B君の事情
※【秘密のアルバイト】のメイン二人の話しを番外です。この話し単品でも問題ないようになっています。ボーイズラブ・女性向けです。苦手な方はご注意下さい。
子供のころからどうしても人の感情を読み取るのが得意じゃなかった。
言われた言葉をそのまま受け取って、思った言葉をそのまま口にしたら喧嘩になるのはあたりまえだと頭では理解していても上手な世渡りが出来るようになることはなかった。
そんな子供は弾かれ、苛められるのが当たり前で、ただやられるような弱い子供でもなかったオレは高校に上がるころには十分札付きと呼ばれるような身になっていた。
グレなかったのは悪い仲間と言われるような相手も作れないほど人付き合いが苦手だからでしかなくて、近づいてくる相手はオレと話しはしてくれても一緒に遊ぶとかどこかにいくという話しをしてくれるような相手はいなかった。
母に用意された1人暮らしの部屋から出て学校に行って帰るだけの毎日。
一週間以上授業以外で話してないというのもざらだった。
そんなオレでも憧れる相手ぐらいはいて。
それは学校の若い教師でも、綺麗な女生徒でもなく、オレと同い年の背の高い少年だった。
ふわりとした柔らかそうな髪を軽く結んだ姿も清潔そうで、くっきりとした甘い顔立ちに、色の薄い瞳の色。すっきりとした無駄のない身体付きと大きな身長。
大きくなったらこうなりたいという憧れの全てがそこにあった。
頭がいいとか、家が金持ちらしいとか、運動神経がいいとかそんなのも彼には似合ってはいるけれど、何より人を悪い気分にさせない柔らかな笑みと甘い声。
優しくて、責任感があって、まだ1年だというのにもう生徒会長候補として名前まであがっている優等生。
オレのような子猿やチンピラといわれているガキがなれるわけがないとわかっていても憧れた。
楽しみもない毎日の中で、一日一度までと自分で決めて彼とすれ違う時だけ側で見れることが嬉しかった。
だからぶつかったのは余所見というか彼に見とれていたオレのせいだったのかもしれない。それなのに謝ってくれる彼についカァーッと緊張してしまっていつものように憎まれ口を利いてしまった。
周りでピーピー言ってる取り巻きもいたみたいだけど、彼しか見えない。
憧れていた薄い色の瞳がオレを見て、甘い声が耳を擽る。
何を言ってるのかもわからないまま無意識であれこれ言ってしまった。最後に思い出して謝ったのはオレにしては上出来な方かもしれない。
頭はぐるぐるで、その日は緊張して眠れなかった。
日課のすれ違いも顔を覚えられてはいないとわかっていても怖くなってできなくなって……オレの楽しみはもう何もなくなったんだと思っていた。
あの日までは。
二年になってクラスが変わって、もともと知り合いもいないオレは時間をやり過ごすために机で突っ伏して寝ていた。ふと、気配を側に感じて開いた目に今までで最高の距離で彼の整った顔があった。
夢にしてはリアルすぎて目が廻る。
「……何?」
「気持ち良さそうに寝てるなって思って」
「あ、そ……」
ふわりと浮かぶ笑みがやっぱり優しそうでドキドキする。
男相手にドキドキもないとは思うけれど、そんなのを超越するくらい格好がよくて優しそうな笑みに緊張して言葉が出ない。
どうせならここで楽しい会話なんかして仲良くなれたら……なんてことを頭では考えていても言葉になんてできなかった。
取り繕うようにあくびを漏らし窓へと視線を向ける。顔が赤くなっているのがばれてないといいんだけど。
それからは天国だった。
外を見るふりをして窓に映る彼の姿をいつでも見られる。声も側で聞ける。嬉しさで眩暈がしそうだった。
そんな特等席を変われと絡まれたらオレじゃなくても断わると思う。
何か理由があるならともかく女子にいい格好をするためだけにオレの唯一の幸せを取り上げようとするその生徒に少しイラ付いた。だからつい、余計なことまで口にして殴りかかってきた奴を蹴り付けてしまった。
失敗した。……このクラスでは大人しくしているつもりだったのに。
怖いとか思われたらどうしよう。
そう思いながらも顔にも出ないでぶっちょう面でしかないオレをなぜか彼が見詰めていた。
「……何?」
彼の瞳に映っているというだけで緊張してしまう。
「僕、寒がりでさ。そっちと変わってくれないかな」
さらには話しかけられてオレはやっぱりぐるぐると目を回しながらも立ち上がった。
寒いのは理由になるし、それに彼の言うことにオレが逆らえるはずなんてあるわけがない。
「……中身移動させるの面倒だから机ごとでいいよな」
つい淡々と言ってしまうオレを彼が不思議そうに見詰めていた。
「何? 変わるんじゃねぇの?」
「あ、うん。ありがとう」
「別にいい」
つい笑ってしまいそうになる顔をきゆっと引き締めて机とイスを移動させてイスに座る。
窓に映る姿は見れなくなったが、今度は外を見ているふりをして横顔が見れる喜びでオレはいっぱいになっていた。
病んでるなとは思う。
それでも、テレビのアイドルに憧れるのと同じように憧れた相手が手の届く所。それもすぐ側にいるのだから舞い上がらない方が嘘だろう。
だからと言って話しができるとかいうのはまた別の話しなんだが。
側で見られるだけで幸せな時間が過ぎていく。
クラスでも遠巻きにされるのもなれたもので特に辛いとも思わなかった。
「宇佐美。客が来てるぞ」
うっとりと甘く響く声を聞いていたら一年のころの友達に呼び出された。
週に一度はやってくる彼は元のクラスでも平気で話しかけてくるという珍しい相手で仲良くしてくれといわれて嬉しかった。
まぁ、学校だけの関係でしかないのだけれど……どうしても馴染めないオレのせいで一緒にどこかにいくということもなかったのが少し残念だが、クラスが変わっても合いに着てくれる物好きだ。
ただ……
「宇佐美。頼む。先輩に無理を言われててさ。どうしても今日掃除ができないんだよ。だから変わってくれないか」
「……ああ、いいよ」
いつも会うたびに出てくる先輩という相手に迷惑をかけられているのかと心配になる。
助けになるなら手伝うくらいどうでもいいが、根本的な解決になってない気がする。腕にはそこそこ自信はあるし暴力でどうにかしていい相手でもならどうにかなるが、そういうわけにはいかないから困る。
といってもオレには手伝い以外何もできないので頼まれごとだけは断わらないようにしていた。
その日の放課後もいつものように頼まれた掃除場所を片付けて鞄を手に帰ろうとしていただけだった。
「宇佐美っ」
突然呼ばれた名前に驚きながらも振り返る。
声の聞き違いではなかった証拠にオレの目の前に憧れの彼の妙に不機嫌そうな顔があった。
いつでもにこにこしているのに機嫌が悪いなんて珍しい。
「何か用?」
「今日は遅いんだね」
「ああ、掃除してたから」
「今日は掃除当番じゃなかったよね」
「そうだな」
せっかく彼との会話なのに緊張してなかなか舌が廻らない。
しんっと止まってしまう会話をどうにか続けようと頭を回転させているオレの前で彼が僅かに苦しそうに眉を寄せた。
そんな表情は初めてでなぜかドキッとしてしまう。
「君に掃除を頼んだらしい子が遊びにいくって言って帰っているのを見たよ」
淡々と言われた言葉に目を瞬く。
どうしてオレが掃除を頼まれたのを知っているんだろう?
それに遊びにいくなんて人違いだろうか? 先輩からの頼みごとは?
「……そう。用がそれだけなら帰る」
ぐるぐると纏まらない思考を誤魔化すために彼に背を向けたオレの肩が掴まれる。。
「いつも頼みごとを聞いているんだろう。そいつはまったく感謝なんてして……」
優しい声が苦しそうに言葉を紡ぐのを口を塞ぐようにして邪魔する。
なぜそんな忠告をしてくれるのかは分からないが彼の口から嫌な言葉は聴きたくなかった。
「本人のいないところでそいつのことを話すのは好きじゃない」
「……ああ、そうだったね。ごめん」
誤魔化すようにいったオレの言葉になぜか謝ってくれる。そうだったとは何がそうだったんだろう?
混乱しながらも帰ろうとしたところで、今更だけど肩を掴まれていたのを思い出した。
服越しなのに手の温度にドキドキする。
憧れているだけだと思っていたのに、いざ近くにいくと妙に落ち着かない。これがファン心理というものなんだろうか。
「肩……痛いんだけど」
「あ、ごめん」
手を離してもらうと同時に慌てて顔を背ける。
顔の火照りが止まらない。
こうなりたいと憧れていただけのはずなのに、声をかけられて視線を向けられたら胸が高鳴る。
これは本当に憧れなんだろうか?
声が聞きたい。姿が見たい。手に触れたらもう手を洗いたくない。
くるくると頭で考えて、熱狂的ファンなんだなと自分でなっとくする。気をつけないと追っかけをしてしまいそうだ。偶像相手でないならそれはただのストーカーになってしまう。
どこかのぼせたような気分でまとまりのないことを妙に冷静にくるくると考えながらオレはふらふらとどう歩いたかも解らないまま家へと帰っていった。
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次の日。
連続は珍しいが友人がまた呼びにきた。
彼に忠告されたがそんなことが吹っ飛ぶようなこと=【肩を触られた】があったのですっかり忘れていた。
のそのそと友人の側まで歩いていったところで、突然のしっと背中に重みがかかった。
ふわりと甘い香りに包まれ、頬の横に垂れた柔らかな髪が僅かに触れる。
ギャーーッとパニックになってなにがなんだかわからない。友達がいもなく、友達のことなんて一瞬で頭から飛んでしまった。
「何か用?」
舌が震える。
しかし、聞かないとこのまま固まっていてはオレの心臓がどうにかなってしまいそうだ。
「気にしなくていいよ。ちょっともたれたくなっただけだから」
「他の女子にでも持たれたほうが喜ばれると思うけど」
と、いうか、オレから離れてくれないとオレの心臓が持たない。
「それだとセクハラになるでしょ」
「ああ、そうだな」
淡々と返事をされてそれ以上無理に振り払う理由も浮かばなくて、意識から逸らそうと友人へと視線を向けた。
「で、用事は?」
「え、あ、あの……」
友人もぼんやりと彼を見つめている。
まぁ、これだけ格好のいい顔が側にあったらそれは見蕩れるだろう。気持ちはわかる。
「昨日先輩から頼まれた用事が終わらなくてさ。今日も手伝いに行くことになったんだよ。だから掃除をかわってくれないか」
どうにか自分を取り戻して言われた言葉に首を傾げながらも思考が混乱しているのでとりあえず頷こうとした。
「そう。いい……」
しかし、最後まで言う前に細くて甘い香りがする手に口元を塞がれた。
うわーっ、くらくらするっ。
「なんだよ」
「君の先輩からの用事って合コンのことなのかな。昨日廊下で楽しそうに話していたのを聞いたんだけど」
「お前には関係ないだろ」
「関係ないけど、僕はウソ付きは好きじゃないんだよ」
「理由なんてどうでもいいだろ。宇佐美が好きで俺の頼みを聞いてくれるんだから」
なんだか、友人と彼が口げんかをしている気もするんだが混乱して考えがまとまらない。
息が出来なくて死んでしまう気がして、勇気を振り絞って彼の手を口元から引き剥がし友人と彼から逃げ出した。
「宇佐美っ」
名前が呼ばれる。呼び止めないで欲しいんだが……倒れそうだし。
必死にぐるぐるした意識を纏めて切れ切れの情報を纏めて言葉にする。とりあえず今日は手伝いをする元気はないので断らないととしか頭に浮かばない。
「理由が何でも構わないが、オレも嘘をつかれるのは好きじゃない。他の奴に頼むんだな」
「なんだよ。友達じゃないか。いつも頼みを聞いてくれただろ」
「……暇だったからな。頼みがあるなら今度はオレがきいてもいいと思える本当の理由を持ってくるんだな」
余裕がないんだから引き止めないで欲しいんだけど。
「お前が一人でハブられてるから相手をしてやってたんだろ。偉そうに言ってんじゃねぇよ」
「そうか。それは悪かったな。なら、もう構わないでくれ」
早く帰って欲しくて乱暴な言い方になってしまったがそんなことを気にする余裕なんてない。
彼の背中を見ることもできないで振り返らずに自分の席に向かう。
早く逃げないと奇声を上げて走り回ってしまいそうだ。
学校に着く前に買っておいたパンの入った袋を手に教室から逃げ出そうと扉に向かう。
まだ扉の前にいる彼の姿から必死に視線を逸らした。
友人がいなくなっていることに気づくこともできない。
「邪魔」
「ああ、ごめん」
場所を空けて欲しいだけなのについキツイ言い方になるオレの言葉に謝られて、反射的に泣きそうになる。
ヤバイ。もう、ダメな感じだ。
とりあえず一人にならないと、ひとりになってごろごろ暴れて冷静にならないと午後から教室に戻れない。
無言でダカダカと屋上に向かって歩いていく。
後ろから彼の声が聞こえる気がするんだが気のせいだ。と思いたい。
人気の少ない屋上への階段を上り扉の前で足を止めた。
ガラの悪い不良がいる=【つまりオレ】という噂がたってあまり人がこない屋上に偶然オレと一緒に歩いてくるというのはさすがに無理があるだろう。
「何の用?」
勇気を振り絞って声をかける。
「宇佐美と昼が食べたいなと思ったからついてきたんだよ」
甘い言葉にまた思考がぐるぐると回転してしまう。いきなりわーっとか叫んで走り回ったらさすがに怖いと言う前にヤバイ人だ。
「女子が一緒に食べようって騒いでたけど」
「僕は宇佐美と食べたいから断ったよ」
「そう」
オレとという言葉に嬉しいが振り切れて逆に冷静になってしまう。
しかし、自然に振舞うことなんてできるわけがなくギクシャクと扉を開けるといつもの日当たりのいいフェンスへと向かった。
背中の足音と気配にばかり意識がいって転んでしまいそうだ。
ふらふらとなんとか座り込んで紙袋を開ける。
ちらりとしか見てないがしっかりとチェックした感じから言ったら彼は手ぶらみたいだ。今から買いにいってもらうなんてことこの幸せがなくなってしまいそうでできないし、何より胸がいっぱいで昼飯が食べられる自信がない。
「カレーパンとチョココロネとイチゴメロンパンとどれがいい?」
「分けてくれるのかな?」
「一緒に食べるんだろう?」
「なら、遠慮なく貰おうかな」
袋を覗き込む彼の顔が近くてますます顔が固まる。近くで見ても整った顔立ちはそのままで、妙に甘い香りはやっぱり彼から香っているんだとわかった。
「宇佐美はどれが一番好き?」
「……イチゴメロンパン」
「なら、チョココロネを貰おうかな」
「わかった」
オレの好きなものを聞いてから別のものを選んでくれる優しさにますますクラクラする。今までそんなことしてくれた人なんていなかった。
カタカタ震えそうになった手で直接触らないように気をつけてチョココロネを取り出して差し出す。受け取ったときに少し手が触ったかもしれない。
もう昼飯どころじゃなくて、全部あげると言っても貰ってくれないような気がしたのでカレーパンを二つに割って差し出す。
「これもやる」
「宇佐美の昼ごはんがなくなるよ」
「別にいい。今日は早く帰れそうだから足りなかったら食べて帰るし」
というか、胸がいっぱいで入らないし。
「そう。なら、遠慮なく。あ、帰りはお礼に僕が奢るからね」
帰り? 奢る?
それは一緒に帰るということなんだろうか?
「なんで?」
「お昼ご飯を分けてもらったからかな」
「……そう」
パニックになりながらもなんとか訊ねた言葉の返事についにへらっと笑いそうになる顔を引き締める。
昼のパンの時点でこんなに緊張しているのに帰りもずっと一緒なんて……死ぬかもしれない。
嬉しいのと緊張するのでグラグラしたままなんとかパンを口に運ぶがまったく味がしない。
「さっきの彼は友達?」
「……オレは友達だと思ってる」
さっきの彼って誰だったっけ……あ、あの友人のことかな。いや、でも別の誰かかも……
考える余裕もなくて反射的に口を開く。
「宇佐美って騙されやすそうだよね」
「……初めて言われた」
返事の代わりのようにぽつりと言われた言葉にほんの少し驚いた。
「まぁ、宇佐美は見た目も口も悪いし、遠くから見てたらそうは思わないかもしれないね。騙そうと思ってる人は騙す相手にそんなこと言わないだろうし」
怖そうとか危なそうという感想以外でオレがどう見えるかなんて言う人なんていなかったから、彼がちょっとでもオレを見てくれていたのかもしれないと思うとほくほくっと胸が熱くなる。
「確かにそうだな」
解らないまま頷く。
彼にそう見えるのならそうなのかも知れない。というか、それでいい。
「でも、困った顔をしながらも友達に頼まれたら断れない宇佐美は優しくていいと思うよ」
「……そんな顔をしていたか?」
「ほんの少しだけどね」
困っていたのもばれていたことに戸惑う。
それなら今、ドキドキしていることや、興奮して倒れそうなことも全部ばれているんだろうか?
にやけそうになる口を隠すために食べ終わったカレーパンの代わりにメロンパンを口に運ぶ。甘いすっぱいイチゴの香りに少し落ち着いた。
「……イチゴが好きなんだ。可愛いね」
「なん……で」
可愛いって、可愛いって、可愛いって。
くるくると彼の言葉が頭の中で廻り続ける。
「メロンパンが好きならそんな変わったのを選ばないだろ」
「ああ、そうだな」
変わったパンを食べているのが可愛いと言ったのか。
誤解した自分が恥ずかしくて顔が火照る。
妙に視線が刺さるのもきっと気のせいだ。と思っていたのだけど、ちらりと視線を上げると彼と視線が重なった。
ドキっと心臓が痛くなる。
「何?」
「……宇佐美って面白いから側で見ていたいな。僕と友達になってくれる?」
と、友達って……オレと?
パニックはピークになって、グルグルとまったく何も考えられない。
友達になったら話したりしてもいいんだろうか。時々だったら触ったりとか……
もうわけが解らなくて何が嬉しくて何か怖いのかもわからない。
「よく分からないが、わかった」
それでも、もういいと言われる前にと必死に頷いた。
「宇佐美のことは僕が守ってあげるから安心していいよ」
「あ、ああ」
「食べかすがついてる」
何を言われているのかわからないままうんうんと頷いていたオレの口元の側をぺろりと暖かな舌が触れた。
ズクッと胸だけじゃない場所まで痛くなって卒倒してしまいそうだ。こんな彼の何気ない行為にすら心臓だけではなくあらぬところまで反応してしまっては心臓も身体も持たない。
「自分で取れる」
「つい気になったんだよ」
さりげなく身体の位置をずらしながら必死に数字を考えて身体を落ち着かせる。
憧れてる相手に触られたからってそんな場所まで反応するもんなんだろうか?
前に肩に触られた時は平気だったのに、友達と言われて興奮したのが悪かったのか……妙に空気まで艶っぽい気がしてしまう。
欲求不満かもと今まで考えたこともないことまで考えてしまった。
しかし、ただの憧れだけでなくそういう意味でも好きなのだと、何気ない瞬間に触れられてその気になる自分に気づかされるまでそんなに時間はいらなかった。
乙女っぷり全開です。A君の事情と台詞がリンクしてますので重ねで読むと面白い……といいな。