第十五話 灰色の集会場
エピックがラルゴにボコされた
「そもそもカストラータさぁ。そんなに一緒にいて長くないけどよく僕が優しいってわかったよね」
「そうですよ。ぼくが優しいなんて、言うても数時間くらいで」
「え?いやなんかいい感じのこと言う雰囲気だったからなんとなく。それに弱い魔族の味方ってあんたたちが言ってたことじゃん。つーか自分が自分が言うなよこういうの」
三体の小さな魔族がもちもちと言い合っている後ろでカルマンドはコートを正したり鍵を持ったりと外に出る支度をしていた。時計は四時四十分、集会まであと二十分というところだった。
「そういえば、ここから広場までってどれくらいかかるの?」
「だいタい、じゅっぷん、クらい」
「じゃあもう行くか。カノン、作戦確認お願い」
「はい!」
カノンはけほん、と咳払いのような音を鳴らして作戦の内容を暗唱する。
「まず集会が終わるまでぼくとフーガさんとカストラータさんは隠れて待機。それで集会が終わった後、カルマンドさんがオブリガートの気を引く。周囲の警戒が解けたのを確認してから一斉に不意打ち」
「あ、僕から最後に付け足させて。なるべく殺しはしないって」
「え、でもまあ、殺していいって言うわけでもないけど……」
「復活草もあるけど……オブリガートって魔族もUnder-3だから。ランク的には下だし、何か事情というか、やらされてるだけかもしれないし。懲らしめるだけでやろう」
広場には大量の人間がきれいな四角形に並び、いくつかのリザードマンがそれを囲んで見張るように立っていた。カルマンドもその内の一つとなっている。じっと動かない植木鉢の内側からカノンは外の時計を確認している。
「五時になりました」
カノンが小さな声で言ったのと同時に、一体のリザードマンが広場の台に登った。
「今回も、全ての人間が集まらなかったようですね」
「流暢に喋るな。本当にリザードマンなのか?」
長銃を細い腕に抱えたリザードマンは、流暢な言葉を話しながらそこに集まった人間を見晴らす。誰かが走ってくる足音が聞こえる。
「すみませんオブリガートさん!病院の母が、危ない状態だと連絡が入り」
理由を叫びながら走っていた人間の男は、話し終わる前に大きな破裂音が響いた。そして、音の後に倒れた男の頭には穴が空いていた。オブリガートは構えていた銃を下ろす。
「医療従事者や対外の商人、病人などの一部の人間を除いて、全ての人間は定刻に集まらなければなりません。規則です。特別な理由に含まれない遅刻理由は認められません」
そこには、何かざわついているような様子もなかった。
「撃たれた?思ってたよりひどいな」
「でも意外と免責してくれる理由も多いんですね?」
「殺すまでするのはやりすぎでしょ……」
ひそひそと三体の魔族が喋っていると、再びオブリガートの声が聞こえてくる。
「様々の事件、事故、特に最近頻繁に起きている失踪事件によって報告されている以上の人数現象は確認されていません。報告が無いかつ、今ここに集まっていない人間、招集されたが姿の見受けられないリザードマンは集会が終わり次第調査対象となります」
機械のように落ち着いた無機質な口調が響く。
「そして、今日のことですが。スライムの魔王軍の反逆者が現れたという情報がありました。情報を持っている者はこちらにお願いします」
「有名スライムですね」
カノンは呑気にくすりと笑う。
「では、人数確認もできましたので今回の集会は終わりとします。速やかに解散願います」
その言葉の後で、ぞろぞろと足音を立てながら人間やリザードマンが歩き去って行く音が聞こえる。植木鉢の中から覗くカノンの視界も悪く、音が頼りになった。
「オブリガート、さン」
周囲にいたリザードマンがある程度いなくなったところでカルマンドがオブリガートへ接近して声をかけた。それを確認したカノンはゆっくり、慎重に動き出す。
「こんカい、ノ、わタし、の、ミせ、の、しょうヒん、に、つイて」
「五時十分までならお答えします」
広場のリザードマンがまばらに散っていく。広場の中には二体のリザードマンだけになる。
「ぐる……まずハ」
「その前に」
遮るように、オブリガートはちらともカルマンドから視線を移さずに、銃を遠くにある植木鉢に構える。
「あれについて、知っていることを話せば放免しましょう」
次回 第十六話『時計じかけの弾丸』
1/3 (土) 20:00更新予定




