新生解決屋、初めての仕事!……其の1
2人での解決屋、始動!
火曜日、剛は解決屋の事務所に色々と荷物を運んでいた。仕事は昨日付けで有給休暇となり、本日より解決屋の助手として出勤である。
「有給中は、仕事はまずいんじゃないか?」
「アルバイトなら無問題!そもそも、守人1人で大変だろ?」
「俺は今まで1人だったけど?」
「だから、こんなに寂れた事務所なんだよ~!」
「余計なお世話だ!……それより、お前からの報酬なんだが……」
「それは取っておけよ、一応解決はしたからな」
「……有る意味脅しだよな?」
「嫌だな~、俺の優しさだよ優しさ!分かるかな~?」
「分かりたくねぇわ!」
どうやら、初日からとても賑やかである。
事務所を開けて数時間、誰もお客が来ない。
「暇だ~……」
「いつもこんな感じだぞ?」
「そうなのか……よし、宣伝でも……」
「辞めとけ、誰でもいいという訳じゃない」
「そうだよな~……そうだ、人生ゲームやろうぜ?」
「は?何故に?」
「暇だから!」
「……暇なら資格でも取れよ、好きなだけ勉強出来るぞ?」
「勉強か~……この仕事をやってると、いつでも出来そうだな……よし、却下!」
「はぁ?」
「ほら、楽しい事するぞ!…人生ゲームだ!」
「……お前だけ楽しんでないか?」
「そんな事ねぇ!楽しいぞ!」
何故か、剛と守人は人生ゲームをやる事になった。
コーヒーを飲みながら、何度目かの人生ゲームをしている2人。
「くそ、また負けた!」
「剛~、弱しに変えたら~?」
「うるせぇ!今度こそ~……」
「まだやるのかよ……俺はパスを……」
「勝ち逃げは許さねぇ!次だ次!」
「……しつこい……」
このまま、昼を食べた後も人生ゲームをする2人である。
人生ゲームも終わり、片付けも大体終わった。人生ゲームは守人の12勝、剛の1勝である。
「際どい勝負だったな。五分五分だな」
「……この戦績でそれを言えるなら、お前に圧倒的な敗北は無いな……有る意味羨ましいよ……」
「褒めるな褒めるな」
「褒めてねぇ!」
そんな会話の後、剛は守人にもコーヒーを入れて2人で談笑していた。
「守人、もう10時だぞ?…いつもこんなにやってるのか?」
「いや、今日は特別。剛は大丈夫なのか?」
「おう、俺はここが職場だからな」
「そうか……まぁ、もう少しだけ開けとくよ……そろそろかな?」
[バタバタバタ、バタン!]
物凄い勢いで、1人の男が入って来た。
「うお!……」
「静かに!…剛、そっと奥に連れてって……」
「お、おう……」
「す、すまねぇ……」
「黙って……喋ったら、命が失くなるからね……剛もそのつもりで」
剛は黙って頷く。よく見ると、男の左腕が無い。紐の様な物で強く縛られており、出血は抑えられていた。それでも、腹や足には刺し傷や銃で撃たれた様な傷が有る。一目で裏社会の人間だと分かる。
剛がその男を奥に案内して数分後、
[ドンドンドン]
「おい、誰か居ねぇのか?」
「はいはい、何か用事ですか?」
守人は極めていつも通りに応対する。
「おい、ここに片腕が無い男は来なかったか?」
「隠すと痛い目見るぜ?」
「隠す?……何故に?……その人と俺、何か関係が有るんですか?」
「そういう訳じゃねぇけど……」
「必要なら、事務所を探します?最も、何も無かった時には、警察を呼びますけどね?」
「……いや、悪かったな……」
「もしもそんな男を見掛けたら、教えてくれ」
「見返りは?」
「それなりにはする」
「悪い様にはしねぇよ」
「はいはい、分かりました。それでは、事務所をもう閉めるので」
「おう、悪かったな」
男達は何処かへ行ってしまった。
鍵を閉めた守人、ゆっくりと奥の部屋に行く。
「やるな守人」
「別に……それで、男は?」
「……瀕死だな」
守人は男の前に腰を下ろした。
「わ、悪かったな……せめて、穏やかに死にたくってな……」
「別に構わないけど、ここは解決屋なんだよね。依頼を聞こうか?」
「おい、守人……」
「解決屋か……俺は、何処でボタンを掛け違ったんだろうな~……野球……大好きだったのに……」
「野球が心残りか……どうだ?解決してやろうか?」
「解決か……そ、それでお前が納得なら……」
「報酬は前金、金は受け付けないぞ」
「……これ、ロレックスだ……外して貰ってくれ……これで足りるか?」
「おう、充分!」
「守人、大丈夫なのか?」
「心配ない……さて、後はゆっくり休め。俺達は消える事にする。あのヤクザも、ここは分からないさ」
「すまん……恩に着る……」
男は静かに目を閉じた。端から見ると、そのまま……そんな気がする。
事務所から出た剛と守人、
「さて、仕事だな?」
「仕事?」
「おう、報酬貰ったしな」
「……半ば強引にだろ?」
「そうかもだけど、依頼には変わりはない」
「……やるでいいんだな?」
「オフコース」
「で、まずは何処へ?」
「……霧島航の過去、野球と離れた場所までだな」
「霧島って誰?」
「今の男だろ?」
「……名乗って無いぞ?」
「剛、もう少し勉強しろ」
「何でだよ?」
話をしながら、2人は例の地下室に向かっていた。
地下室に入ると剛の問題を解決した様に、守人は左手の手袋を外した。
「お?…今日も大フィーバーだな!」
「……パチスロから離れろよ……」
「馬鹿だな~、パチンコだよパ·チ·ン·コ!」
「お前に馬鹿って言われると……」
「何だ?快感か?」
「非常に頭に来る!お前の方が馬鹿だろ!」
「お前には敵わねぇよ!」
「リボンでも付けて、そのまま返すわ!」
タイムワープを前に、何故か揉めている。
「……兎に角、出発するからな」
「へいへい、俺は目眩を我慢するよ」
新生解決屋最初の仕事、どんな結末になるのやら。
いきなり過激な物件……