告白。
美優と彩花は、お互いに協力しながら、警察学校での厳しい訓練と学習の日々を乗り越えていった。
美優の合理的かつ熱心な指導は、彩花の非効率な努力を劇的に改善させた。
体力は着実に向上し、座学でも赤点を回避できるまでに成績が安定した。そして、美優自身も、彩花を支えることで、「人を動かす力」と「心を通わせる喜び」という、真のリーダーとしての資質を開花させていった。
残念ながら、彩花は卒業時も教場での成績は最下位だった。
しかし、その泥臭いながらも決して諦めない姿勢は、加藤教官を始め、すべての同期に認められていた。
そして、その努力を一番近くで感じ、その成長を見守ってきた美優は、彩花への感情が「共感」「尊敬」「仲間」という範疇を遥かに超えていることに気づき始めた。
同性ながら・・・「好き」という感情。
彼女のひたむきな眼差し、失敗してもすぐに立ち上がる強さ、そして美優の冷徹な世界を温めてくれた存在そのものへの、抗いがたい「愛しさ」だった。
・・・
卒業を1週間後に控えたある日、美優は決意した。
警察官として、常に「真実」と「誠実さ」を重んじる道を選んだ今、自分の感情に蓋をするのは、自分自身への裏切りだ。この気持ちを、正直に彩花に伝えなければならない。
美優は、珍しく訓練とは無関係な話・・・「一緒に外出」を彩花に提案した。行き先は博物館に出掛ける約束を。
休日、二人は制服ではなく、私服姿で博物館の静かな展示室を歩いていた。
美優は心の中で何度も言葉を反芻しているが、訓練中の冷静さは欠片もない。ただ、胸の鼓動だけが早鐘を打っている。
彩花は展示物に目を輝かせ、時に美優に話しかけるが、美優は上の空だった。
人が少ない剥製動物の展示室。美優は、意を決して、彩花の背中に声をかけた。
「彩・・・橋本」
「はい、美優さん。この土器、すごい古いのに模様が残ってますね!」
「…違う。少し、立ち止まってくれ」
美優の、いつになく真剣で震える声に、彩花は異変を感じ取り、振り返った。
美優は深呼吸をし、自分の内に秘めてきた、最も非合理で、最も大切な感情を、偽りなく彩花に伝えるために、言葉を探した。
「橋本・・・私は、高校時代からずっと、孤独を是として生きてきた。友情も、愛情も、すべてを無駄だと切り捨ててきた。だが、警察学校で、お前・・・彩花と出会って…私の世界は、完全に変わった」
美優は、彩花のまっすぐな瞳を見つめた。
「私は、彩花の直向きな努力、誰にも真似できない優しさ、そして…誰にも見せていなかった私の弱さを守ってくれた存在を・・・「仲間」という言葉では、もう片付けられない」
美優の拳が、微かに震える。
「橋本彩花・・・・・・私は、お前のことが、好きだ。同性として、同期として、いやそれ以上に…一人の人として、愛している。卒業する前に、この気持ちを、正直に伝えたいと思っていた」
「・・・」
「おかしな話をしていると思う。でも、上村美優と言う人間は『橋本彩花を愛している』。君がいないと生きていけないと思う・・・本当に・・・」
彩花は、その偽りのない姿を見て、胸の奥が熱くなるのを感じた。
美優への愛おしさが、津波のように押し寄せてきた。




