第十話 火属性と木属性によって作り出される調和について
リザードマンに負けず劣らずの素晴らしい作戦でステルスに成功した一行。その行く先でカルマンドというリザードマンと出会う。
カルマンドの店の中は、小さな魔族にとっては少し大きかった。いくつかのアクセサリーが壁にかけてあって、カウンターの奥にはいくつか、特徴的な色の薬や魔石が並んでいる。魔石は球状や立方体など様々の形をしている。
「あなタ、ニ、きょうリョく、できル。ハんぎゃクしゃ、サん」
カルマンドはカストラータを抱きながらカウンターの内側に行き、きし、と木でできた椅子をきしませた。
「あー。やっぱりわかってたよね。カウンターの上に乗ってもいいですか?」
カルマンドがこくりと頷くのを見てから、フーガがカウンターの上に飛び乗り、それに続くようにカノンが根を伸ばしてその体を移す。
「それで、協力って?」
「あなタ、たち、ハ、コード、って、しっテる?」
カストラータをカウンターの上に置いて立ち上がり、振り返って一つ一つ選び、7つの球状の魔石を腕に抱えてまた座った。その動きを見ながら、フーガとカノンはじっと黙っていた。
「……カストラータ……」
「ん?」
「しゃべル、と、ツかレちゃう……おねガい……」
「あーそうだよねごめんごめん」
悲しそうな目を向けられたカストラータがこくっと頷くように上下に若干跳ねた。
「えっとー、まず魔石にはいろいろ属性があるわけだけど、基本属性が7つね。火、金、氷、雷、水、木、土の7種類。こいつらを組み合わせるのが協和音っていうの」
そこに転がっている魔石は、赤、黄、水色、橙、青、緑、紫の色を示している。
「多くない?」
「まあそれはわかる。でも地域によっては魔力量と文化的に8つだったり5つだったり、複雑なんだよね……」
「それで、この魔石の中から2つを組み合わせるんですね?」
「そう。相性のいいやつをね。金と雷とか、氷と水とか、あと火と木も鉄板かな」
「ちょうど僕たちのやつだな」
「あ、そっちのトレントさんは木属性なのね」
「ゴーストです。カノンです」
「で、相性がいいから組み合わせて魔法を放てば威力が倍増するってこと。合ってるよね?」
「ウん」
カストラータが確認を取るとすぐにカルマンドが頷く。
「あー。その話はわかったんだけどカルマンドさん。どうして僕の方をずっと見てるんです?」
さっきからフーガのことをずっと見つめていたらしいカルマンドは、ゆっくりとフーガのことを指さした。
「ソの、ませキ、が、きにナっテ」
「ああ、これですか」
フーガは左右にぷるぷると身体を揺すって、魔石を外に出した。他の魔石は球状で転がっているが、その魔石だけは石を丸に寄せるため荒く切り出したままのように角ばっていて、少し転がったあとでぴたりと止まった。それをカルマンドが持ち上げる。
「確かに特徴的だよね」
「ぐる……まおウぐん、ノ、きてイ、じゃ、なイ……どくジ、デ、ちュうシゅつ、した、モの」
「そうだね。魔力の出力量も多そう。ただ、ちょっと魔力耐性があるスライムなら扱えるんだよね」
「まほウ、を、はナつ、いっしゅン、だけ、しゅつリょく、が、あがル、やつ、かナ」
「だとしたら相当な技術だけど……それこそホロ博士クラスの理解度と技術力があればって話じゃない?」
「あのー、つまり僕の持ってる魔石ってすげーやつだよってこと?」
何か高度らしい話をしだした二体の会話に割って入るようにフーガが言った。カノンは隣で眠っている。
「ざっくり言えばそう。すごいの持ってんね」
「僕もそんなすごい物とは思わなかったんだけどね」
フーガははぁっとため息のような音を出す。
「それで、つまりは、その協和音ってやつをうまく使えるようになれば僕らに有利ってことだね」
「そう。カルマンド、指南役任せられる?」
「もちロん、!」
「じゃあ、鉄は熱いうちに打たなきゃ。カノンも大丈夫だよね?」
フーガはさっきまでカノンがいたはずの虚空を横に見た。
「カノン?」
「そコ……」
カルマンドが後ろを指差すので見て見ると、下に逆さまに落ちたまま眠っているカノンがいた。
「……疲れてるし一旦休憩しよう」
「鉄冷めちゃうよ」




