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4.モンスターさん、こころを育む

 もー! どうして食べないの!?

 いっぱい食べないと、大きくなれないでしょ!

 木についてる甘いのだけ食べるのはダメだよ!


 ほら、毛むくじゃら持ってきたから食べて!

 口にいれて、のみこんで!


 あ~! また吐いた!

 そんなにワガママばっかりだと、いますぐ食べちゃうからね!


 どうしたらごはん食べるんだろう。

 甘いのだけは食べてくれるけど、毛むくじゃらは食べてくれないし。

 やっぱり毛なしは、甘くておいしいのしか食べないのかな。

 でも、大きくなるどころかどんどん細くなっていってるから、このままだと大きくして食べるのできないし。


 どうしようかなぁ。このままだと、食べる前に死んじゃうよ。


 ………………うん? どうしたの毛なし。

 がんばって細い木をゴシゴシして、楽しいの?

 ごはん食べないのに遊ぶなんて、きみって変わってるね。


 ────おわぁ!?

 毛なしがゴシゴシしてた木から火が出た!

 すごいすごい!

 羽根つきでもないのに火を出せるなんて、毛なしはとってもすごいんだね!


 次は? 次はなにして遊ぶの?

 ……毛むくじゃら? 毛むくじゃらはいらないんじゃないの?


 毛をぜんぶとっちゃうんだ。たしかにざらざらして、あんまりおいしくないもんね。

 毛がなくなった毛むくじゃらを……火にいれちゃうの? なくなっちゃうよ?


 わたしはかしこいから知ってるんだよ。


 羽根つきがやってるみたいに、火をつけるとごはんはなくなっちゃうんだ。

 もったいないからやめようよ。


 だめ? こういう遊びなの?


 ………………もういいの? 火を消すの?

 あっ毛むくじゃら、なくなってない。ちょっといいにおいする。

 それを? 食べるの? へ~、毛なしはそうやってごはん食べるんだ。


 ……じゅるり。


 くれるの!? ありがとう、ごはんくれるなんて毛なしはやさしいね!

 いただきまーす!


 !? すっごくおいしい! 毛なしはごはんをおいしくする天才なんだね!

 じゃあ、これからわたしがごはんを取ってくるから、毛なしがごはんをおいしくしてね!


 そういえば、ずっと毛なしって呼んでるけど、ほかの毛なしと同じ呼びかただと変だよね。

 ほかの毛なしはすぐ食べちゃうけど、この毛なしは大きくしてから食べるってちがうんだから。


 ………………よし!


 それじゃあ、これからきみは毛なしの『ケーくん』だよ!

 これからいっぱい、ごはんをおいしくしてね!




---




 すごい! ケーくんすごい!

 わたしが知らなかったごはんをいっぱい出してくれる!


 木についてる丸くて甘いのが、もっと甘くておいしくなるなんて知らなかった!

 あっちこっちに生えてる草が食べられるなんて知らなかった!

 ほかにも、もっといっぱい知らなくておいしいごはんを出してくれる!


 ケーくん、だいすき!


 ねえねえ、次はどんなごはんなの?

 わたし、まだまだいっぱい食べられるよ!


 ……あれ?

 ダメだよ、ケーくん。

 ケーくんたち毛なしは弱いから、わたしからはなれるとすぐ食べられちゃうんだから。

 毛むくじゃらとか、羽根つきとか、毛なしより強いのがいっぱいいるんだからね。

 でも、わたしは強いから。わたしの寝床の近くにはだれもこないから。あんぜんだからね。

 

 だから、わたしからはなれたらダメだよ?




---




 ダメだって、言ったのに!


 わたしがお腹いっぱいでねておきたら、ケーくんどこにもいなかった!

 どうしよう、わたし探すのは強くないのに。

 とにかくあっちこっち、いそがないとケーくん死んじゃう!


 どこ? どこにいるの?

 ………………! あっちの方からケーくんの鳴き声がきこえた!

 いた!

 おいこら毛むくじゃら! なにケーくん食べようとしてるんだ!


 ケーくんはわたしのごはんをおいしくしてくれるんだから、食べちゃダメ!


 ケーくん! だいじょーぶ!?

 あうあうあう、お腹から赤いのがでてるよ。どうしよう、おさえても止まらないよ。


 わたしだったら、赤いのがいっぱいでても、お腹がなくなっても、すぐに元通りになるのに。

 毛なしのケーくんは弱いから、ちょっと赤いの出ただけでも死んじゃうんだ。わたしはかしこいから知ってるんだ。


 そんなのやだよ。ケーくんいなくなったらやだ。

 またおいしいごはんをつくってよ。いっしょに食べていっしょにねむろうよ。

 もう大きくなったら食べるなんて言わないから。

 ずっとわたしといっしょにいてよ。

 死んじゃったら、いやだよケーくん……。


 ……

 …………

 ………………

 ………………ザクッ

 

 ケーくん、これ飲んで。

 わたしの赤いやつ、飲めばきっとよくなるから。

 おいしくないよね。ごめんね。でも我慢して飲んで。


 ……よしよし、いい子だね。

 お腹いたいの、赤いのがながれるの、とまったからね。

 もうだいじょーぶ。


 おきた? よかった。これであんしんだね。


 ……? そんなにあわてて、どうしたの?

 わたしのことを心配してるの?

 だいじょーぶ。ケーくんと一緒にいた毛なしが持ってた、とがっててするどいやつで少し切っただけだから。


 わたしは強いから、これくらいなら赤いのはすぐ止まるから、だいじょーぶなんだよ。

 あぁでも、すこしねむくなってきちゃったかも。

 フラフラするし、ケーくんがぼんやりしてよく見えないや。


 そうだ。またどこか行かないように、ギューッてしておかないと。

 もうどこにも行っちゃダメ。

 わたしから離れたら、ダメだからね。

 ずーっと、わたしのそばでおいしいごはん作ってくれなくちゃ、嫌なんだからね。

 わたしは疲れたから、今から少しだけ眠るけど。

 このままギューッて、しててほしいな?


 ……うん。

 ありがとう、ケーくん。

 それじゃあ、おやすみ。


 起きたらまた一緒に、おいしいごはんをたくさん食べようね。


 ……

 …………

 ………………

 ……………………

 …………………………




---




 勇者、帰還せり。


 その吉報は、瞬く間に大陸全土を駆け巡った。

 4人の勇者たちが樹海に足を踏み入れてから、実に6年が経とうとしていた時だった。


 4人のうち3人は、惜しくも帰らぬ人となってしまったが。

 最後の1人が長く苦しい死闘の末、ついに【禁忌】を討伐することに成功した。


 長年、ヒト族を苦しめてきた3つの【厄災】たち。

 そのすべてに打ち勝ったヒト族は、名実ともに大陸の覇者としての栄華を欲しいままにしていく。


 あぁ、人類に栄光あれ。

 勇者に祝福と喝采を。

 神様に感謝と信仰を。


 ヒト族の行く末に、幸多からんことを。

 4話で完結予定だと言ったな?

 あれは嘘だ\ウワァァァァァァ!!/


 ということですいません。あと1話だけ続きます。

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