誰が為に鐘は鳴る!?……其の1
やっと連載再開……
仕事、変えようかな……
本日も剛は、守人に朝から絡んでいる。
「よし、オセロで勝負だ!」
「……リバーシな」
「まぁ、細かい事は気にするなよ。俺、得意じゃないし……」
「……得意な事で負けてるのに、苦手でやるのか?」
「もしかしたらが有るだろ?一流ギャンブラーとしてはだな……」
「誰が一流だ?」
「俺だよ俺!」
「……パチンコの勝敗は?」
「ギリギリ負けてる!」
「……本当にダメだな……」
このリバーシ対決だが、結局は守人の圧勝であった。
暫く、穏やかな時間が流れている。コーヒーを飲みながら、守人と剛はそれぞれパソコンを開いている。
[コンコン]
ノックされ、剛はドアを開ける。
「すいません、解決屋ですか?」
40代半ばの男性が立っている。お世話にも綺麗だとは言えない。
「はぁ、そうですけど……」
「解決して欲しい事が有るんだが……」
「……とりあえずは中へ……」
剛はテーブルに案内し、コーヒーを出した。
「すいません、実は……」
「あんたは幸せにはなれないぞ?本当の幸せは、手に入らない」
突然守人が喋り掛けた。
「……分かってますが……2人共に幸せになれないよりはいい……」
「本当にそれでいいのか?」
「いいも何も……今の俺じゃ、どうにも……」
「ちょ〜っと待った!話が見えん!」
剛が割って入って来た。
「剛〜、分かれよ」
「無理!」
「これだよ〜……安藤さん、話してやって」
「名前……」
「それはいいから、早く話してよ!俺はさ〜っぱり分からないんだからさ!」
「……良く分かりませんが………………
安藤海斗、普通の工場勤務の男である。現在は42歳。安藤が28歳の時、とある女性に一目惚れした。その女性はとても優しく、思いやりの有る人間だった。安藤は何度も何度もアタックし、遂には付き合い結婚した。
結婚生活は上手く行っていた。周りから見てもそう思えた。安藤自体もそう感じていた。
そんな安藤の思いが違っていたのに気付いたのは、ほんの数年前である。安藤が40歳になった時、ふいに奥さんのアルバムを見てしまった。そのアルバムには、1人の男性の写真がかなり貼ってあった。気になった安藤、遂には奥さんに問いただしてしまう。
「……昔好きだった人」
「それだけか?」
「…………………………」
「答えろよ」
「……脈は無いって思ってたけど、この前同窓会で……タイミング合わなかったな〜……だって……」
「そうか……」
そこから、安藤は奥さんとすれ違う事が多くなった。どうにも、しっくり来ないのである。そのうち、安藤は奥さんが幸せでは無いと思う様になった。そうなると、仕事も上手くいかなくなってくる。結果、安藤は平社員となり、今現在に至るのである。
………………こんな感じです」
「は〜……昔の男に遠慮してね〜……」
「昔の男じゃない!梓には、現在進行形なんだ!」
「……今の旦那はあなたでしょ?」
「だから!……だから解決して欲しいんです……生きてるのが辛くて……」
安藤は涙を流している。
「剛、自分の物差しで測るなよ」
「しかしさ〜、おかしくないか?」
「本人は、至って真面目なんだよ」
「それでもな〜……」
「所で、報酬は?」
「報酬は……これ、ロレックスの腕時計……ダメですか?」
「あんたが一生懸命に働いて買った時計だろ?」
「これを手放しても、梓には幸せになって欲しいんです」
「……まぁ、そんなに言うなら、それで手を打とう」
「本当ですか?」
「嘘付いて何の得が有るんだ?」
「それはそうですけど……」
「守人、どうすると解決なんだ?」
「それは〜……どうするといいんだ?」
「梓が幸せならば……」
「だそうだ。それじゃ、そういう事で」
「分かったけど……どうやって幸せかどうかを確かめるのさ?」
「そりゃ〜……どうすればいい?」
「梓が幸せだって言ってくれれば……」
「そうなんだって」
「……守人、意外とやる気無いだろ?」
「バレた?」
「その返し、全然やる気感じねぇもの!」
「だってさ〜、これだぜ?」
「分かるけどさ〜……」
「あの〜、解決してくれるんですよね?」
「おう、一応な」
「まぁ、ゆっくり待ってて下さい」
安藤は少し困惑した様な顔で、事務所から出て行った。
「さて、しょうがないからやるか?」
「……断れば良かったんじゃないか?」
「どうして?」
「絶対、自分だけで勘違いしてるだろ?」
「お〜!剛、正解!」
「おい、何でビックリしてんだよ?」
「だってさ〜、剛だぜ〜?」
「何だよその言い方?」
「まんまだな」
「おい!」
安藤の依頼は引き受けたみたいだが、2人共に乗り気ではない。どうも、安藤自身に問題が有る様である。
「解決するとして、まずは何処に行くんだ?」
「それだけどな〜……安藤がどうして、あんなに自信無いのか知りたくねぇか?」
「それは確かに……そこからにするか?」
「そうだな。あの卑屈さを改善しないと、何をやっても解決にならない気がする」
「そう考えると……かな〜り面倒だな?」
「だろ〜?厄介だよ〜……」
「何で引き受けたのさ?」
「自○したら、寝起き悪くなるだろ?」
「するの?」
「ああ、ほっといたらな」
「あちゃ〜……やるしかねぇな?」
「だろ?やる気出ねぇの分かるだろ?」
「おう、納得だ」
面倒な事は確かな様だが、今までに面倒じゃなかった依頼はない。今回も上手く解決……してくれる事を祈る。
ゆっくりとやっていきますね……




