プロローグ
元々全く違う長編作品を書こうとして煮詰まったので凍結して枠? を再利用。
いいんかなあこれ。
ある所に竹取の翁、と周囲に呼ばれているプロのスカウトマンがいた。
彼が主にスカウトするのは将来有望そうなプロレスラーの卵で、同時に世に名が売れていない無名のプロを引き抜いたりもしている。前者はともかく後者についてはきちんと筋を通して契約し移籍金なども双方が納得できる額に納めるだけの話術も合わさって表立って非難されることは稀だが、手塩にかけた弟子を結果的に奪う手段から一部の人間から竹取の翁といつしか呼ばれるようになった。
引き抜くという行為を竹に例え、その対象がまだ芽が出ないような新人が主であることから竹の子、スカウトマンとしては異例の高齢から翁という具合だ。
「ワシが勤める団体の元で一流のプロレスラーになってみんかね?」
……なんとも胡散臭い言葉である。
だがプロレスブームともいうべきものが起こっていたことと年齢の割に背筋は伸び、髪も完全に真っ白になっていながら剥げておらず、見る人間によっては十は年齢が前後しそうなそれらが組み合わさってある種の威厳をも感じさせる風貌になっていたことが彼のスカウトマンとしての仕事を助ける要因になっていた。第一印象は見た目が大事というのは何処の世界でも変わらないのである。
とはいえスカウトマンとしては中々に優秀である竹取の翁であるが、所属する団体が大手とはとても呼べない規模の団体であるからか大成するレスラーは中々生まれなかった。もっとも数は少なくとも成功者も生まれているからか規模の割には注目度は高かったが。
その為売り込みに来る人材もいたが、それらは中々竹取の翁の目にとまることは少なかった。
そんな竹取の翁だが、海外で悪役として大暴れしたことから業界から干されていた女子プロレスラー、カグヤに目を付ける。
日本人とのハーフである彼女の容姿は非常に整っており、雑誌の読者モデルでもやっていればざぞや人気が出るだろうとその手のことに疎い竹取の翁にも思わせるほどの美しさがあったが、彼女自身は望んでプロレスラーとして活動し、悪役としての行いもやれと言われれば躊躇せずに行う程度にはノリがよく、リングを降りれば遺恨を残さないという生粋のレスラーだった。だからこそやりすぎてしまったとも言えるが。
リングを降りれば礼節を弁え、落ち着いた性格だけにそのギャップが凄まじい。
実力もあり、本人もレスラーとして活動を続けたいと思っていただけに竹取の翁のスカウトには喜んで飛びついたのだが、ここで問題になるのはどうやって問題なくプロレスラーとして売り出すか、ということである。
干されていたのは海外であって日本国内での活動には特に制限をかけられているという事はなかったが、追放処分という扱いで日本に戻ってきていただけに大っぴらに使うわけにもいかず。
さてどうするかと悩んだ末に、古い手段だが覆面レスラーとして売り出すことにする。要は公然の秘密という形になるのだろうが覆面をすることで正体をごまかそうという単純明快な話だ。
「覆面レスラーは初めてなので不安なのですが精一杯努めさせていただきます」
「無理はせんようにの……スカウトした身で言うのもなんじゃが世に出るなら成功して欲しいとは思っておるんじゃよ」
一大プロレスブームと言っても女子レスラーの数は少なく、実は竹取の翁はカグヤが最初の女子レスラーとしてのスカウト第一号だったからかかなり親身になって世話をしていた。
一方カグヤにしてもこれが若い男だったならある程度意識したり距離を取るなりしたのかもしれないがこちらをそういう目で全く見ることが無い、というか実は嫁がいたりする高齢者である竹取の翁を実の父のように慕い順調にデビュー前の下地作りをこなしていった。
そうして遂にデビュー戦を迎える。
どうせすぐにばれるだろうとリングネームは変えずにいたがレスラーとしては悪役ではない、正統派として売り出すという覆面で顔を隠した上に路線を大きく変えることで他人の空似としてごり押すことにした国内デビューは大成功を収める。顔が見えないというデメリットが気にならないほどの人気っぷりであった。女性レスラーの数はただでさえ少ないのにそこに顔を隠すという行為が話題作りに一役買った形になったのだ。
だが同時に女性レスラーの数が少ないという事と、キャラクターとしての方針は大きく変えたと言っても戦い方の癖などは悪役としてのもの以外は特に矯正していなかったことから当初危惧していたように早い段階で正体が囁かれるようになった。
粛清の為に現れる五人の刺客達。
彼らの目的は公衆の面前でマスクを剥ぎその正体を晒すこと。
だがカグヤは新しい日常を守る為にレスラーとして戦い続ける。
真の自由を手に入れるために戦え、カグヤ!
竹取の翁は敏腕スカウトマン。スカウトからプロデュースまでこなす超人です。
時代設定は考えていません。5分で考えたネタなので。きっと某少年誌の何度もアニメになったSAMURAIとか宇宙人とが出てくる奴みたいな混沌とした感じ。多分。
ネタがまた降臨したら続きを書きます。