出会いは突然に
夕暮れの校舎で私を呼び止めたのは学校で、いえ、地域で一番人気の音川君。
アイドル事務所からスカウトのあった姫丘さんからの猛アタックもひらりとかわすIKEMEN。
この偏差値高めな進学校で入学から3年間不動の1位。弓道、剣道、柔術を掛け持ちしてそれぞれの大会で優勝してしまったまさに文武両道質実剛健。彼を表す言葉ならいくらでもありそうなスーパー高校生。
「ごめんね呼び止めちゃって。三玖無さん、であってるよね?」
照れくさそうな彼の表情とイケボに心臓が痛い。80cm先の彼にまで聞こえているんじゃないかと思うほどに鼓動が高鳴る。彼に呼び止めてもらえる私はきっと特別な存在なのだと感じました。いや早とちりは寿命を縮める。冷静になるのよ結花。すべてが平均のわてし、いや私に音川君が興味を持つなんて
「どうしても君に触れたくて」
これもうゴールインでは? おっとCalm down.Be cool.
戦場では焦った者から死んでいくのだ。
「どどどど、どえしたのきにゃ」
いかん全部ミスってる。余裕ぶって返そうとしたのに動揺が全部伝わることに。
「緊張しないで僕に任せて。少し背中を向けてくれるかな?」
なん……だと? 背中を向ける? 告白からのききききキスとかじゃないの?後ろからハグしての甘い告白?
「そう、力を抜いて。下手に動くと危ないから」
なにが?あぶない?
ちょっと何言ってるかわからなかったけど背中にそっと触れる感触がいよいよもって私の心臓を破壊しにくる。
「三玖無さん、もう大丈夫だよ」
「な、なにが?」
「いや、背中に足が沢山ある見たこともない虫が」
「いっぎゃあああぁぁぁあい!!!!」
二人が結婚することになったのは、また別のお話