幸せは気づかない
私が彼を好きな振りをして、もう2年が経ちます。
彼は、私の本当の気持ちには気付いています。私もそろそろ限界かな、と思います。
でも私達は別れられません。
なぜなら、お互いにもう新しい相手なんて出来ないとあきらめているし、お互いが一番気を遣わなくてもいい気楽な存在だからです。
でも、付き合い始めた当初の不安だとか恥じらいと共に、私の中にトキメキなんてものは消滅してしまいました。
だんだん疲れてきたのです。
彼は私の事をどう思っているのか分かりませんが、おそらく、私と同様に好きな振りをしているのではないかな、と思います。
そう思っていた矢先、彼からの電話がありました。
「亜美」
彼の声は震えていました。私は、ついに来たか、と思いました。
しかし、次の彼からの言葉は意外にも質問でした。
「今、幸せ?」
私は、考えました。
今まで不幸だなんて一度も思った事がありませんでしたが、幸せかどうかと聞かれたら肯定する気にはなれませんでした。
「普通、かなぁ」
私は笑いながら聞きます。「どしたの急に」
「俺さ」
彼は言いました。今まで私と付き合って3年、ずっと幸せであった事。でも徐々に私の心が離れていき、私が彼を好きな振りをし続けていた事をずっと知っていた事。
私は驚きました。
彼も私と同様に疲れていると、今の現状を「普通」だと感じていると思っていたからです。
私はなんだか自分がものすごく嫌な人間に思えて、胸が苦しくなりました。
「ごめん」
思わず謝ると彼は笑いました。
「謝って欲しいんじゃないよ、俺が謝りたかった」
彼は、自分のせいで私が別れられなかったと言いました。私は、ただただ否定しました。しかし、
「俺は亜美に幸せになってもらいたい」
彼はそう言うと、
「今までごめん、ありがとう」
そう言って電話が切れました。
私はその場に崩れるように座りこみ、しばらくぼーっとしてしまいました。
それから3ヶ月後、私はたまたま街で彼を見つけました。
彼は私と目が合うと、すぐにこちらへ走ってきました。にこにこして、久しぶり!と片手を上げます。
私は、この3ヶ月間ずっと考え導いた結論を彼に打ち明けました。
「私、普通でいい。普通がいい」
なんだか、雨が降ってきました。私の目に雨が入ったらしく、大量の雨粒が頬をつたいました。
「幸せにならなくていいから、あなたと一緒にいたい」
彼はキョトンとしていました。
「あなたと一緒にいなければ、私は不幸になる」
すると彼はやっと笑いました。「じゃ」
「もう一度、亜美を幸せに出来るか挑戦させてよ」
でもその時、雨が止んだ時、私は既に幸せだな、と感じてしまいました。
だから私は言いました。「じゃ」
「一生、幸せにしてください」
私達が結婚をして、もう2年が経ちます。
彼は、毎日忙しくて残業が多いです。私も何度も寂しい思いをしたと思います。
でも私達は別れられません。
なぜなら、お互いにお互い以上の相手なんていないと確信しているし、お互いが一番自分を幸せに出来る存在だからです。




