愚功
A級中二病患者のよしかず.jpです。初投稿は中学時代に一度はやってみたいと思ったことを綴ってみました。もちろんフィクションです。
※これは吾郎のありふれた日常を記したものである。
憎き数学教師の染川は毎日宿題を出す。それだけならまだマシだ。
数学の時間に当てた生徒に問題を解かせ、外したら怒鳴り付け、当てたらスルーされる。
指導者として褒めることを決してしないヤツだったからだ。
当然、染川の担当するクラスは数学が嫌いになる。意欲を阻害されてどう好きになれるのか不明だ。
とにかく染川は校内で一番の嫌われ者なのだ。
「ゴロー……今日は俺が当てられるよぉ」
隣に座る斎藤が憂鬱そうに愚痴ってきた。
わからなくもない。奴は基本的に出席番号から当てていく。しかも事前に誰をどの問題にするかを決めている陰険さだ。
さすがに同情してしまうが、教室の中にいる以上、俺が当たる可能性だってある。
「しょうがねーよ。当たるってわかってるだけマシだろ?」
「それはそうなんだが……」
斎藤は未だに慣れないみたいだ。俺だって慣れたい訳じゃない。できることなら受けたくないんだから。
そうこう言ってる間に染川が来た。チャイムもなっていない休み時間に来やがった。
学生なんて連中は建前をよく使い分ける。教師が居ないときは友達と喋るくらい当たり前だ。
しかし教師が近くにいるだけで萎縮するものだ。
威圧的な視線を受けて他のクラスメイトも自分の席についていく。
(クソぉ、面白くねーなぁ)
俺は不満だった。休み時間になんでこんなに重い空気に包まれなきゃいけないんだ。
俺は何気に立ち上がる。
染川は俺を見た。
(よし!今だ!)
俺はポケットをまさぐる。
そして────
──キーン
「ケータイ家に忘れてきたぁああああああ────っ!!!!」
チャイムが鳴るかどうかの辺りで絶叫してやった。
クラスメイトも「なんだ、なんだ」と俺を見る。
染川も見ている。
(よっしゃ!チャイムをかき消してやったぜ!)
その後、50分以上の休み時間を経て、数学の時間は終わった。
染川は一度も時計を見ずに終了のチャイムがなるまで俺を睨んでいた。
今生きる大人達よ、子供を侮る無かれ!