小野山道場に入門したのであった。




