2 思い出(1)
「このバカ娘が!」
バチンッッッ!!!
「っう………」
帰ってきてすぐに父に呼ばれ、書斎に行くとすぐに頬を打たれてしまった。
「どうしてお前はこう鈍臭いんだ!!!バレずにやれといつも言っていただろうが!!!あぁもう!お前のせいで多額の慰謝料を払わなくてはならなくなってしまったではないか!どう責任をとるつもりだ!!!」
「……申し訳、ございません。」
「謝って済むことではない!!!…全く、他の娘達は皆上手くやっていたというのにお前は!!!」
「申し訳ございません。」
「…はぁ。 もういい下がれ。私が良いと言うまで部屋から出るな!!!」
「……はい。失礼いたしました。」
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父に言われた通り部屋に戻った。
やることも無くて、仕方なくベッドに寝転がっていると、幼い頃の思い出が頭の中を走る。
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ゲイル様と初めてお会いしたのは、わたくしが八歳、ゲイル様が十歳の頃だった。
わたくしは最初、知らない人といきなり婚約することに恐怖を感じていた…と思う。
あの頃はまだ感情が、表情が豊かで、いやだいやだと大泣きしていた。
父もまだ優しくて、困ったなぁ、なんて母と一緒に笑っていて……。
わたくしは両親が笑っている姿を見て、『どうしてお父さまとお母さまは笑ってるの!』と怒りをあらわにしていた。
でも母が『大丈夫よ、エメ。あなたの婚約者になる人はね?とってもいい子で、何よりかっこいいのよ!きっとエメも大好きになっちゃうわ。』
そんな母の言葉で、会うだけ会ってみようと思ったのだ。
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『はじめまして!僕はゲイル。ゲイル・エルヴィン。きみの婚約者に選ばれたんだ。これからよろしくね!』
初めてゲイル様にお会いした時、わたくしは身体中の血が沸騰したかのように熱くなるのが分かった。
金色のサラサラとした短髪に緑色のキラキラとした瞳。
彼は、わたくしが思い浮かべていた、王子様そのものだった。
会う前に感じていた恐怖心は、もうどこにもなかった。
その日から、わたくしの生活は彼を中心に回り始めた。
掲載は不定期になるのでなかなか更新されないかもしれません。
なるべく早めに掲載するつもりなのでよろしくお願いします。