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「あの人しょっちゅう修学旅行生にイケメンの話してるけど、彼女たちの母親世代の年齢じゃん? イケメンが〜とか言われても、彼女たちからすれば『何言ってんだこのオバサン』としか思われてないから」「本当にそうですよね。なんで東京旅行で来てる子に千葉のディズニーランドの話するのか……」
60代くらいの女性と30歳前後の女性が話していた。職場の同僚についての話だろう。言われている人は40代くらいだろうけれど、娘世代のお客さんにイケメンやディズニーランドの話をするなんてどんな人かと私は気になってしまった。そうこうしているうちに沙織が店に到着し、
「咲空ごめん、お待たせ! 結構待ってた?」
と訊く。私は「そんなに待ってないよ」と返した。
「いらっしゃいませ、松下様ですね。メニュー置いておきます。決まりましたらお声がけください」
その頃、若い男性店員がメニューを置きに私たちのテーブルに来る。私と沙織はドリンクをどれにしようかと話していた。
「あと1人が15分ほど遅れるみたいなんですけど、大丈夫ですか……?」
友美が遅れてくるのもあり、私は男性店員に訊いてみる。男性店員は
「あ、はい、ゆっくりメニュー見てもらって大丈夫ですよ。また何かありましたらお知らせください」
と言ってテーブルから去っていった。
「2人ともごめん! お待たせ……! 電車遅れてて、やっと着いた……」
10分後に友美が息を切らして走ってきた。私たちは気にしないでと言い、沙織が「友美はドリンクどれにする?」とメニューを友美に渡す。
「私烏龍茶にしようかな。いま来たばっかりだし、お酒は後にしようと思ってて」
友美は烏龍茶を選び、沙織はレモンサワーを注文する。私も後でお酒を飲むつもりなので、先にコーラを飲むことにした。料理はシェアするためのマルゲリータピザと、それぞれの食べたいものーー私はステーキ、沙織はメンチカツ、友美はカルボナーラーーも注文する。
料理が来るまでの間、私たちは高校時代の他のクラスメイトや隣のクラスの人について話をしていた。友美は情報通なので、いろいろなひとの近況を教えてくれる。例えば
「理枝ちゃんーー英語が堪能で成績もトップクラスだった女子ーーはいまカナダに留学してるよ」
「生方くんーーテニス部で全国大会に出た実績がある男子ーーはスポーツ推薦でMARCHに通ってる」
「和佳ちゃんーー私と同じくらいの成績で趣味も似ていた女子ーーは表参道の雑貨屋さんで働いてる」
などだ。




