レプ族とミロク1
落ちる、深い、止められない、もしどこかにぶつかっても死ぬッ!
どこまでも落ち続ける、ミロクは自身の力を発動した。 障壁を展開し、尚も落ち続ける。
どこまで、僕はどこまで落ちるんだ?
そしていつか大きな衝撃音がしたと同時にミロクの意識は途切れた。
◇◇◇
ミロク…… ミロク
真っ暗な空間のような場所にミロクは居た。 そこから誰かの声がする。
誰だろう? フィー?? いや、違う。 フィーの声じゃない。
ミロクそろそろ起きて下さい。
何もない空間で自分の意識だけのように感じる場所で目を開ける。 しかし自分の身体などなく目を開けた感覚というのが正しいだろう。
そこには小さな光がありやがてそれは大きな、とても大きな鳥のような姿へ変わる。
君は?
あなたが眠っていた時からあなたの側に居ました。
助けてくれたの?
そうなりますね、あなたはここで死んではいけない。
そっか、でも僕が死んだところで大したことないよきっと。
そんなことはありません、少なくとも私は悲しい。
どうして?
あなたにいつか逢いたいから。 そしてあなたが思うよりも悲しいと思う人は多いはずです。
でもどうしようもないんだ、思い出した。 僕は落ちて死ぬんだよ。
そうはなりません。 ほら……
◇◇◇
気がつくと僕はどこかで眠っていた。 体を起こすと柔らかいものに包まれていた。 なんだろうかこれは? 動物の毛皮…… ではないな。 あ、服も変わってる、なんだか見たことないような服だなぁ。
考えていると誰かが来た。
「お、起きてる……」
何故か動揺している、フィーよりも幼い女の子だった。
「ねぇ、君……」
「お爺様ッ!! 起きてます、起きてます!!」
逃げてしまった、何か怖がらせることでもしてしまったのだろうか? それにしてもここはどこなんだろう? 洞窟でも移動用の家の中でもなさそうだ。
というよりみんなは? フィーとムアム、ヴォルフは?? そうだ、こんなところに居る場合じゃない、帰らないと。
ミロクがそう思った時先ほどの女の子が誰かを連れて戻ってきた。
「お目覚めになりましたか」
優しそうな…… しかし族長よりも高齢層なお爺さんだった。
「あ、あの、僕はここでこうしてるわけには。 あ、違った。 助けてくれたんですよね? ありがとうございます」
「まずは落ち着いて下さい、私はセイリュウと申します。 この子はスイレンと申します」
セイリュウと名乗った老人がスイレンの背中を押すとスイレンは慌てて頭を下げた。
「さ、先ほどは無礼な態度を取ってしまい申し訳ありません!」
「あ、ええと…… 大丈夫です。 気にしてないから。 僕はミロクといいます」
「ミロク様…… ですね」
名乗ればセイリュウは膝をつき頭を垂れる。
「え?」
何をされているのかミロクには理解不能だったが似た様な光景はティムトの族長がされていたことを思い出す。 だが何故自分がそんなことをされているのかもわからなかった。
「ど、どういうことですか? 僕はなにもしてないんですけど……」
「いえ…… あなたは金の波動を体得しています」
「金の波動?」
ミロクは少し考えもしかしたらそれは自分の不思議な力と思い至る。
「ああ、あれか。 でもそれがどうかしたんですか?」
「我がレプ族の古い伝承で、金の波動を扱う者が現れる。 やがてそれは我が一族を救うと」
「レプ族?? 救う?」
わけがわからない。
「いきなりそんなことを言われてもわかりませんし僕は一刻も早く戻らないといけなくて」
「…… 大変申し上げにくいですが。 ミロク様がお目覚めになられるまで1500年の年月が過ぎています」
「…… は?」
1500年?? は? それってどういう…… じゃあフィーもムアムもヴォルフもティムトのみんなももう死んでる? 違う、じゃあ僕も死んでるだろ。
「嘘だ、僕は落ちた時のまま何も変わってないじゃないか!」
「ミロク様は不思議な力を持っておられます。 だからこそ1500年経過した今でも発見した時の若さを保っておられます。 私はもうこんなに年老いてしまいましたが」
え、この人何歳?
「人間の寿命は30年くらいだと思いましたけど……」
「私は人間族ではありません、我が一族はテラ始まって以来最古の文明、レプ族でございます。 レプ族の寿命は人間と比べると長いのです、ミロク様を発見した時の私は400歳ほどでした」
「てことは今は1900歳ッ!? ええッ!」
人間じゃない? 人間にしか見えないのに……
「この姿も擬態、我らは変化の激しい地表には住みません。 天変地異、隕石、気候変動、地表に住む者はそれらによって淘汰される運命にありますから。 しかし極たまに地表に出ることもある故擬態をします」
セイリュウは擬態を解いた。 その姿は竜人となり人間とは別物だった。