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第十七話 リザードマン包囲網

オブリガートに奇襲を仕掛けるも失敗し、カストラータがやられてしまう。

フーガ、カノン、カルマンドは狭い路地の中をただ走っている。しかし、カルマンドは気がかりがあるように視線は俯き、走るスピードも小さな魔族の後ろにつくくらいに遅かった。

「カルマンド」

走りながらフーガが言う。

「今はこの状況をなんとかしよう。それからじゃなきゃ、助けられるものも助けられない」

カルマンドはそれにふぅ、と息を吐き、

「ウん、そうダね」

と、迷いのあった表情をまっすぐ前を見て、しゃんとした表情になり、二体の小さな魔族を抱えて走り出した。

「ぐあぁっがぁっ!」

「ぐるるる!」

もうすぐ大通りに出るというところで、リザードマンの大きな鳴き声が聞こえた。それを聞いたカルマンドは大通りに出てすぐ、左右を確認する。右からはすでにリザードマンが五体数メートル先にいる。左を向くと、黒いコートのリザードマンが二体そこにいた。カルマンドは五体のリザードマンのほうに、抱えていた二体を軽く投げる。

「あっチ、よロしく」

「了解!」

「わかりました!」

五体のリザードマンがカノンとフーガに向かって手のひらを向けると、その指にはめられた指輪が光りだす。フーガはその色を見ると、カノンに指示を出す。

「右二体の相手やって。僕は左三体やる」

「フーガさんが三体をやってくれるなら大丈夫ですね」

カノンが相手取った二体のリザードマンはカノンへ向かって水流と電撃を飛ばした。それにびくっとしてカノンは目をぎゅっと閉じる。

「フォリア!」

しかし、目を閉じても魔法を撃たんと詠唱し、木の葉を相手の魔法に劣らぬ速度で飛ばした。鋭い水流を切り裂き、電撃を吸収しながらリザードマンを切り裂く。それと同じようにカノンも電撃と強い水流を喰らい、幹の一部が爆ぜてぷすぷすと炭が燻る。その衝撃に多少怯むが、ウロコを切り裂かれたリザードマンに急接近、一方の脚に根っこを巻き付ける。

「うおらっ!」

「ぐあぁっ!?」

そのままリザードマンを遠心力を使ってぶん回し、もう一方のリザードマンにぶつけると、鈍い音を立てて吹っ飛んでいった。

「さーて。厄介そうだね」

一方、フーガは姿勢を低くしてすぐに足元まで行くと、三体のリザードマンの足元にまとわりついて興味を惹く。リザードマンが足元に気を取られた瞬間に背中側に回って跳ね上がる。

「フォーコ!」

そう詠唱してリザードマンの頭部に火球をあてようとした。

「ぐるるぁっ!」

それにリザードマンは紫色の魔石を光らせ、レンガで舗装された道の下から地面を隆起させ、火球を喰らうと同時に跳ね上げた。空中で身動きが取れないままフーガが下を見ると、自分の体ほどの火球と氷の塊が飛んできているのを見た。フーガは無詠唱で火球を氷の塊に飛ばして勢いを殺し、炎の魔力を持つ魔石の力を信じて炎の中に突っ込んだ。零コンマの判断であった。

「いったアッツ……!」

身体をぷるぷると揺すっていると地上にいるカノンが見えた。そこへ着地するために火球を作り、それを投げる反動で落下する位置を調整してカノンのすぐ近くに落ち、三体のリザードマンへ向き直る。

「やるか!」

「やっちゃいましょ!」

二体の魔族はぴっとりとくっつく。

「「フーガ砲!」」

その光線は三体のリザードマンを薙ぎ払い、戦闘が不可能に見えるまでにした。

「カルマンドさんのほうは大丈夫ですかね?」

カノンが後ろを見た頃には、カルマンドは無傷のまま寄ってきた。

「あんシん、しちゃ、まだ、だメ。ドこか、に、かクれ、ナいと」

カルマンドは再び二体を抱きかかえ、すぐ近くに玄関扉が見えた家に向かって走ってノックをする。

「スみません、あケて、もらっテ、も、ヨろしい、でしょウか」

カルマンドは顔に焦りが出ていたが、声は落ち着きを装っていた。それのおかげか、カタコトの言葉でリザードマンであることがわかったのは、その家の人間が扉を開けた。その瞬間に、隙間に入り込むようにカルマンドは素早く家の中に入り込み、倒れて受け身を取った。

「うわっ!なんなんだ!」

その家の主人と思われる、ひげを蓄えた男はびくっとして尻もちをつき、三体の魔族に向かって困惑の表情を向けた。

「すみませんご主人!少しだけ匿わせてください!」

フーガはカルマンドの腕から抜け出し、混乱している様子の男の前を通り、扉に軽く体当たりをしてぱたんと閉めた。

「お前ら、なんなんだ!?」

男は立ち上がって、怒りの様相も混じらせながら言った。外にはリザードマンの鳴き声がすぐそこに聞こえる。

「ア、すミません、こレは……」

「オブリガートを殴ったらこうなっちゃったんだ」

吃っていたカルマンドの代わりにフーガが言った。はっきりと、躊躇無く。

「待ってくださいフーガさん追い出されたらどうするんですか!?」

「つキダされたら、どウする、の」

「大丈夫」

フーガはそれが当たり前であるかのように言った。その男は、フーガの言葉に顔をしかめて頭をかく。

「殴ったって、お前らがか?待ってくれ、突然お前たちが来たから整理できていないんだ」

「魔王軍を根っからひっくり返そうとしてて、まずこの街に来たんだ。魔王軍が奪った人間の街を統治してる魔族を倒して、力をつけながら理不尽な扱いを受けてる魔族や人を助ける。ってことをつい最近やりだした。説明しろって言われたら本当にこうしかないんだけど……」

「はぁ……それは本当なのか」

男は訝しげな表情をフーガに向ける。そのとき、扉が激しく叩かれる。

「ぐるるっ、チョウサ、に、きょ、うりょク、しろ」

それは、カルマンドよりもカタコトなリザードマンの声だった。

次回 第十八話『信じてやれるか』

1/17 (土) 20:00更新予定

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