すきま風(200文字小説)
先に投稿した200文字小説『灰色の空』の向こう側のお話です。
イヤだ…。
このままじゃ受話器を置けないよ。
彼がいつまでも電話を切ろうとしない。
そんな気配が伝わって来る。
あなたは気付いてくれなかったのよ。
私はずっとあなたのことを見ていたのに。
きっとあなたは別の人が好きなのだと思っていたわ。
だから今の彼と付き合い始めたのに。
今更そんなことを言うなんてずるいよ。
お願い、早く受話器を置いて。
私からは切れないよ。
私は受話器を耳に当てたまま動けない。
すきま風が身にしみる。