第15話:邪神の復活
俺は聡美の姿で加賀美家に戻った。
「おじさま」
俺は父親に声をかけた。
「なんだい?」
「健さんを家に置いているのは、邪神として覚醒するのを恐れてのことですか?」
「なぜそれを?」
「片桐隊員に聞きました」
「片桐? ああ、彼に会ったのか」
「公安の猪俣さんにも会いました」
「そうか」
「健さん、今は?」
「それが、朝から姿が見当たらないんだ」
家を出たのか!?
俺は健さんの部屋へ駆け込んだ。
誰もいない。
健さんに電話してみると、応答した。
「そろそろ君が電話してくるころだと思ったところだよ。もう加賀美家には帰らないから」
「覚醒したの? テラ星の邪神様さんよう!」
「覚醒? 何を言ってるの? 俺、元から邪神だったけど? 本当は君ともっと親密な関係になって、取り込んで地球を征服しようと思ってたけど、うまくいかなかったみたいだね」
「騙したのね?」
「君とは戦うつもりはない。こちらに来てくれるかい?」
「いや、私は地球で育った地球人。自分の星は守る」
「そうか。交渉決裂か。残念だ。好きだったのに」
「こんなこと、もう辞めてよ」
「嫌だ」
「さて、手始めに渋谷を破壊しようか。手下の猛攻から渋谷を守れるかな?」
「ふざけんな!」
俺はスマホを床に叩きつける。
スマホは壊れてしまった。
「もう勘弁ならねえ。コウノトリ、絶対潰す!」
俺は加賀美家を飛び出した。
渋谷に着くと、辺りは破壊の限りを尽くされた後だった。
「間に合わなかったか……」
怪物の姿を発見した。
その先には逃げ遅れた子どもとその母親がいた。
母親が子供を怪物から守ろうとしている。
俺はバトルシステムを起動した。
{ERROR}
「え?」
ブレスレットが外れ、俺は弾き飛ばされた。
「うわああああ!」
そうか。聡の姿じゃないと使えないのか。
ブレスレットが怪物の前に転がる。
「最悪だな……」
怪物がこちらに気づき、ブレスレットを拾った。
「パワーを感じる」
怪物がブレスレットを装着。システムを起動し、ガーディアンナイトに変身した。
「やばい」
ナイトがこちらへ歩み寄ってくる。
「俺以外でも使えるのか」
片桐隊員がやって来た。
「面白いことになってやがるな」
「皮肉はやめて下さい」
「システムを奪い返すぞ」
片桐隊員が駆け出す。だが。
「うわ!」
ナイトに弾き飛ばされた。
「片桐さん!」
片桐さんに駆け寄る。
絶命していた。
「貴様!」
俺はナイトの懐に駆け込んだ。
ナイトに攻撃し、怯ませた隙にシステムをシャットダウンさせ、変身が解けたところに、マナを纏った鉄拳を叩き込んだ。
「うっ!」
爆裂霧散する怪物。
ブレスレットが転がり落ちる。
俺はブレスを拾った。
「片桐さん……」
俺は気合で地面を掘り起こし、片桐隊員の遺体を埋めてあげた。
「赦さねえ……」
俺は聡に変わると、ブレスを装着した。
そこに、猪俣さんが現れる。
「片桐くんは?」
俺は振り返理、首を横に振った。
「そんな! 嘘よ!」
「そこに埋めた。冥福を祈ってあげて」
「いやああああ!」
叫ぶ猪俣さん。
「猪俣さん、邪神の居場所、わかりますか?」
「え、邪神の居場所?」
「どこから手下を操ってるのかなって思って」
「邪神の正体ってなんなの?」
「加賀美財閥の跡取り」
「聡美さんの彼氏が?」
「あんなやつ、もう彼氏じゃないわよ」
「なんであなたが言うの?」
「だって」
俺は聡美に姿を変えた。
「そう、あなただったのね」
聡に戻る。
「猪俣さん、行きましょう。片桐さんの仇を取りましょう」
「そうね」
俺たちは邪神マデラの器である健の居場所を探ったが、しかし、有力な情報は得られなかった。
ひょっとしてテラ星に移動したのか?
「猪俣さん、テラに行くには?」
猪俣さんは首を横に振った。
「我々の科学力ではとてもじゃないけど辿り着けないわ」
「父さんがいればな……」
「坂上博士ね。本当に惜しい人を亡くしたわ」
「タイムマシンでもあればな……」
「タイム?」
ああ!──猪俣さんが叫んだ。「タイムマシン、あるわ」
「え?」
「まだ試作段階で有人で試験したことはないんだけど、防衛軍が開発したらしいの」
「なんだって!?」
「そうと決まれば、基地に行くわよ!」
俺と猪俣さんは防衛軍の東京支部に向かった。
防衛軍研究課に訪れ、タイムマシンの使用許可を要請する。
「しかしあれは試験段階でね。有人では何が起こるかまだわかってないんだ。使用するわけにはいかん」
「全ての責任は私が取るわ!」
「そう言われても……」
「大丈夫。適任者がいるから?」
「え?」
猪俣さんは俺を指した。
「ちょっと待って。誰がやるって言った?」
「お願い。地球存亡の危機なのよ?」
「無茶振りだよ。死ぬかもしれないんだよ?」
「滅多なことでは死なないでしょ、あんた」
「う……」
研究員は俺たちを連れてタイムトラベル装置のある部屋へ移動した。
「これで過去に戻ることはできるが、元の時代には戻ってこれないかもしれない。それでも行きますか?」
「どうしてですか?」
「タイムマシンはつい最近完成したんです。過去には存在しないんですよ」
「構いません。未来が変えられるなら、なんだってやってやる」
「じゃあ、カプセルに入って下さい。時代はいつに設定しますか?」
「五年前だ」
「了解! 歴史設定は五年前! 未来から過去まで自由自在! 飛んでいけ!」
研究員が装置を起動させると、カプセルの中の俺は、五年前の新宿に飛ばされた。