分裂
「何だよ、マサ。お前はいつも、おれたちのケツに付いてセコい悪事をするしか能のない男だろう。その女の気を惹きたくなったのか?」
アツシがそう言い、マサを挑発した。
「いや、おれたちは周りから疎まれてばかりだっただろう。異世界とはいえ、初めて必要とされたのはありがたいことじゃないのか。できる範囲で、協力してはどうかな?」
マサは冷静に返した。
「まあまあ、いきなり呼び出されて協力しかねるという、アツシ様とタクト様のお気持ちも分かります。マサ様のようにご協力していただけることの方が稀有なことなのかもしれません。では、マサ様にはご協力していただいて、アツシ様とタクト様は何もしなくてもいいから、しばらくここにご滞在して下さるというのは、いかがですかな?結論が出たらお三方で行動を共にされ、帰るか残るかお決めしていただくというのは?もちろんその間の、食事や住まいは提供させていただきます」
村長がそう言って、とりなした。
アツシもまあいいか。しばらくタダ飯をご馳走になって、ここでくつろぐというのも。どうせ根性なしのマサのことだ。すぐ音を上げて帰ろうと言うのに決まっている。そうなってから帰るか。そう考えた。
「分かった。おれとタクトはしばらく居候されてもらう。マサは訓練に参加するなり、モンスター退治に協力するなりする。それでいいか?」
アツシは、そう言い村長に確認をとった。
「おお、もちろんですとも。ありがとうございます。ではアツシ様と、タクト様は宿屋にすぐご案内いたします。マサ様はすみませんが、トシの家で同居していただいてもよろしいでしょうか?トシが師範代として、訓練をつけさせていただきます。後方支援でいいですから、今夜も来るかもしれないモンスター退治にも参加していただきたいのですが、どうでしょうか?」
「はい、よろしくお願いします」
マサはそう言い、頭を下げた。アツシとタクトは小馬鹿にしたような目でマサを見て、部屋を出て行った。