第1話:プロローグ
2023年、世界各地で紛争が発生している。日本の政治も不安定で、国民が直接選挙で選んでいない総理大臣が権力を握っている。最大政党の党首というだけで。
薫が日本に戻ったのは3年ぶりだ。シンガポールの日本人相手の高級クラブで働いていたが、父が亡くなって帰国する事にした。
シンガポールに行ったのは、東京上野のクラブでバイトしていた時に出会ったFチリタバコさんに紹介されたからだ。
昼間は物販卸の会社で事務員として働いていたが、父が癌になって、費用を稼ぐために夜は知人の紹介で、クラブで働いていた。
オッサン達のくだらない話にわーきゃー言うと喜ぶ。家では家族に相手にされないのだろう。
給与を出してもギリギリの生活だったが、Fチリタバコさんの知人がシンガポールで経営している店で人が足りないそうで、会社を退職して、とりあえず3ヶ月のつもりだったが3年も居た。給与も日本の倍はもらえたし、昼間は広いマンションで好きな事が出来た。
Fチリタバコさんは、シャイでロン毛をポニーテールにして、ドアノブのようなカバーをしていた。オカマのような喋り方で、〜なのよ。と喋った。
シンガポールに来て1年ぐらいの頃、LINEで、白血病になって実家に帰る事になったと連絡があった。
心配したが、次のメールは昨年末に、広島原爆病院に入院したと。
毎月、LINEしていたが、年明け以降、既読にならない。電話してみたが繋がらない。
実家の住所や電話など知らないので、連絡が取れないでいる。
父の一周忌が終わり、日本に帰ったので、上野のクラブに行ってみた。
仲が良かった元同僚は一人ぐらいしか居なかった。仲良しのRちゃんは見た目可愛いが、ダミ声だった。たばこの吸いすぎだと思うが、やはり、父を癌で亡くして、母がやっている衣料品店の看板娘だが、夜はクラブで働いていた。
Fチリタバコさんの事を聞いたが、分からず、Fチリを連れてきたA先生を思い出した。
A先生は1回しか来た事が無く、調べられなかった。