マサの奮闘
マサはトシに戦闘の訓練をつけてもらった。剣を持つなんて初めての体験だったので、彼は戸惑った。暴力を振るったことは何回もあったが、剣はまるで身体の使い方が違った。
「マサさん、あなた筋がいいですよ。今夜もモンスターの襲撃があるかと思いますので、ご協力していただけますか?」
「はい、お願いします」
毎晩のように律儀に村を襲いにくるというのも、少し妙な気もしたがモンスターは夜行性で村人と逆なので、モンスターの方からしたらその方が都合がいいらしい。
村の周りに結界が張ってあるため、モンスターが侵入してくる恐れは低いが村人が撃退する姿勢を見せないと、舐めて大挙して襲ってきて結界が破られるかもしれないということで、やはり戦闘の姿勢を見せるのも大事なのだという。
いつもモンスターが襲ってくるという、場所に村人と共に行った。見回してみると、確かに若い男はトシだけだった。後は中年男が二人と老人が一人だけだった。なるほど異世界から若者を呼びたくもなるわけだと、マサは妙な納得をした。
モンスターたちが襲撃してきた。トシがほとんど一人で引き受けて応戦していた。中年男二人は、トシが仕留めきれなかったモンスターを相手していた。老人とマサは後方で構えているだけであった。
だがモンスターが一匹、老人に向かってやって来た。老人も応戦したが、尻もちをついた。そこでトシが応戦してモンスターを退治した。そういうことが三回あった。やがてモンスターたちも諦めたか、帰って行った。
「お疲れさまです。マサさん、すごいですね。正直初めてで、ここまでやって下さるとは予想以上です。あなたがいなければ、シゲルさんもどうなっていたか」
シゲルというのは、おそらく尻もちをついた老人の名前なのだろう。
「いえいえ、トシさんのお陰ですよ。毎日こんな過酷なことをやられてるのは、すごいなと感服いたします。とりあえず、今日は疲れたので休ませていただきます」
「そうですね、明日もよろしくお願いします」