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あらいぐまと神様のタオルケット

作者: 小早川たき

とある山奥の川べりに、あらいぐまくんがすんでいました。

あらいぐまくんのお仕事は、一枚のブランケットをあらうこと。

毎朝はやくに川にでかけて、ごしごしごしと、一生懸命あらいます。

そのブランケットは、あらいぐまくんがお母さんからもらったもので

お母さんも、そのまたお母さんからもらったもので、

あらいぐま一家先祖代々のお宝なのです。


そんな大事なブランケットなのですが

なにぶんずいぶんふるいもんですから

こすってこすって薄くなってたり

どうやったってとれないようなシミが、いくつもついていたり

デザインが時代遅れだったりしています。


ふるいきたないブランケットを、あらいぐまくんが一生懸命あらうので

まわりのみんなは、すこしあわれだと思いました。



ある朝神様が、世界中からたくさんのブランケットをかきあつめて、あらいぐまくんのところにやってきました。

神様は、いろとりどりのブランケットを川べりいっぱいに並べます。

あらいぐまくんはびっくりぎょうてん。

なにしろ彼はさっきまで、ふるいきたないブランケットしか、しらなかったのですから。

「すきなものをもっていきなさい、ただし、日没までには、どれをもっていくのか、きめるのですよ」


あらいぐまくんは走り回ってはしゃぎました。

はじめてみるものばかりです。


「神様、こんなきれいな青色、はじめてみます。」

「それはずっとむこうの海の青色です。あなたは山にすんでいるから、海がどんなに青いのか、しらないんですね。」

「神様、こんなに大きなブランケット、はじめてみます。」

「それは恐竜のブランケットです。あなたは今にすんでいるから、ずっと昔の恐竜がどんなに大きかったのか、しらないんですね。」

「神様、この小さな細長いのは、ゴミですか?」

「それはアライグマ回虫のブランケットです。」

「アライグマ回虫?」

「アライグマの小腸に寄生する回虫です。長さ10センチほど。あなたに寄生してるかもしれないのに、しらないんですね。」

「やめてください、そんなのにブランケットをあげるのを、やめてください。」

「そんな義理は有りません」

「神様、このブランケット、どうしてこんなに変な形なの」

「それは人間のブランケットで、ええっと、着る毛布っていうらしい。」

「神様、ブランケットは着るものじゃあないでしょう」

「人間の考える事は、私にもちょっとわからない。」


さて、日没はもうすぐです。

あらいぐまくんは、気に入ったブランケットを神様の前に並べました。

「えらぶのに、とっても苦労しましたよ。」

なやんでなやんで、ようやく決めたのは

海の青色ブランケット(とっても綺麗でしたから)

恐竜の巨大なブランケット(洗いがいがありそうでしょう?)

アライグマ回虫のブランケット(あらいぐまくんが奪ってしまえば、回虫は寒くてしんでくれるかも)

人間のブランケット(へんなものって、素敵ですよね)

それから、お母さんの、ふるい汚いブランケット(本当はもうあまり魅力を感じないのですが、すてるわけにはいきません)



ところが神様はいいました。

「ああ、言っていなかったですね。あなたが持って帰れるのは、ひとつだけ。どれかひとつに決めてください。日没まで、あと3分です。」


なんということでしょう!

あらいぐまくんはこまってしまいました。

あと三分でひとつだけなんて、えらべるわけがありません。

ひとつ選べば、ほかのブランケットはあきらめなければいけないのですから。

「神様、私なら全部のブランケットをきれいにあらってみせますから、どうか」

「いけません。あなたは四足歩行でしょう。その口に、たくさんのブランケットをくわえて帰るつもりですか。のどに詰まらせてしんでしまいますよ。」

「神様、それならせめて、二枚だけでも。小さいの二枚なら、わたしの小さな口でもくわえていけます。」

「いけません。どんなに小さくたって、大事なものは大事なんです。中途半端なことはさせられません。さあ、日没です。」

あらいぐまくんは、顔をゆがませて叫びました。

なんてひどい!むちゃなことを!こんなにたくさんの素敵なブランケットをすてていけなんて、神様は私にひどい事をさせる!わたしは昨日まで、とってもしあわせだったのに!」


神様は、すこし面倒くさそうな顔をして、いいました。

「わかりました、そんなにつらいのなら、このお話はなかったことに。」

そういうと、川べりに広がったたくさんのブランケットは一瞬できえてしまいました。

ああ、と声をもらしたあらいぐまくんに、ちらりと目線をなげかけて、

「このお話は、なかったことに。」

神様はもういちど言って、どこかに去って行きました。


あらいぐまくんは、お母さんのブランケットを握りしめて、ひとりで座り込んでいました。

日は、もうしずんでいます。

あらいぐまくんは、自分が今日一日なにをしていたのか、どういうわけか、なにも思い出せませんでした。




次の日の朝も、あらいぐまくんはふるいきたないブランケットをもって、川べりに出かけます。

あらいぐま一家ごじまんの、由緒正しいブランケットです。

ごしごしごしと一生懸命ブランケットをあらうあらいぐまくんは、今日も明日も、とってもしあわせです。






アライグマがばかなのか、神様がいらんことしいなのか、私にもちょっとわからないです。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして(・∀・)♪ 読ませていただきました* とても面白かったです\(^O^)/ これからも頑張ってください(*^-^*)
2012/09/13 10:37 退会済み
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