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第十三話 広場に響く

カノンとフーガがコードの名前をカノン砲かフーガ砲かで迷ってた。その一連の動きの裏でラルゴも手紙を受け取っていた。

手紙を受け取ったのはフーガたちを見送って少しした後だった。時計の針がかち、かちと静かな部屋に響く。ただ宿を借りているだけで、集会に出る義務もなかったはずのラルゴは手紙に言われて広場へ行くことになった。机の上のいくつかの本やペンをまとめ、時計が午後三時十分ごろであることを確認する。財布や懐中時計、階級証明石といった最低限の持ち物と送られてきた手紙を持ち、用事が終わったら戻ることを伝えて宿を出た。目的地へ向かいながら手紙の内容に再び目を通す。ラルゴ様、と敬称付きの名前からその手紙は始まり、疑わしい者がいるらしく、退けてほしいとのことで三時半までに広場へ来いというものだった。人間の街だから人間がいるのは当然として、そこを魔王軍が強引に乗っ取ってオブリガートに統治を任せたから魔族はリザードマンばかりがいる。もうじき肌寒くなってくる季節の午後、冷たい風が建物と建物の隙間で渦巻いて吹き込む。皆ポケットに手を突っ込んで、立ち話をしている者たちも紙袋を抱えている者も時計のことをちらちらと見て気にしている。広い通りをしばらく歩いていると、少し前まで歩いていた場所と比べて綺麗に掃除のされているように見える地面が見え、右手側を見ると広い開けた場所が出てきた。奥の方には誰かが立って演説するのに良さそうな台と、街の普通の建物に比べてかなり大きな役所と思われる建物があった。そして、それの玄関扉の前に一体のリザードマンが立っているのを確認した。右腕に沿わせて長銃を持ち、細身で背が低く、黒いコートと黒い中折れのハットを被っている。ラルゴはそれを見るとにたりと笑い、少し前のめりになって歩く。

「よぉ。オブリガート」

ハットに隠れていた緑の目が光の下に露出し、縦長の瞳孔が細くなる。

「お久しぶりです。ラルゴさん」

そのリザードマンが左手でハットを取り、腰から折って礼をする。男の声を発したそれは、他のリザードマンより明らかに流暢に言葉を操り、知性さえも感じる。

「久しぶりってのに、相変わらずかったいねぇ。変わってなくて安心したよぉ」

「あなたも変わっていませんね。何年ぶりでしょうか」

近づいてみれば、ラルゴがオブリガートを見下ろすようになり、十何センチか身長に差があることがわかる。

「で、疑わしい者ってのはぁ……どこにいるんだぁ。手紙の感じ、最近ここに来たらしい反逆者の話でもねぇんだろぉ?」

「そちらは問題ではありません。ここへ報告しにUnder-1と街の中での報告通りの情報であるなら、ランク外の一般魔族です。我々で事足ります」

「じゃあ、Under-3率いる何十のリザードマンじゃどうにもできんヤツがいるってことかぁ?」

「はい。相手は」

オブリガートは空をほんの少し見上げる。

「エピックという鳥人の魔族です。国の保護下にある新聞ギルドに所属している人間側についた魔族で、推定Top-1程度。空を飛ぶことのできる種族であること、バックの大きさ、そしてそもそもの強さにしても厄介です」

「で、オレに任せたいってことねぇ」

「はい。報酬の方は」

「結構。友達の頼みだしねぇ」


フォスキアの上空で、腕の代わりに生えた羽根の密集した翼で空中に留まっている者がいる。その男は髪と翼の色は白く、首には革製のバッグが下げられていて、足首に小さな赤色の魔石が嵌められたアンクレットが巻かれている。何かを探すようにきょろきょろとしては、音も立てずにその場所を移動する。その者は、何かを察知してか翼をぐいっと傾け、その身体を大きく反らして動いた。そのすぐ後、地上からさっきまでいた場所へ向かって火球が大きな炎の柱のように尾を引いて飛んできた。

「まったく。魔力でバレバレだぞSir(サー)

広場の真ん中には、堂々と立って右手をその魔族に向けているラルゴがいた。

「コソコソとバトんのは苦手でねぇ。ミスター・エピック」

ラルゴの背に黒い翼が現れる。鱗が立ち並び、皮膜が張られた様相の禍々しく見える翼だ。地面を蹴ると、どんっという音が響き、一瞬にしてその鳥人と同じ高度まで飛び上がった。

「わお。もしかしてきみ、四天王志望者のラルゴ先生?一度合って取材してみたかったんだ。報酬も渡せるけど」

エピックがはっとしたようにして言う。

「お前をぶっ飛ばしていいならいくらでも受けてやるぜぇ」

ラルゴはにたりと笑う。

「じゃあ交渉決裂だな。私はここで撮りたいものがあるんだ。協和音(コード)!」

「オレも友達の頼みだからねぇ。協和音(コード)……」

エピックの足首の魔石がぱあっと光り、二つの翼の内側に光沢のある灰色の鋭い金属片が無数に作り出されると同時に火の玉が金属片たちを巻き込むように形成されていく。ラルゴは口の中に炎が燃え盛り、右腕をエピックに手のひらを向けるように構えると、バチバチと電気が走る。

「"トール・バレット"!」

「"ヴルカーノ"」

無数の火球と熱を帯びた鋭い破片が襲い来る。そしてそれを、炎の柱とそれを取り囲む激しい雷電で迎え撃った。金属片は熱波や電撃で退けられ、炎は金属片によって切り裂かれ分散した。エピックの翼は一箇所、火の粉が飛んで若干焦げていて、ラルゴの頬は小さな切り傷ができて血が垂れている。

「さすがに、手加減したね?」

「そっちもねぇ。じゃ、多少本気でやり合うかぁ」

曇り空が暗く染まり、雷鳴が轟いた。


「うおっ。びっくりした」

「さっキ、マで、はれてタ、よね?」

「そうだね。急にどうしたんだろ?」

「あとこいつはなんでこれでも起きないんだ」

カノンはまだ起きていない。

次回 第十四話『トップ・レヴェル』

12/20 (土) 20:00更新予定

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