新生解決屋、初めての仕事!……其の4
色々と見えて来ました。
地下室に着いた2人、
「後は現代に……」
「いや、少し寄り道だな。さて、行くぞ」
「何処に?」
「行けば分かる」
「いきなりヤクザの事務所は嫌だぞ!」
「そんな事するか!」
「今しただろ!」
「……記憶にございません」
どうやら、現代に帰る前に寄る所が有るらしい。結局の所、剛は守人に着いて行く事になった。
地下室から2人が出て来る。
「ここ……霧島航が中学校の頃か?」
「ちょっと違うな、とりあえずは霧島工務店に行くぞ」
2人が歩いていると、電気屋の前を通った。テレビが何台か付いており、甲子園を中継している。日差しも暑く、どうやら夏真っ只中の様である。
[さぁ、甲子園決勝も大詰め!関帝高校この9回を守れば、春夏通じて初めての全国優勝!…ピッチャーは2年生エースの霧島!]
剛はテレビのアナウンサーの言葉に足を止める。
「おい守人、霧島って……」
「おお、航じゃないか!甲子園決勝か~……」
「2年生エースだってさ、凄ぇな!」
「2-0で9回……全国制覇しそうだな?」
「おう、やってくれるんじゃないか?」
「そうだな……さて、俺達は俺達の用事を済ますぞ」
「もう少し見ようぜ」
「ダメだ、忙しいんだ」
「何だよ、普段は不真面目なのに~……」
「大きなお世話だ!」
守人と剛は、霧島工務店に向かって歩き出した。
霧島工務店に着いた2人、本日は霧島工務店はお休みの様である。裏に周り、守人はドアをノックした。
「すいませ~ん」
「はいはい、今開けますよ……あれ?確か……戸張さん!」
「ど~も、ご無沙汰しています」
「いや~、その節は……」
「あなた~、早くこっちこっち、後1ストライク!」
「おう、戸張さんも秘書さんも早く!」
無理矢理中に通された守人と剛、甲子園決勝のテレビが付いている。
[さぁ、カウント2ストライク1ボール……ピッチャー霧島、大きく振りかぶって…………空振り三振!急速は154km!…最後が1番速かった!……今、霧島にキャッチャーの戸部が抱きつきます……]
「やったよ母さん!」
「やりましたね、お父さん!」
霧島航、見事なピッチングで甲子園優勝となった様だ。
「いや~、甲子園に応援行くって言ったら、俺の本番は来年だって……航に断られちゃいました……」
「おめでとうございます」
「やりましたね」
「はい……で、要件は?」
「工務店は、上手くやってるみたいですね」
「安心しました」
「はい……あの、ちょっと来てくれませんか?……母さん、ちょっと席を外すね」
「はい、ごゆっくり」
霧島航の母親は、満面の笑みである。
社長室に入る守人と剛、霧島勲が話をする。
「いや~、お2人のお陰で上手くいってますよ~!」
「と言いますと、あの後何か?」
「はい、あの後……古い付き合いだった男に連帯保証人を頼まれまして……」
「断ったでいいんですね?」
「はい、物凄く悩みましたが……」
「良かった。だからこそ、今の航君が居る」
「はい、そう思います」
「いやに静かだな?」
「いや何……この先も、家族の為にを考えて下さい」
「はい、約束します……あの、それで……これをお礼として……」
勲は金庫から3000万円を出した。
「あの忠告のお陰で、工務店も順調その物!これはそのお礼です」
「……現金は受け取りません」
「そう言わずに」
「でしたら……その腕時計を貰いましょうか?」
「これですか?……確かに高い物ですが、300万円くらいの物ですよ?」
「私はそれがいい。鑑定書も付きで、譲って貰えませんか?」
「これで良ければ……私はまた買えばいいですから……」
「ありがとうございます。それでは、遠慮なく……」
守人は腕時計を受け取ると、剛と出て行った。
「守人、それ……」
「おう、航が俺達に渡した時計だ」
「だよな……て事は……」
「おう、ポケットの時計はなくなった」
そんな話をしながら、守人と剛は歩いている。不意に守人は足を止めた。
「……おいおい、ここ……」
「おう、行くぞ」
「待て、いきなりヤクザの事務所には行かないって……」
「だから、クッション置いただろ?」
「結局行くのかよ~……」
「これも仕事だ」
守人は浜本組の本家に入って行く。その後を剛は不満そうに着いて行く。
玄関を抜ける2人、
「「何の用だ?」」
厳つい2人の男に強く言われた。
「組長に用事が有りまして……これ、組長に見せて下さい」
守人は懐から、大次郎から貰ったドスを出して男達に渡した。
「は?これが何なんだ?」
「馬鹿にしてるのか?」
「組長に見せて下さい。無視すると、あなた達が酷い目に合いますよ」
「「ちょっと待ってろ!」」
男達は奥に行った。すぐに帰って来る。
「こ、この度は大変失礼致しました!」
「ど、どうぞ中に!」
男達は態度を一変させた。守人と剛は中に通される。
襖を開けて通された先には、目付きの鋭い男が座っていた。守人と剛が中に入ると、案内した男達はすぐに離れた。
「まぁ、座りなせぇ」
「「失礼します」」
「それで……このドスを何処で?」
「大次郎という方から貰いまして」
「……先代からですか……」
「どうやら、大次郎さんは約束を守った様だ」
「守ったかどうかは分かりませんが……このドスを持った男達が現れたら……[身を切る思いはしたが、堅気に迷惑を掛けない組にはした]と伝えて欲しいと……」
「はい、それが約束です……では、最後にもう1つ……紀州組は諦めが悪い。何が有っても、関東への進出は阻止して下さい」
「それが組を守る為になるのなら……約束致しやす」
「はい、お願い致します。それでは、私達はこれで……このドスは、ここに置いていきます。それが、1番いい様に思います」
「あの……これからも、弱きを助けて強きを挫いて下さい」
「はい、間違いなく!」
守人と剛は頭を下げると、組を出て地下室に向かった。どうやら、やらないといけない事は終わった様である。
後は、現代に戻るのみ!