第9話:ハナと薫の事
2033年12月24日の夜、群発地震が多数、発生していた伊豆諸島の八丈島が噴火した。翌日、伊豆大島も噴火。27日には、箱根で有毒ガスが吹き出し、一帯が立入禁止となった。
薫は、亡くなった父の借金返済のため、昼は外国人向けの簡易宿泊施設のフロントをやって、夜は上野のクラブで働いていた。店での名前はハナ。
常連客の奴から、噴火の詳細を聞き、怖くなった。母も数年前に亡くなって、一人で生きるアラフォーだった。奴はなんたらコンサルをやっていて、全国を走り回っていた。
奴は、建築家Aから事業を託されていたが、乗り気ではなく、コンサルメインで仕事をしていた。
10年前、先輩のTマチュ、仲間のFチリタバコ、建築家A先生を立て続けに亡くして、トラウマてやつだった。
ふと、10年前の事を思い出した。
Fチリタバコの実家に線香あげに行った時、Fチリタバコの携帯LINEに薫さんという人から、元気ですか?とメッセージが届いた。残されたお姉さんによると、聞いていたパスワードが違っていて、ロックされてしまい、検索不可能となったらしい。
薫さんを探して欲しいと言われたが、探しきれないでいる。
男か女か?年齢?居住地?
facebookにかおる会というのがあると聞き、その代表さんにメッセージしてみたが、リターン無し。
謎のまま残った。
奴はハナの本名を知らない。薫は奴が三人の関係者とは気が付かなかった。
年が明けて1月10日に富士山が噴火した。中腹から噴火して、火山灰を大量に吹き出し続けた。5年続いた噴火で関東圏は1mの火山灰が積もり、インフラは壊滅した。
政府は首都移転などの対策を講じたが後手ごてとなり、首都圏で火山灰を吸い込んだ人々が500万人亡くなった。
薫も働くために東京に残ったため、次の年に火山灰症候群で命を落とした。
走馬灯で心残りな事がいくつも流れては消えて、暖かい光の中で魂の故郷に戻った。頑張ったねという意思が伝わり、次の瞬間、瞬く間に移動し始めて、加速度的にある世界の扉をくぐった。
ハナという名前の少女として生まれた彼女は2105年生まれの18歳となっていた
母は外務省出身で、女性初の日本大統領となった 楓 かえで氏だった。
楓は一度、結婚をするが、強気の性格や、やるべき事のために、家庭を疎かにして離婚した。
ハナは母とはうまくいってなかった。