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孤独と闇と希望と  作者: 普通人
第二章 オダヤカナニチジョウ
14/90

11話 初戦

急いで打ったので、読みづらい上に、誤字脱字が多いかも知れません。

あったら教えて下さい。

「あと何だっけ?」

「……醤油」

 明の言葉に、ああそうだったと頷いて売り場へ向かった。商品は原則として奥の方から取る。もはや常識だ。手前の品と奥の品とでは期限がだいぶ違う。零はそれを確認してから、期限が長いほうの醤油をカゴに入れた。

 明が来てから、夜はきちんと料理を作るようになっていた。零ひとりでは作らないが、まさか自分と同じ食生活をさせるわけにはいかない。昔料理の本に一通り目を通しておいて良かったと思う。

「これで終わり……ん?」

 目的のものを見つけ終わった時、ふとこちらを見ている人物がいることに気がついた。

その人物は活発そうな笑みを浮かべながら二人のところへやってくる。

「アマト君じゃないか」

「……すみません。どちら様ですか?」

 失礼な返答かとも思ったが、本当に見覚えがないので仕方がない。そもそも、零は一度見た人間の顔は滅多なことがない限り忘れないので、目の前の少女とは初対面のはずだった。

「あ、話すのは初めてだよね。あたしはターナ・ニコラエヴナ・カレーニナ。ルリと同じクラスの三年だよー」

 髪は赤、瞳は青の、元気そうな人物だった。

 ……ああ、確か。

 かつて、瑠璃に仲が良い友人について尋ねたときに話していた少女のことを思い出した。零のことはきっと瑠璃から聞いたのだろう。そこで、彼女の名を聞いて、ひとつ引っかかることがあった。

「……先輩は北の出身ですか?」

「ああ、親がね。あたしは生まれも育ちもココだよ」

 ターナの言葉に、自分の予想は間違っていなかったと確信した。親が北の出身ということは、その子供は必然的にあの事件(・・・・)に関わっているということになる。

「何も聞かなくていいの?」

 無言になった零を見て、事情を知っていると察したのか、ターナは零に問いかけた。先程までの元気な表情に少し影が差したような気がした。

 ……首を突っ込むことじゃないな。

「聞いて欲しいのなら聞きますよ」

「へぇ、何も聞いてこなかったのは君が二人目だよ」

「二人目?」

「ルリも同じような返答をしたからさ」

 ターナの言葉に、成程と頷いた。たしかに瑠璃なら自分と同様なことを言うだろう。もしかしたらそれがきっかけで仲良くなったのかも知れない。

「ところで今日は買い物かい?」

「ええ、まあ見ての通りです」

「夫婦仲良くお出かけとは妬けますな~」

「……いえ夫婦では――ってアカリもそこで照れない」

 こういう相手は相手の反応を見て面白がっているので、普通に流せばいいのだ。明の反応はよろしくない。そして、ターナはやはり満足そうに去って行った。


◆◇◆◇◆◇◆


 校内模擬大会とは、五月の頭と十二月末の年に二回行われる大規模な生徒による試合だ。その成績は一、二、三学年の生徒にとっては来年度のクラス分けに。四学年の生徒にとっては自分の進路に影響する。そのため、生徒達の気合は充分だ。なんせ将来がかかっている。

 ただ、将来のことなど関係ない零の士気は当然のように低い。

「……負けていい?」

「駄目」 

 零が言った言葉は即座に却下された。

 大体、この学校は生徒が多過ぎだと思う。三千人以上もいるのだ。しかもその中で順位をつけようと言うのだから、面倒なことこの上ない。零は怠そうな顔でトーナメント表を見た。

「だって……よく見ろよ。勝ち進めば今日だけで九回も試合が」

「我慢」

 明が零の考えを却下する。手抜きは許されないらしい。確かに真剣勝負を望む相手に対し、手を抜くのは失礼ともいえる。ただ、変に勝ち進んで目立ってしまってもよいものかどうか。悩みどころだった。

 ちなみに、この校内模擬大会は少し変わった制度が設けられている。まずは学年内で争い、学年ごとに順位を決める。その中で限られた人数が決勝トーナメントの出場権を得る。出場枠は一学年から一人、二学年から二人、三学年から二人、四学年から三人の計八人である。つまり、零が決勝トーナメントに出るには一学年の中でトップにならなければいけない。それは八百人の中で一番ということであり……

「はぁ、長い」

 どうしてもそう思ってしまうのは仕方のないことだった。



「えー、今日は諸君にとって始めての校内模擬大会だが、是非とも正々堂々自分の力を出し切って欲しい。対戦相手はくじ引きだ。A、C、E、G、Iクラスの人間が引くことになってるから早速引いて貰う」

 そう言うと、片山徹は大きな箱を教卓に置いた。零たちは順番にそれを引いていく。皆、少し緊張した面持ちで並んでいた。やはりこの大会は、これからの生活にも大きく影響するためだろう。零にはほとんど関係ないことなのでよくわからないが。

「よし、じゃあ開け」

 ――ピラリ。

 周りから「あー」やら「うー」やら、様々な声が漏れてくる。零も続けて自分の引いた紙を開いた。

 132B。

 Bクラスの人間だ。

「全員確認したかー? じゃあ頑張れよ。解散!」

 やたら嬉しそうな片山先生を見て、この人の精神年齢はかなり低いのではないかと思った。


◆◇◆◇◆◇◆


『只今より1回戦を開始します。出場者はアリーナへ集まって下さい』

 放送を聞いて、零は重い腰を上げた。今まさに……重要な(?)試合が始まろうとしている。

「零、頑張って」

 明が小さくこぶしを握る。彼女はついこの前転入してきたばかりなので、今日は出場しない。なんでも準備が間に合わなかったとか。とはいっても、明の力は戦うためのものではないため、全く必要ないと思う。

「行って来る」

 零はそう告げると、自分の番号が書かれた場所へ向かっていった。


 対戦相手はもう来ていた。身長は零より高い。ガッチリした体格に真面目そうな顔をしていた。

 いつものように相手の能力値を測る。

 魔力量は(今の)零と同じくらいだったが、筋力は若干負けていそうだ。腕の筋肉のつき方から推測すると、武器は大剣だろう。属性は風だと判断した。

「お前が322Eか?」

「ああ。そっちは132B?」

「そうだ。じゃあ今日はよろしく」

「こちらこそ」

 試合を始める前に手を握り合う。Bクラスの少年は堂々とした態度だった。相手が格下だと思って少し安心している部分もあるだろうが、初めての大会の初戦で、ここまで堂々としている点は好感が持てた。二人はお互いの確認と挨拶を軽く済ませると、指定されたステージの両脇へ移動した。そこには審判と思われる教員がひとり立っている。

 確か名前は……

「浅沼先生、こんにちは」

 審判のひとりは錬金学の担当である浅沼幸平だった。幸平は零の挨拶に「おう」と一言だけ返すと、専用の防具を手渡した。

「これを着ろ」

「ああ、これが例の魔法結界が施してある防具ですか? 随分と薄くて軽いですね」

 渡されたものは、防具というよりは上着に近かった。しかもかなり薄い。これなら動きを阻害される心配もなさそうだ。

「大丈夫だ、心配するな。その結界を張ったのは俺だ。たとえこの学校の教師が全力で攻撃しても一回では壊れない」

 幸平の言葉を聞いて、防具を注意深く観察する。なるほど、よく見たら非常に緻密な情報が練り込まれた防御結界だ。ダメージ蓄積性で模擬選にも向いている。この結界がちょうど壊れるほどの衝撃を生身受ければ、確かに死亡と言えるだろう。

 分析を終えると、後ろの武器庫から武器を選んだ。今回は相手が大剣なので、零は小刀を使用することにする。もちろん本物ではなく、大会用の模擬刀だ。結局最後まで決まらなかったので、相手の武器によって変更することに決めたのだ。幸い一学年の生徒は、まだ武器決まっていない者も多いということで、特別に許された。

 準備が済み、ステージ中央へ向かう。

 お互いに礼をして……

「試合開始!」

 浅沼幸平の合図と共に相手との距離をあけた。それに対して、相手の少年は大剣を抜いて問答無用で距離を詰めてくる。ダッシュのスピードはなかなかのものだ。すぐに零との距離を詰め、そのまま大剣を横に振るった。それを身をかがめて躱すと、再び相手との距離をとる。

 少年は、零が思った通り完璧な近距離型の人間だった。ときどき剣に風を纏わせ、剣速を上げているが、攻撃として魔法を使うことは一切していない。だが、動きに無駄が多かった。

 近距離型の人間は基本的に魔力の残量を考える心配がなく、試合が長引けば有利になることが多い。しかし、その代わりに自分の体力はしっかり把握しておかなければならない。目の前の少年は動きこそ速いが、ワンパターンな上に最初から全力攻撃である。相手が弱ければそれで通用するが、熟練者が相手では自滅だ。現に、少年はもう息があがってきている。五回程繰り返すと、少年のデータも取れてきた。注意することは、この少年は腕を振るときに関節が約三ミリ伸びることだ。その速さから攻撃が届くまでの時間を計算し、今までの行動から一転して、零は自分から距離を詰めた。少年は零の行動が変化したことで少し動揺しながらも、チャンスとばかりに渾身の一撃を見舞う。

 だが、その一振りは零の前髪を数本を揺らしただけに留まった。まさか当たらないとは思わなかったのか、少年は驚愕の表情を見せる。文字通り隙だらけ。小さな子供でも見逃さないようなその大きな隙を、零が見逃すわけもない。

 ゆっくりとその首に、小刀を軽く押し当てた。

「勝負あり!」

 浅沼幸平の言葉が響く。

 その声を聞き、零は大きく息を吐いて両手を下ろした。


ちょっとスランプかも。

文が汚い気がします。

ちょっと時間があまりないので、次の投稿は少し遅れるかもしれません。


2013/09/17改訂


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