タイトル未定2024/11/15 00:20
「あ、普通に美味しい?ん?んん?」
不思議な味がした。
「苦くないんだな」
「そーなの!ふふん、君は良さがわかると思ったよ」
「そ、そうか。まぁ、こんな珈琲の街で喫茶店なんて大変だと思うけど、頑張ってな」
「あ、ちょっと!」
かつて街おこしのために田舎なこの街はある一手を打った。それはもう大胆に。
市街地から少し離れたところの山を切り崩し、エリアコーヒーという場所を作った。
そこはその名の通り、喫茶店激戦区となっており、バリスタの世界大会に出るような人もゴロゴロといる。
そんな街で、
「女の子一人で、しかもあの感じで大丈夫かね」
余計なお世話だろう。実際にアクションを起こす訳でも無く、ただ単にそう思った。
出店を出してるんだし、実店舗もあるだろう。機会があれば探してみるものいいかもしれない。
そう思ったところで、あの何百店舗もあるエリアコーヒーを?とどう考えてもマイナーな店を探せるわけないと思うのだった。
帰り道、鼻腔をくすぐる様な爽やかな珈琲の香りは午後のひと時に華やかさをくれた。
缶ビールなどで晩酌している大人達を横目に珈琲を1口。自分はこれくらいでいいのかもしれないな。
ふらっと寄っただけだったのに、なんだかいい思いをした気になった。
そして、冷静になった。
「おれ、これに800円使ったのか……」
確かに美味しいと思うけど、なんだかなぁ。割に合わない気もした。




