第14話:バトルスーツ
俺は更衣室に入った。
「これを腕にはめてくれ」
片桐隊員がブレスレットを渡してきた。
「これは?」
「我々の組織が開発した、ガーディアンナイトの変身装置だ」
「は?」
「君は、子どもの頃、竜騎士ガーディアンナイトが好きだったと、美香から聞いている」
「美香?」
なぜここで彼女の名前が?
「そうだろ、坂上 聡くん?」
「なんで俺の名を?」
「美香は私のいとこなんだ」
「そ、そうなの!?」
ぶったまげたぜ。
健さんの親父さんのいう組織と繋がるとは、世界は狭すぎる。
「変身装置って言ってたけど、ガーディアンナイトは特撮ですよね?」
「いや、あれは臨床番組だ。表向きは特撮を通していたがな。撮影には大きなコストがかかって撮れなくなったから、二話で終わったのもそのためだ」
「そんなことって……」
着ぐるみなんか買わなきゃよかった。
「猪俣さんは、猪俣さんも俺を知ってるのか?」
「ああ。彼女は同士だからな」
そういえば──と、続ける片桐隊員。「公衆トイレで君と入れ替わるように入っていった女の子、覚えてるか?」
え、見られてた?
「あの子、どこへ消えちまったんだろうな。君が出ていった後、調べたんだ。まるで神隠しにあったかのように忽然と姿を消していてな。コウノトリの関係者だったのかもしれないな」
「その女の子って、この子?」
俺は聡美に変身した。
「か、変わった?」
「俺、二つの体を自由に変えることができるんです」
「どういう原理なんだ?」
「後、この間、コツを掴んで、服装だけのチェンジも。例えば……」
俺は着ぐるみを装着した。
「ガーディアンナイト?」
俺は聡に戻った。
「着ぐるみですけどね」
「そうか。君か。君が巷で噂のにせガーディアンナイトだったのか」
「にせって……」
「だが、今度からは本物のガーディアンナイトだな」
「別にさ、バトルスーツなんかなくても、マナがあるから、コウノトリなんてどうってことないんだよね」
「どういうことだ?」
「こういうこと」
俺は手の平を上に向け、光弾を作り出した。
「マナって言って、コツを掴めば誰でもできる」
「そういえば、坂上博士が言ってたな。奥さんが女の赤ちゃんを産んだ日、家にUFOが墜落したって。まさか、君はテラ星から?」
「え?」
俺が聡美と血が繋がってない?
「今、坂上博士って言ったよね?」
「ああ」
「警視庁の科捜研で研究員をしていた父さんを知ってるの?」
「うん。彼は天才でね。テラ星のことで色々協力してもらってたんだ。そのバトルスーツを作ったのも、彼なんだ。惜しい人を亡くしたよ」
「そうだったんだ。でも待てよ。聡美は地球人。身体能力が高いのはどういうことだ?」
「奥さんがテラ星から亡命してきた方なんだ。だけど、居所がバレ、裏切り者ということで、博士と共に消されて……」
そういうことか!
「健さんが襲われてるのはどういうことなんだ? 奴ら、マデラ様の器って言ってたが」
「ああ、それは彼が邪神の片割れだからだろうな。本人には自覚がないが、そのうち目覚めると思う」
「それじゃあ、俺はあの人と、いずれは戦うことに? いだよそんなの!」
「目覚めれば、だがな。それより、適合試験をしようか」
「そうですね」
俺は実験室に入った。
システムを起動し、本物のガーディアンナイトに変身する。
「今から君には立体ホログラムと戦ってもらう。触感があるから痛みも伴うだろうが、スーツがあれば衝撃は吸収できる」
俺の前に虚像が現れる。
「始めるぞ!」
虚像が動き出した。
迫り来る虚像。
俺は攻撃を受け流し、虚像に反撃した。
怯む虚像。
俺はすかさず追撃。
床を転がる虚像。
「数々の修羅場をくぐり抜けてきただけのことはあるな。合格だ」
虚像は消滅した。
俺は実験室を出る。
片桐隊員は言った。
「システムとの適合率も99%を示していた。問題ない」
「残りの1パーセントが気なります……」
「1パーだ。気にするな。システムは君に託そう」
俺はシステムをシャットダウンして聡に戻った。
「それと、着ぐるみを譲ってもらえないか? 撮影所の知り合いがガーディアンナイトの続編を作りたがっていてね。もちろん、特撮で」
「わかりました」
俺は着ぐるみを出現させ、片桐隊員に渡した。