解決法は前代未聞!……其の4
いよいよ、剛の問題解決!……かな?
翌日の9時50分、剛は昨日の電話での約束通りに渡邉社長の会社に到着となった。本日は土曜日だが受け付けがおり、剛は受け付けに渡邉社長との面会の約束の事を伝えた。5分程待つと、剛は会議室に案内された。
「失礼します」
「待ってたよ、早速本題に入ろう」
「はい……こちらのスマホの動画を見て貰ってもよろしいでしょうか?」
剛は守人と一緒にタイムワープをした時に撮影した動画を渡邉社長に見せた。その動画には、専務の息子とその友達であろう男性が1人の女性に絡んでいるのが映っていた。そこに剛が現れ、その2人の男性を投げ飛ばす所も映っている。
「これは……何とも酷い……」
「確かに、投げたのは私のミスではありますが……それでも、間違った行動はしてないと思っております」
「……いや、これを見て中澤君が悪いと思う者は、100人居て1人居るかどうかじゃないかな」
渡邉社長は何処かへ内線を入れた。すぐに専務がやって来る。
「どうしました、社長?…何故に中澤君が居る?」
「中澤君は関係無い。この動画、どう説明するんだね?」
渡邉社長は剛のスマホの動画を専務に見せた。
「……こんな物……どうせ偽者……」
「お言葉ですが専務、これには私が映っております。という事は、これを撮影した者が居るという事」
「……しかし、それならばあの女性はどうなる?」
このタイミングで会議室のドアが開いた。3人の目がそちらに集まる。そこには、剛に絡まれたと証言した女性が居た。
「すいません、私はお金で嘘の証言をしました。これ、返します!」
女性は頭を深く下げ、厚みの有る封筒を差し出した。
「どういう事かね、専務?」
「こ、これは、何かの間違いで……お前等、俺を嵌めようとしてるな?」
「……見苦しいですよ。ここまで来ると、残念ながらみんな敵ですね」
「何を言っているんだ、私が今までどれだけ会社の為に……」
専務の弁明が始まってすぐ、受け付けの女性が封筒を持って会議室に入って来た。
「すいません、10時22分にこれをお渡しして、7チャンネルを着ける様にと言われておりまして……」
受け付けの女性は、テレビを着けて専務に封筒を渡した。
「何だねこれは、私は今忙しいというのに……」
「私もよく分かりませんが、すぐに封筒を開けて下さいとの事です」
それだけ伝えると、受け付けの女性は頭を下げて会議室を出て行った。
「全く……」
ぼやきながら専務は封筒を開ける。
[只今入りましたニュースによりますと、紀州組が違法な取引きをしていたとの事で、警察は紀州組の山岸4代目組長を逮捕したとの事です。今回の件は……]
「何?……紀州組が……」
専務はテレビを呆然と見ていた。
「どうしました?紀州組と関係でも有るんですか?」
「い、いや、そんな訳無いだろう」
慌てて封筒の中身を開ける専務。
やあやあ専務さん、後ろ楯がなくなったね!
早く逃げた方がいいよ~、軽井沢の別荘とか北海道の別荘とか。
最も、その場所も警察にはリークしちゃったけどね~!
逃げ場が有るかな~?ま、俺には関係無いけどね!
では、暫くの刑務所暮らし、ご苦労様です!
出て来たら、今度は損害賠償だね。人生詰んだね。
「な、なんだこれは……」
ナイスなタイミングで剛のスマホが鳴る。
「はい、中澤……」
「は~い、俺ですよ。専務さんに代わってくれる?」
「おま、どうして?」
「いいから代われ」
剛は専務にスマホを渡した。怪訝そうな表情で、専務はその電話に出た。
「もしもし……」
「いや~、専務も大変ですな~!見事な転落人生、一言言葉を掛けたくなりまして!」
「…貴様がやったのか?」
「誰がやったかは問題じゃな~い、己が悪いんだろ?……他人を苦しませた分、自分が苦しみを味わえ!この腐れ外道!」
守人の声は漏れており、剛も女性も吹き出しそうになっていた。剛は専務からスマホを奪う様に取った。
「さて……専務は懲戒解雇だな」
「そ、そんな…ちょっと待って……」
「悠長な事は言ってられないぞ、警察が来るんじゃないか?」
「う、く、くそ……覚えてろよ」
専務はそれだけ言うと、急いでその場から逃げて行った。
一部始終を電話で聞いていた守人、
「あっはっはっは、一件落着だな」
そんな言葉を吐くと、電話は切れてしまった。
「すまなかったね、中澤君」
「いや、誤解が解ければ大丈夫です」
「本当にすいませんでした……あの、これ……」
「それは、迷惑料として取って置いてくれたまえ。あなたにも、悪い事をした」
渡邉社長は、女性と剛に深々と頭を下げた。
「「いやいや、そんな」」
とりあえず、一件落着の様である。
女性は何度も剛に頭を下げ、帰って行った。きっと、女性の中にも蟠りが有ったのだろう。兎に角、剛の無実は証明された。
「さて、中澤君」
「はい」
「改めて、御社との契約についてなんだが……」
「それは、週明けに担当者と話して下さい」
「担当者?君ではないのかね?」
「私は……残念ですが、今の会社は辞めるつもりです」
「何故だね?契約なら……」
「契約なら、確かに出来ました。それが問題なら、解決となります。しかし、我社は私の話を聞いてくれなかった。果たして、そんな会社に未来は有るのでしょうか?願わくば、渡邉社長にはそんな上司になって欲しくはないと思っております。では、私はこれで……」
剛は頭を下げ、会社から出て行った。
剛がアパートに着く頃、剛の会社から連絡が来ていた。
「はい、中澤です」
「中澤君、すまんね今回の事は。我々の調査不足だったよ」
「そうですか。それで、俺は退職で問題無いですよね?」
「何を言っているんだ、我々の間違いだったと謝って……」
「謝罪は聞いてないですよ。上から頭を下げられても、下からだと下げた頭は見えません。どうやら、入社する会社を間違えたみたいです。それでは、改めて月曜日に……」
「あ、待ってくれ、中澤……」
剛は電話を切ってしまった。
「本当にそれでいいのか?」
後ろから声を掛けられ、剛は驚いた様にそちらを向く。そこには、守人が立っていた。
「守人……」
「後悔は無いのか?」
「全然!…それより、お前にした依頼だけどな」
「おう、そうだな」
「結局、会社は辞める事になった……解決失敗だな?」
「おい、お前が勝手にやった事だろ?」
「しかしな~、看板に偽り有り!だな?」
「お前~……性格悪いぞ」
「そこでだ!…俺がお前の助手になる!」
「は?え?……何を言って……」
「いいか、俺が助手になったらだな~……今回の件は助手になった事で解決となる。仕事に就くからな!それに……俺を助手にしないと、絶対に解決と認めな~い!」
「随分勝手だな……それで、どうしても雇わなかったら?」
「ネットで噂を広める!どうだ?逃げられないぞ?」
「過去に行って、お前を消すか?」
「おい、それは反則だろ?」
「反則?…俺はそれで仕事してるんだ」
「そう言うなよ~……それに、俺はお前を忘れない。だから、お前は死人じゃない!そうだろ?」
「……意外に考えてるな~……しょうがない、雇うとするか」
「そうこなくちゃな!俺の有能さを見せてやる!」
「おうおう、社会の窓から出てるパンツくらいにか?」
「え?……うわぁ、もっと早くそれは言えよ~!」
賑やかなやり取りではあるのだが、剛と守人は仕事のパートナーとなった様である。
これから、新生[解決屋]がどんな活躍をしていくのか、少し楽しみではある。
剛、意外に強引な奴でした。