表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
葛藤の上に花は咲く ~序章~  作者: 優月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

告白。


美優と彩花は、お互いに協力しながら、警察学校での厳しい訓練と学習の日々を乗り越えていった。


美優の合理的かつ熱心な指導は、彩花の非効率な努力を劇的に改善させた。

体力は着実に向上し、座学でも赤点を回避できるまでに成績が安定した。そして、美優自身も、彩花を支えることで、「人を動かす力」と「心を通わせる喜び」という、真のリーダーとしての資質を開花させていった。


残念ながら、彩花は卒業時も教場での成績は最下位だった。

しかし、その泥臭いながらも決して諦めない姿勢は、加藤教官を始め、すべての同期に認められていた。

そして、その努力を一番近くで感じ、その成長を見守ってきた美優は、彩花への感情が「共感」「尊敬」「仲間」という範疇を遥かに超えていることに気づき始めた。


同性ながら・・・「好き」という感情。


彼女のひたむきな眼差し、失敗してもすぐに立ち上がる強さ、そして美優の冷徹な世界を温めてくれた存在そのものへの、抗いがたい「愛しさ」だった。


・・・


卒業を1週間後に控えたある日、美優は決意した。

警察官として、常に「真実」と「誠実さ」を重んじる道を選んだ今、自分の感情に蓋をするのは、自分自身への裏切りだ。この気持ちを、正直に彩花に伝えなければならない。


美優は、珍しく訓練とは無関係な話・・・「一緒に外出」を彩花に提案した。行き先は博物館に出掛ける約束を。


休日、二人は制服ではなく、私服姿で博物館の静かな展示室を歩いていた。

美優は心の中で何度も言葉を反芻しているが、訓練中の冷静さは欠片もない。ただ、胸の鼓動だけが早鐘を打っている。


彩花は展示物に目を輝かせ、時に美優に話しかけるが、美優は上の空だった。


人が少ない剥製動物の展示室。美優は、意を決して、彩花の背中に声をかけた。


「彩・・・橋本」


「はい、美優さん。この土器、すごい古いのに模様が残ってますね!」


「…違う。少し、立ち止まってくれ」


美優の、いつになく真剣で震える声に、彩花は異変を感じ取り、振り返った。


美優は深呼吸をし、自分の内に秘めてきた、最も非合理で、最も大切な感情を、偽りなく彩花に伝えるために、言葉を探した。


「橋本・・・私は、高校時代からずっと、孤独を是として生きてきた。友情も、愛情も、すべてを無駄だと切り捨ててきた。だが、警察学校で、お前・・・彩花と出会って…私の世界は、完全に変わった」


美優は、彩花のまっすぐな瞳を見つめた。


「私は、彩花の直向きな努力、誰にも真似できない優しさ、そして…誰にも見せていなかった私の弱さを守ってくれた存在を・・・「仲間」という言葉では、もう片付けられない」


美優の拳が、微かに震える。


「橋本彩花・・・・・・私は、お前のことが、好きだ。同性として、同期として、いやそれ以上に…一人の人として、愛している。卒業する前に、この気持ちを、正直に伝えたいと思っていた」


「・・・」


「おかしな話をしていると思う。でも、上村美優と言う人間は『橋本彩花を愛している』。君がいないと生きていけないと思う・・・本当に・・・」


彩花は、その偽りのない姿を見て、胸の奥が熱くなるのを感じた。


美優への愛おしさが、津波のように押し寄せてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ