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真・恋姫†無双 ~天命之外史~  作者: 夢月葵
第二部・義勇連合軍編
11/30

断章一 とある会話

世界の何処かに在る場所。


そして、その世界の人間は知る事が出来ない場所。


そこに、数人の老若男女が集まっていた。




2010年4月1日更新開始。

2010年4月2日最終更新。

 靴音が暗闇に響く。

 何処からか風が吹くと、柱に取り付けてある松明の炎が、ゆらゆらと揺らめいた。


「只今戻りました。」


 そう言ったのは、足音の主である眼鏡を掛けている青年。

 左右に分けた黒髪、黒を基調とした道士服に、白と緑のケープ状の上着を重ねて着ているその青年は、目の前の円卓を囲んでいる人達に声をかけた。


「遅かったな。」

「少し想定外の事態が起きましてね、その状況を観察していましたので時間が掛かりました。」


 その中で一番の年長者と思われる老人男性が、青年に尋ねる。青年は苦笑しながら経緯を説明していく。


「想定外の事態とは?」

「……張宝(ちょうほう)劉備(りゅうび)軍と行動を共にしています。」

「……何だと?」


 青年の報告に、尋ねた老人だけでなく、円卓を囲んでいる全員が驚きの声を上げた。

 まるで幼子の様な容姿ながら達観した口調の男女、十代中盤から後半の容姿ながら幼い口調の男女、二十代から三十代と、各年代の男女が居るが、皆普通の雰囲気ではない。


「……今回も、張宝等が生き残ったか。しかも今回は曹操(そうそう)ではなく劉備についたとはね。」

「正確には、劉備ではなく清宮涼(きよみや・りょう)についている様ですがね。」

「どちらでも構わん。問題は、流れが大きく変わっている事なのだからな。」


 そう言ったのは幼い容姿の女の子。だが、口調も声質も、外見からは想像出来ない程に落ち着き払っていた。

 因みに、多少の差違は有るが皆同系統の道士服を着ている。


「今迄も厄介だったが……今回のファクターは奴では無いのだろう? なのに何故また同じ事が起こっているのだ?」

「ファクターが誰であれ、存在する限り変化が起きる、という事なのだろうな。」


 二十代の容姿の男性が老人の様な口調で疑問を口にすると、円卓を囲む道士達の後方から、一人の青年が歩きながら呟く様にそう言った。


「どういう事じゃ?」

「異物が入ればそれに対処する。その結果、適応した姿になるという事だ。」


 外見も口調も老人の女性が、振り向きながら青年に尋ねると、その問いに青年は低い声で静かに答えた。

 青年もまた眼鏡の青年や他の人物同様、黒い道士服と白いケープ状の上着を着ている。

 但し、ケープ状の上着は逆三角形の形をしており、他の人物とは明らかに形状が違っている。青年の拘りなのだろうか。

 薄茶色の髪は短く、額には何かのまじないなのか、紅い印が描いてある。

 眼は鋭く、眼鏡の青年の温和な表情とは対照的だ。


「では、また前と変わらないという事?」


 外見も口調も十代の少女が、薄茶色の髪の青年に尋ねる。


「その可能性が高いのは確かだが、未だそうなると決まった訳でも無い。」

「つまり、やり直せる可能性も残されている、という訳ですね?」

「そうだ。」


 幼い容姿と、その外見から少しだけ成長した人間の口調と声質の少年が確認する様に尋ねると、薄茶色の髪の青年は短くハッキリと答えた。


「なら、この件は今回も二人に任せる。くれぐれも、失敗しない様に。」


 眼鏡の青年と最初に話していた老人がそう言うと、円卓を囲んでいた道士服の集団はゆっくりと立ち上がった。


「そっちもしくじらない様にするんだな。」

「ふっ……。」


 薄茶色の青年が老人に対して吐き捨てる様に言うと、老人は小さく笑いながら文字通り姿を消した。

 他の道士達も、それを見ながら一人、二人と消えていく。

 円卓の周りに残ったのは、眼鏡の青年と薄茶色の髪の青年だけになった。


「まったく……御老体達に何て口の聞き方をするんですか。」

「立場は変わらん。只、奴等の方が長く存在しているだけだ。」

「それはそうですが……。」

「それより、今度のファクターは今何をしている?」

「今は幽州(ゆうしゅう)公孫賛(こうそん・さん)(もと)で義勇兵を集めたり、兵の調練に勤しんでいる様ですね。」

「ほう……公孫賛も人が良いものだな。自分の領内で兵を集めさせるとは。」

「公孫賛と劉備は親友ですから、軽い気持ちで承諾したのでしょう。……もっとも、公孫賛も今は少し後悔しているかも知れませんが。」

「どういう事だ?」


 薄茶色の髪の青年の問いに、眼鏡の青年は苦笑しながら答えた。


「義勇軍に参加する人間が想像以上に多く、幽州の人材が根刮ぎ持って行かれる勢いなんです。」

(ひさし)を貸したら母屋(おもや)迄取られそうな訳か。」


 薄茶色の髪の青年は、いい気味だという表情をして笑った。

 笑い終えると、表情を戻して尋ねた。


「ところで、アイツの姿が見えなかった様だが?」

「アイツ……ああ、彼女の事ですか。そう言えば居ませんでしたね。」

「また何処かに行っているのか。」

「恐らく。」

「こんな時に何をしているんだ、アイツは!」


 どうやら誰か来ていなかったらしく、薄茶色の髪の青年はその事で苛立っている様だ。

 やがて、二人も先の道士達と同様に消えていった。

断章一「とある会話」を御覧いただき、有難うございます。


「断章」の意味もよく解らずに書いた章です(笑)

確か「灼眼のシャナ」を読んで断章を知ったのかな?で、何かカッコ良さそうだから書いてみたという←

まあ、深く考えないで下さい。


今回名前は出していませんが、恋姫ファンならこの章の登場人物が何となく解ったのではないでしょうか。

この設定に関しては色々な御意見があるでしょうね。これがこれからどう展開していくか、楽しみにして下さると助かります。


次からは新章に移ります。

黄巾の乱の次は……そう、あの話です。

どう展開していくか、ごゆっくりお楽しみ下さい。



2012年11月27日更新。

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