死神の困り事?……其の1
扱い易いキャラクターの死神、無茶な事もこやつなら……本当に助かるキャラです……
本日、剛は朝から守人に絡んでいる。
「守人~、囲碁で勝負しようぜ~?」
「……お前、出来んの?」
「五目並べなら!」
「……話にならん……」
いつも通りの風景である。
[コンコン]
ノックされ、剛がドアを開ける。
「助けて下さいよ~!」
いきなり声を掛けられる。
「死神さん、どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも……守人、何とかして下さい!」
死神は物凄い勢いで事務所に入って行く。そのまま守人の前に行き、
「頼みます、どうにかして下さいよ」
「……そんなに慌てて……どうした?」
「分かってるんでしょ?」
守人が悪い笑みを溢す。
「分からんな~。何が有ったんだ?」
「守人でしょ?私の事を話したの?」
「はて?何の事やら?」
「……あの~、俺は話が見えないんですが?……」
「大丈夫、俺も見えないから!」
「絶対嘘ですよね?そもそも、元凶でしょ?」
「失礼な!な~に言ってるか分かりませ~ん!」
「俺も、日本語分かりませ~ん!」
「剛君まで悪乗りしない!……はぁ……」
死神が大きな溜め息を吐いた。
「まあまあ、コーヒーでも入れますから。落ち着いて、話をしましょう。少なくとも、俺は本当に分からないんで……」
剛はコーヒーを作りに行ってしまった。
「ありがとうございます、剛君」
死神は椅子に座る。
剛の持って来たコーヒーを飲み、死神は大きく深呼吸をした。ふぅ~と大きく息を吐き、少し落ち着いた様である。
「まぁ、話せ」
守人はニヤニヤしている。
「知ってる癖に……池本に、私の事を話したでしょう?」
「池本さん?……守人、どういう事?」
「まあまあそれはさて置き、それでどうしたんだ?」
「あの男がですね~、天国は暇だと言い張ってですね~……」
「……確かにあの人なら、それは有るかも……」
「面白そうだな?それで?」
「守人、顔が笑ってますよ……強い奴と戦いに行くなんて、何処かで聞いたセリフを吐いて……黒鉄武と一緒に練習がてらに戦ったり、この前なんかカール·ゴッチに馬乗りでパンチ当ててたり……親を天国に上げるから、大人しくするって言ったのに……」
「……どう答えたんです?」
「最近一緒に居る高松って男が、数年も大人しくしてただろって……本人も、期間は約束してないと言い出して……」
「……有り得て怖いな……守人、高松って人もぶっ飛んでねぇか?」
「飛んでるね~!しかも、その人古武術か何かやってるよね?」
「そうなんですよ~!本当に厄介で……」
「その様子だと、まだまだ何か有りそうだな?」
「……今度、天国で格闘大会を開くと言い出して……」
「面白そうじゃねぇの!」
「……凄い戦いが見れそうだね?」
「そんな悠長な……優勝賞品知ってます?」
「「何?」」
「……私と戦う権利だそうで……守人、絶対にあの人に話したでしょ?」
「記憶にねぇな~!」
「……何で私と戦う権利なんですかね……私は仕事で疲れてるのに……」
「でも、死神さんなら楽勝でしょ?」
「……そうでもないんですよ……」
「どうして?」
「剛、死神も痛みは有るんだよ。こいつ、案外律儀だろ?だからさ、人間の痛みも知る為に、痛感は持ってんだよ」
「そうなの?」
「……1度、池本を連れて行く時に、1発殴らせろと言われましてね……これが、痛いの何のって……2度と喰らいたくないと思いましたけど……このままじゃ……」
「池本さんが勝つとは限らんだろ?」
「じゃなかったら、もっとヤバいですって!……どうにか止めて下さい」
「止める?……こんな面白い事を?」
「守人、それ同感!」
「同感しないで下さい!」
「……でも、そんなに強そうな奴居るの?」
「居ますよ!少なくとも、高松は強いですよ。何故に生前はハンドボールなんてやってたんだか……」
「……本人に言ったら、殺されるぞ」
「その他にも、黒鉄武を筆頭としたキックの方々や総合格闘技の方々、坂本龍馬や土方歳三といった過去の武人達も居ます。考えただけで……」
「守人、そうとう楽しそうだな?」
「おう、これは是非に見たい!」
「何処が楽しそうなんですか?景品私ですよ?」
「いや~、オラ、ワクワクすっぞ!……てな感じだな?」
「剛、なかなか分かって来たね~!」
「分かってな~い!本当に困ってるんですよ?」
「……しかし、折角だし……」
「よし、見学に行こう!」
「行けるの?」
「勿論!な、死神?」
「……私に連れて行けと?」
「オフコース!」
「……解決、してくれるんですか?」
「おう、俺的にな!」
「……剛君、大丈夫なんですか?」
「大丈夫っていうより、守人以外に無理でしょ?」
「そりゃあ、その通りなんですがね……この男、悪い事を思い付くでしょ?」
「あ~、企みますからね~……」
「失敬な!このジェントルマンに対して!」
「だ~れがジェントルマンだよ?それは、この俺の様な……」
「剛君も、ジェントルマンとは掛け離れてますよ」
「とりあえずだ、俺達を連れてけ」
「……それはそれで……」
「行かない事には、解決出来ませんよ?」
「……最近、剛君も脅迫染みてませんか?」
「無い無い!」
「……分かりましたよ。連れて行くので、ちゃんと解決して下さいね」
「任せなさ~い!」
「俺は、楽しむだけね」
「……心配だ……」
どうやら、今回は天国に行くらしい。いったいどんな話になるのやら。
思いもよらない事に……でも、ちょっと面白そう!




