マサの回心
マサは翌日、快適に目覚めた。サキが調合してくれたポーションを飲んでから、眠ったお陰かもしれなかった。
「おはようございます。昨日はありがとうございました。よく眠れましたか?」
「ええ、おかげさまで」
トシと挨拶を交わした。トシが用意してくれた朝食を、マサは食べた。パン料理だったが、結論美味かった。
「今日も昨日と同じような、流れのことをやるのですか?」
「はい、そうですね。食べ終えたら、早速剣の訓練といきましょう。しかし昨日も言いましたが、初めてであれだけできれば上等ですよ。頼もしい限りです」
「いやいや、そんな」
マサは少し照れながら、この世界に来るまでのことを思い出していた。アツシとタクトとおれの三人で、悪いことばかりをしていたな。三人とも家庭環境が悪く、成績も悪かったので、いじめとかカツアゲとかをやってウサを晴らしていたな。揉め事もしょっちゅうで、喧嘩ばかりして挙げ句の果てに、三人とも高校を退学になったな。そして、ひったくりでもしようか、カツアゲか強盗でもしようかと相談している時に、この世界に召喚されたのだったな。
マサがそう回想していると、ドアをノックする音が聞こえた。トシが応対すると、老人とその家族の来客のようだった。昨日の夜、戦闘に参加していた老人らしい。
「おお、マサ様。あなたは私の命の恩人です。ありがとうございました。あなたがいなければ、私はどうなっていたか」
「いや、そんな大げさな」
マサは、しきりに照れた。
「いや本当に家族一同、感謝しております。ありがとうございます。これはつまらない物ですが、お受け取り下さい」
娘夫婦らしき人と孫らしき人からも頭を下げられ、野菜を手渡された。
「そうでしょう。マサさんは筋がいいですよ。鍛えればさらに伸びます。こっちの都合で呼びよせてしまって恐縮ですが、本当にいい人に来てもらえてラッキーです」
トシがそう言って、マサを立ててくれた。異世界でおれも居場所を見つけることができたのか。感謝すべきなのは、おれの方かもしれないなとマサは思った。