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第十二話 いい魔族なんです

フーガとカノンがせーの、のタイミングであーだこーだしてる一方、カストラータとカルマンドはChillしていた。

「まあでも同時に放つだけだから。すぐいける!」

「そうですね!次々やりましょう!」

この会話を数分前にしたところだった。

「せーの、せーの、せーの……」

「はいっ、はいっ、はいっ……」

フーガとカノンはただひたすらに壁に書かれた的に向かって魔法を放ち続けていた。半分投げやりになりながら、ただひたすらに放っていた。

「はぁ、はぁ、フーガさん、はぁ、これ、本当に……」

「いいからやるんだよ。そのうちうまくいく多分」

ただただ魔法を放ち続ける単純作業を繰り返してもう半分適当になりつつあった。魔石を介しての魔法ではあるが少しずつ疲れは溜まる。

「カノン、コツ聞きに行ったんだよな、一回」

「はい、でもなんか、友達二体の、いい感じの空気だったんで」

「あーっ、もうだめだ。もう一回、もぉう一回ちゃんとやろう。多分このままじゃだめだ。しっかり、息を合わせて。せ、ぇ、ので。の、で!息を合わせてな。がむしゃらじゃない!息を合わせて!」

「わかりました!せ、ぇ、の!ですね!」

「一旦予行練習だやるぞ一旦。せ、ぇ、の!」

「せ、ぇ、の!」

もう一度タイミングを合わせて的に向かって魔法を放った。そのとき、フーガとカノンの間から小さな火球を少しの木の葉が渦を巻き、赤と緑の光が混ざり合いながら的へ勢いよく突き進み、音を立てて散った。その魔法の大きさは、普通に詠唱して放ったものにも劣らないぐらいの大きさになっていた。それを見たフーガとカノンはただぽかんとそれを見ていた。

「……もう一回、もう一回やってみよう。同じように」

「わかりました」

「いくぞ。せ、ぇ、の!」

「せ、ぇ、の!」

もう一度と同時に魔法を放つと、同じように二つの魔法が渦巻いて進む。

「お!いったいった!」

「多分これですよ!やりましたね!」

二体はぴょんぴょんと跳ね、下の階へ降りる。

「ねぇねぇねぇ二体とも成功したよ!あ、ごめんちょっと邪魔しちゃったかな」

「ううん、大丈夫。さっきお話も終わったとこ」

カストラータはにこりと笑った。フーガとカノンはカウンターの上に登り、カルマンドを見る。

「これを使えたらこの街の、えーと、なんでしたっけ名前フーガさん」

「オブリガート?」

「そうそれです。統治者にも力で勝てちゃうんじゃないですか?」

「名前聞いた意味よ」

「あなタ、タち、オブリガート、さん、を、たおしテ、くレる、の?」

「はい。近くで一番いけそうだったのがここで」

「そうです!ぼく達は弱い魔族たちの味方なんです!」

「ん、ああそうだ。僕達は僕達の正義のためにこの街の魔族を助けるんだ」

誇らしげなカノンが言ったことに即座に便乗するように言葉を変えたフーガ。カストラータはカルマンドの膝の上でくすくすと笑っている。カルマンドは、左上へ視線をやって時計を一瞥する。

「きょウ、ごご、ごジ。いちじカんご、に、ヒろば、デ、しゅウかい、ガ、あるノ。ソのとき、に、くル」

カルマンドは時計を指差す。

「そレまで、に、じゅンび、ハ、しておいテ、ね」

「そうだね。まだ詠唱も考えてないでしょ」

「詠唱?フォーコ、とか、そういうのを考えるって?」

「うん。協和音(コード)はある程度決まった形はあるけど、放つそれ自身は放つ魔族、まあ人間もだけど、それのオリジナルなの。だから、自分でそれの名前を決めて詠唱すれば威力が増すの」

「じゃあ僕らオリジナルで詠唱を作るってことですか?」

「そうだよ。聞こえのいいやつ考えてね」

フーガとカノンはカウンターからぴょんと飛び降り、ひそひそと話を始めた。

「急に言われたけどどうするよ」

「さぁー……フーガさん何か思いつきます?」

「うーんなんだろ。フーガ砲とかどう?」

「それならカノン砲のほうがかっこいいですね」

カルマンドはカストラータをもちもちと撫でている。

「だいじょウぶ、カな」

「大丈夫でしょ」

カストラータがカルマンドにすりっと身体をこすりつける。

「まだ出会ってそんなに経ったわけでもないけど……強そうだし。それに、自分たちが虐げられたから、他の魔族のことを理解して、他の魔族のために動けちゃう優しい魔族だよ」

カストラータが話し終えたところでもう一度二体の方を見た。

「優しい魔族って僕?」

「ぼくですよ」

「早く考えな?」


「ぐるる……テガみ、デ、す」

「わかったぁ。すぐ出るよぉ」

宿にいたラルゴは、ドアの外から聞こえたたどたどしいリザードマンの声に反応した。ドアを開けると、ポーチを下げたリザードマンが手紙をその手に持っていた。それを受け取って軽く会釈をしてドアを閉め、ベッドへ歩きながら封を開けた。その内容を読みながら、訝しげに目を細め、空いた片手でタバコを口に咥える。

「ふぅん……相変わらず、友達相手にもカッチリした文章だねぇ。オブリガート」

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