あの出会いまでは…
その出会いは、厳しい規律の中で生まれたものだった。
友情なんて、仲間なんて、...道場に満ちる研ぎ澄まされた空気の中で、そんな甘い感情は不要だと切り捨ててきた。
高校時代、上村美優は自分を律し、ただひたすらに竹刀を振った。優勝などの栄光こそ手に入れられなかったが、県大会の常連として、それなりの成績は残してきたつもりだ。その実績は、誰にも依存しない、彼女自身の努力の結晶だった。
孤独だった。いや、孤独を装っていた。
学生時代、美優は常に注目を集めた。立ち居振る舞いの美しさ、成績、そして剣道の強さ。先輩後輩から、性別を問わず、友達や恋愛の関係を持ってくれないかと言い寄られていた。ただ、友情や愛情が自分にとってどれほど大切なものか判らず、あるいは、その大切さが故に失うことを恐れて、それらを学生時代作らなかった。
剣道も孤独だ。団体戦もあったが、美優が力を入れていたのはもっぱら個人戦だった。己のすべてを懸け、たった一人で勝ち抜くその瞬間にこそ、価値があると思っていた。
剣道の延長線で、美優は警察官の職を選ぶことにした。なによりも、剣道で培った精神力と体術を生かすことが出来、体力的にも頭脳的にも自分を活かせると思ったからだ。
しかし、警察官は団体戦だ。組織力が試される。だが、彼女の思考は違った。「リーダーになればいい。リーダーになりさえすれば、あとは個人戦の応用だ」。そうすれば、他人に感情で踏み込まれることも、自分の弱さを露呈することもない。
その計算は、完璧なはずだった。
その時までは…




