第7話:楓 かえで の事
2123年、56歳になる楓 かえで氏は女性初の大統領だった。2067年7月7日生まれで、両親の仕事のため、カナダで生まれた。
日本は100年前の富士山噴火と、フィリピンプレート海底地震による津波で東京及び海岸沿いの地域が被害を受け、首都機能の分散と、国会の京都移転となった。
政治の混乱から、国民投票による大統領の選出を掲げた、未来革新党が第一党となり、国民東京により、大統領制となった。
国民が選んだのが、第一党の女性候補だった。
女優の様な容姿、5カ国語が堪能、幼児教育や生涯学習、健康寿命への取組など魅力ある人柄であった。
かえで氏は建築家Aの生まれ変わりだった。生まれた時の記憶が鮮明にある。役目を与えられたが、ぼんやりとしたもので、人々を導き、自然に返すというようなイメージだった。
人を導くには、どうしたらいいかと小さい頃から考えていた。
フランスの民衆を導く自由の女神とか?宗教の指導者とか?政治家とか?ハーメルンの笛吹き男とか?
自然に返すとは一体なんだかよく分からなかった。
学校では学年1番で生徒会長などもやったが、導いてなんかいなくて、ただの御飾りだった。
政治家になるなんて夢にも思わなかったが、外務省に入った時、同僚に言われた事が気に掛かっていた。
奴は「世界を変えなければならない。今の日本は官僚の道具で実験場だ。クーデターを起こした昔の官軍のままだ。オレは使命を持って生まれた。やれるだけやるさ。」と言っていた。
数年後、奴は赴任先のタイ プーケットで事件に巻き込まれて命を落とした。
生まれ変わりの前に、タイで学校を作っていた事があった。プーケットで役人に拳銃を借りて、撃ち方を教えてもらった。賄賂天国だったのを思い出した。
奴は何で死んでしまったのか。世界を変えるんじゃなかったのか。奴も生まれ変わりだったんじやないかと思った。
政策の最終目標は、年齢層毎の選挙権割合をAIにより、最適化する事。
この100年で、老人比率の最大化で、選挙をしても、老人優位の政策しか受け入れられず、若年層の不満や、将来が絶望視されている。
勇気を持ってこの政策を実行したい。ただし、国民投票が待っているので、高度な知識を持った国民をいかにおおくするかが大問題であり、そのために、幼児からの英才教育を義務付けてきた。
前世で遊び人だったので、今は真面目に取り組んでいる。