アツシたちの編入
アツシはタクトと相談して、やはりおれたちは元の世界に帰してもらおうとなった。村長の家に行って、そのことを頼みに行くことにした。
「村長さん、おれたちあんたに話があるんだけど」
「おお、アツシ様、タクト様ちょうどよかった。私もあなた方に話があったところですのじゃ。立ち話も何ですから、お上がり下さい」
気勢を削がれた二人だったが、後で言えばいいかとまず部屋に上がった。
「ご覧下さい。これが約束のお金です。これを三人でモンスターのボスを倒した暁には、山分けして下さい」
宝箱から溢れ出る金貨の山を見て、アツシとタクトは息を呑んだ。この世界の貨幣価値はよく分からないが、確かにこれなら一生不自由なく過ごせそうだ。
「本当に全部これがもらえるのかよ?でもおれたちが元の世界に帰った場合、こんな金は使えないだろうが」
「ええ、全部差し上げます。それと確かにアツシ様たちが元の世界に帰った場合は、直接は使えないと思います。しかし換金しても、結構な金額になるかと思います」
「ってゆーか、この金で何故もっと強い奴を雇うなり、豪華な武器を揃えるなりしないんだよ。その方が手っ取り早いだろ」
「それももちろん考えました。しかし強い人を雇ったり、武器を揃えたとしても、この村の秩序が乱れる恐れがあります。神に祈り、勇者様たちに来ていただくのが最良だと思ったのです」
アツシは考え込んだ。確かにこれだけの額がもらえるのなら悪い話ではない。
「だけど、おれたちがボスを倒した後で、やっぱり払えません、まけてくださいなんてことはないだろうな?そうなったら、土下座なんかじゃ追っつかないぜ」
「大丈夫です。ここにお宝があるというのとは村人全員が知っていて、後で勇者様たちに差し上げるということも皆知っています。万一誰かが邪心を起こして宝を横取りしようとしても、私の指紋と呪文がないと開かないシステムになってますから心配いりません。勇者様たちへの約束を違えることになったら、私が村人たちから殺されてしまいます。ご不安だと言うなら、念書をしたためましょう」
村長は本当に念書を書いてくれた。
「私からの話は以上ですが、アツシ様たちのお話というのは何でしたかな?口約束だけではやる気を起こしていただけないのも無理もないと、私の不明を恥じたので失礼かとは思いましたがお宝をお見せしたのですが」
「あ、いやそろそろのんびりするのも飽きてきたので、訓練や戦いに参加させてもらおうかと」
「おお、さすがは勇者様方。ついにやる気を出していただけましたか。これは心強い。では昼からの合同訓練にご参加をお願いします」