死神の困り事?……其の4
遂に戦いが……
遂に始まった1回戦、とりあえずは注目の試合をお伝えする。
何と言っても、高松康介とブライアン·イーグルを最初にお伝えしたい。変な縁が有って、ハンドボール選手だった高松とボクシングの世界チャンピオンだったブライアンは戦った事がある。少なからず、2人の間には因縁めいた物がある。
この試合だが、ブライアンのパンチのコンビネーションは一級品であった。高松も何発もパンチを貰う事になる。しかし、貰いながらタイミングを覚えた高松、最後は投げて場外となった。
「いや~、やられたな!」
「場外が無ければ、逆だったかもね」
ブライアンと高松、握手で試合を締めた。
池本純也と川上哲也の試合も盛り上がる。
元々は純也のジムの会長である川上、実質師弟対決である。川上のパンチの鋭さに、純也は何度も被弾する。勿論、純也もやり返している。2人は気持ち良く殴り合っていたのだが、
「おい池、少しは手加減しろ!」
「川上会長から、その様な教えは受けてないですよ?」
「言ったな、この恩知らず!」
「言いましたよ、ボクシング馬鹿!」
離れて数回の会話を交わした後、2人は一気に間合いを詰めて殴り合う。最後は純也の左アッパーが見事に決まってKOである。
「いや~、勝ちを譲っちまった」
「そうしときます」
「お?大人になったな?」
「会長は、悪ガキみたいですよ?」
この2人、笑顔で肩を組んで会場から降りて行った。
黒鉄武と坂本竜馬の試合も面白い物になった。
元々、昔の武士は刀が無くなったとしても戦える様に、素手での戦いには長けていた。つまり、坂本竜馬は素手でも強いのである。その相手は、日本キック界を引っ張って来た武である。つまらない試合とはならない。
武のキック仕込みの攻撃が竜馬を追い詰めるのだが、竜馬は見様見真似でこれを吸収していく。いつの間にか、キック選手同士の試合の様になっていた。
「おんし、守人に劣らぬ強さとね!」
「あんたは、驚くくらいの強さだよ!」
お互いが接近し、打撃を交錯させていく最中、竜馬は一瞬の隙を突いて武を場外に投げ飛ばした。
「やられたよ」
「いや、儂のが長く生きてただけやき」
こちらも笑顔で試合が終わった。
意外な結果となったのは、守人と聡明の試合である。
守人は何故かは知らないが、武術を極めている。それこそ、ジークンドーや日本古武道等あらゆる物を身に付けている。
対する聡明、こちらは日本古武道を極めながら柔道へと流れたいわゆる変わり者である。この2人の激突、面白くない筈が無い。
守人は攻撃を仕掛けるのだが、聡明は上手くこれをいなす。[柳に腕押し]この言葉が最も合うのではないだろうか。
攻める守人と守る聡明の構図かと思われたが、次の瞬間には攻守が入れ替わる。この辺、古武道を極めた2人らしい、守りも攻めも表裏一体という事を体現している。
「いや~、お若いのに大した物だ」
「……こっちはこれが精一杯だ」
間合いを取って一言話をした2人、一気に距離を詰める。2人が触れ合ったと思った瞬間、場外に飛ばされたのは守人であった。
「いや~、やられたやられた!」
「はっはっは、私の方が少~し経験豊富でしたな?」
仲良く話をしながら、2人は試合場から離れた。
そして、何といっても1番の注目の試合。剛vs燃える闘魂である。こちらは、試合場に上がった時から他とは違っていた。
「元気ですかー!」
『ワァ~!』
「元気があれば、何でも出来る!いくぞー!……イチ、ニー、サン、ダーッ!」
『ダー!』
剛が上がる前に、会場は大盛り上がりである。その後に試合場に上がる剛、既に顔が引き釣っていた。
試合開始となるが、剛は距離を取って様子を見ている。これには、観客もブーイングであったのだが、
「まあまあお若いの、そう怖がる事もない。楽しませようじゃないか」
燃える闘魂、声を掛けると剛に組み付く。組み付けば剛にも抵抗する力が有る。剛は合気道を使い、燃える闘魂を投げた。
「合気か?面白いね~!」
立ち上がる燃える闘魂、すぐに剛に組み付いて行く。その都度、剛は燃える闘魂を投げるのだが、燃える闘魂は全く意に返さない。何度目かの組み合いの後、遂に剛が投げ飛ばされた。
「相手に9の力を出させ、10の力で捩じ伏せる!」
燃える闘魂、最後は剛を投げっぱなしジャーマンで場外に落とした。
「ナイスファイト!」
「ありがとうございました」
本日、1回戦で1番の盛り上がりを見せた。
試合は進み、ベスト8が決まった。守人と剛が知っている者としては、純也と土方歳三、坂本竜馬が居る。残りはK-1で鉄人と言われたヨーロッパの空手家、プロレスラーからUFCでチャンピオンになった男、合気道を世に知らしめた天才、蝶の様に舞い蜂の様に刺すボクサー、そして燃える闘魂である。
「いや~、なかなか楽しい組み合わせだな?」
「本当に!誰が勝つかな~?」
「何を呑気な、私の身が持ちませんよ!」
「大丈夫だろ?別に死にはしねぇだろうし」
「それより守人、どうして時間を止めなかったんです?」
「確かに!……どうしてだ?」
「止めても間に合わなかったさ……相手は達人だぞ?」
「やらなければ分からないでしょ?」
「だとしてもだ。この大会で、そんな卑怯な事は出来ないさ」
「そうだな……みんな、それぞれに一生懸命だしな」
「な~に格好付けてるんです?私は洒落になりませんよ!」
「別に、洒落のつもりはねぇよ」
「死神さん、たまには苦労して下さいね」
「苦労なら、毎回してますよ~!」
死神、大分納得がいっていない様である。
さて、この大会、どんな終わりを見せるのだろうか。
熱くなって来ました!




