力を合わせる
アツシ、タクト、マサの三人はフダつきのワルだった。三人で集まって、どうやって金を巻き上げるか算段していたところ、三人とも宙に浮くような不思議な感覚がした。
三人とも気がつくと、見たことも行ったこともない村の広場に立っていた。戸惑い顔を見合わせていると老人の男がやってきて、いきなり土下座をした。
「おお、来て下さいましたか勇者様方!どうか、この村を救って下さい」
「はじめまして。ぼくはトシと言います。ぼくからもお願いします。力を合わせて、モンスター退治をしましょう」
若いワイルドな感じの男から、握手を求められフレンドリーに話しかけられた。
リーダー格のアツシが、話が全然見えない。どういうことか説明しろと怒鳴りつけようとしたところ、かわいい女の子がやって来た。
「私はサキと言います。ごめんなさいね。いきなりこんなことを言われても、わけが分からないですよね。あちらに簡単な食事が用意してあります。いきなり呼び出したお詫びも兼ねて、あちらでお話しませんか?」
と言って、女性は小屋を指差した。三人とも美女には弱かったし、アツシが行こうと言ったので、まず話を聞くことにした。
食事は、とても美味しかった。毒見を村人がやってくれたので三人とも安心して食べた。少しだけリラックスすると、村長だという先程土下座した老人が話しかけてきた。
「実はこの村はモンスターからの攻撃を、毎日受けているのです。今はトシが防衛役のリーダーとなって防いでくれているのですが、トシ以外は高齢者か子どもばかりになっているので些か頼りない面があるのです。いつ村の中まで攻め込まれるか…」
「では、おれたちに村の防衛役を手伝えと?」
「いや、それもやっていただきたいのですが、お三方にはモンスターのボスを倒していただきたいのです。ボスを倒さなければ、同じことの繰り返しですから。力をつけていただいてから、ボスを倒しに行っていただきたいのです」
「おれたちに何か見返りは?」
「一生遊んで暮らせるだけの金を、ご用意させていただきます。その金でここで暮らすのもよし、元の世界にお戻りになって、遊んで暮らすのもいいと思います」
「ってか、何でおれたちを呼び出したんだよ。戦いに慣れた軍人や格闘家を呼ぶのがフツーじゃないのか?」
「いいえ、村長がふさわしい勇者をお願いしますと言って、神によって遣わされたのがお三方なのです。お三方こそが、この村をお守りになって下さるのに一番ふさわしいという、神の決めた運命なのです」
今までの説明役の村長に替わって、最後はサキが説明してくれた。何それ、断われない流れになってるんじゃないかと、アツシとタクトは半ば呆れた。
「何言ってんだ、冗談じゃない!おれたちは帰るぞ!」
リーダー格のアツシが怒って立ち上がり、出て行こうとした。タクトも、その後に続いた。しかしマサは立ち上がらなかった。
「どうした、マサ?帰るぞ」
「いや、おれはここに残る」
「はあ?」