悲運のGK……其の1
今回の依頼は?
本日も剛は買い物から帰って来る。
「見ろよ、旨そうな鯛だろ?」
「……値段も凄いが?」
「大丈夫だよ、お前の金だからさ!」
「全然大丈夫じゃねぇ!」
本日も、守人と剛は揉めている。
揉め事も落ち着いて、剛はコーヒーを入れた。2人は自分のパソコンを開きながら、ゆっくりとコーヒーを飲んでいた。
[コンコン]
ドアをノックされ、剛はドアを開けた。そこには、40代の女性が立っていた。
「何かご用ですか?」
「はい……その、ここでは何ですので……」
「そうですね。まぁ、中に……」
剛は女性を中に入れ、コーヒーを用意した。女性は黙ってコーヒーを飲む。
「……高松康介を救いたいのか?」
「ど、どうしてそれを……」
守人の声に、女性は大きく反応した。
「高松康介を救うと、お前の目は見えなくなるぞ?」
「それでも……康介さんと一緒に過ごしていたかったんです……」
「……あいつ、頑固だぞ?」
「それは知ってます!」
「……守人、高松ってあの?」
「そう、あの高松さ……こちらが、高松があの姿の理由」
「……今で同じくらいに見えるが……失礼ですけど、高松さんとあなたの関係は?」
「妻です!」
「妻!?……失礼ですけど、歳の差はどれくらい?」
「……27歳ですけど?」
「何だと~!俺だったら、相手がまだ生まれてないぞ!」
「剛、落ち着け!」
「落ち着いてられるか!」
「……ドン引きだぞ」
「あっ!……ど~も、すいません……」
剛は頭を深々と下げた。
「所で、どうして高松康介を生かしたいんだ?あっちで幸せかもしれないだろ?」
「そうかもだけど……私は、康介さんと一緒に居たかったんです……」
「守人、意地悪じゃないか?」
「剛、事実は意外に酷なんだぜ?」
「……何か知ってるんですか?」
「そうだな~……もしも、あの事故に合わなくても、高松康介が助からなかったとしたら、あんたはどうする?」
「守人、目上の人にあんたは無いだろ?」
「それは別にいいだろ?」
「……そうだったとしても……私は、康介さんと少しでも長く居たかったんです……」
「……つまらん事で悩んでるんだろ?昔の高松の知り合いから高松の話を言われて、妻で有る自分の方が高松を知らない……何てな?」
「……事実、私は康介さんの事を3年間しか知らない……それも、子供の頃に過ごした3年間しか……」
「しかしだな~……」
「ちょ~っと待った!」
「何だよ?」
「子供の頃だと~?……あいつ、犯罪者なのか?」
「おいおい、飛躍し過ぎだよ……」
「いいや、俺は納得出来ん!ど~してあの適当男に……大体、それだけ歳の差が有れば、それだけで重罪人だ!」
「……自分勝手な意見だな~……」
「康介さんは、犯罪者じゃ有りません!侮辱は許しませんよ!!」
「うわぁ……こっちも熱くなってる……」
「あんた、騙されてるよ!」
「剛、あんたって……」
「騙されてる訳無いでしょ!頭、おかしいんじゃないの!」
「有る意味合ってる……」
「他人が教えてやってるのに!」
「恩着せがましい奴……」
「頼んでないわよ、大きなお世話!」
「納得の解答……」
「「うるさい、黙れ!」」
「俺に当たるなよ~……」
珍しく、守人が外れくじを引いている。
「まぁ、何だ……高松が犯罪者かどうかは別にしてだな」
「犯罪者じゃない!」
「犯罪者だ!」
「いいから黙れ!話が進まんだろ!!……兎に角だ。何が有ろうと高松を救って欲しいんだな?」
「勿論!」
「辞めとけ守人、黙される奴が増える」
「剛、お前は喋るな!……どうだろう。助けるかどうかは別にして、高松の生き方を見て、それで結論を出しては?」
「まさか守人、この人を過去に?」
「それが1番だろ?どうせ、このままじゃ埒が明かない。お前と朝まで言い争いをしそうだ」
「??……良く分からないんだけど、康介さんの過去を教えてくれるの?」
「う~ん……過去を教えるというか、過去を見に行くというか……」
「まんまじゃん!」
「過去を見に行く~?……あ、これ詐欺だわ……詐欺士に犯罪者とか言われたの?超むかつくんですけど?」
「詐欺かどうかは、これからの事を見てでもよくないか?」
「まぁな、守人はこんなだから信頼出来ないかもだけどさ」
「阿呆剥き出しのお前が言うな!大体だな、依頼者に喧嘩売ってただろ?」
「あれは親切心だ!」
「何処が……」
「余計なお世話だろ?自分がモテないからって、勝手に僻むな!」
「その通り!」
「俺の優しさだよ!分からない何て、人間として終わってるな!」
「何を根拠に……」
「終わってるのはお前だ!馬鹿の日本代表!」
「上手いわね……」
「お前のが馬鹿だろ!大体、あの高松だぞ?」
「確かにあの高松だ!」
「……ちょっと待って、どのくらい康介さんを知ってるの?」
「え?……まぁ、かなり我が儘な事とか……」
「そうだな~……我が儘大王、池本純也を上手くコントロール出来る、数少ない人だとは理解している」
「池本さんて、ボクシングの?」
「以外に居る?」
「……私があなた達より若い時に……」
「だからさ~、それこそ見て来ないと説明出来ないだろ?」
「守人、お客さん」
「おお、すまんすまん」
「……本当に見て来たの?」
「オフコース!……まぁ、結果を見てから考え様か?」
「……そうする……」
「しかし守人、池本さん捕まえて我が儘大王は……」
「いや、それは真実だろ?」
「お前、べた褒めだったじゃん?」
「今でも認めてるよ。しかし……悪乗りさせると手が着けられん……」
「それは……確かにな……」
どうやら、どう解決させるかは決まったらしい。
「守人、報酬は?」
「大丈夫さ。高松から貰う」
「高松?……貰えんのか?」
「死神に頼むさ」
意外に面倒な依頼となりそうである。
……またまた厄介な……




