朝焼けのパンケーキ
3匹のちいさな狐たちが住む、ほんわか異世界スローライフのお話――
ちょっぴり笑えて、やさしくて、今日も平和。
「ねえねえ、今日の原稿、誰が書くの?」
朝の光が差しこむ小さなアトリエ。
丸いちゃぶ台に、ちいさな狐が三匹。
ふかふかの座布団にちょこんと座って、
耳をぴこぴこ動かして、朝ごはんの相談中。
「……今日は僕がやるって、昨日言ったもん」
と、一番しっぽがふさふさな子がむくれて言う。
「でも昨日のパンケーキ、焦がしたよね? 原稿も焦げるよ~?」
「ちがう! バターが多かっただけ!」
そんなやりとりの横で、
一番ちっちゃな狐が、こそっと机にのぼると、
ぴょこんと跳ねて、小さな手でタイプを打ち始めた。
カタカタ、カタカタ。
ぱちん、とエンター。
「……できたの? もう?」
ふたりがのぞきこむ。
『雪の降る夜、やさしい嘘が恋に変わる。
狐印物語製作所、新作のおしらせです。』
「……うわあ、なんかエモい!」
「やっぱり今日も君が書いたほうがいいかも~」
「……パンケーキは任せた」
「うん!」
そうして、今日も3匹の狐たちは、
誰かの心にそっと火を灯す物語を――
ちゃぶ台の上で、こっそり焼いている。
「原稿の匂いが、バターみたいにあまくなるといいな」
「今日も一日、おいしい話をつくろうね」
どうかよい一日を。