崇めていた物は邪悪!?……其の5
後は……
我蛇丸を退治した守人と剛、その翌日に武彦と会った。勿論、黄金の観音像を貰う為である。場所は喫茶ルノアール、そこの7番テーブルである。武彦は既に座っている。
「やぁ、待たせたね?」
「いいえ……それで、大丈夫なんですか?」
「左目は痛むのかい?」
「全く……終わったって事で、いいんでしょうか?」
「おう、終わったよ」
「それは俺が保証します!」
「剛に保証されてもな~……」
「文句有るのか?」
「い~っぱい有る!」
「……あの~、本当に終わりで……」
「オフコース!」
「大丈夫、確かに終わりました」
「……ありがとうございます。何とお礼を……」
武彦が深々と頭を下げた。
「そんなに頭を下げないで下さい」
「そうですよ。黄金の観音像を貰えばそれで、無問題!」
「これだよ……」
「……それではこれを……」
武彦はバッグから黄金の観音像を出した。30cm程の大きさの観音像、意外に大きい。
「は~……純金か?」
守人は観音像を持つ。
「……多分、そうだろう……結構な金額になるな」
「罰当たるぞ。少しは崇めたらどうだ?」
「崇める?……誰も助けねぇのに?……必要か?」
「……確かに守人様の言われた通りです。いくら拝んでも、見返り等は無い……」
「武彦さん、守人に様は要らないですからね!付けるなら、馬鹿!」
「おい!」
「いやいや、実際助けて頂いたのはお2人だし……」
「いや、剛はな~んにもしてない!立ったまま気絶してただけ!」
「役に立っただろ?」
「何したよ?」
「買い物だよ。か·い·も·の!」
「……やっぱりムカつく!」
「まあまあ、揉めないで下さい。それより、本当にありがとうございました」
「いや……それより、その左目だけど……」
「大丈夫です。いい戒めになります……現実を有りのままに……そこには、期待何ていう、主観は一切入れない事の重要性……その授業料だと思えば、何ら高い物ではない」
「そう、ならいいか」
「おい……とりあえず、俺達はこれで……」
剛が立ち上がると、守人は左手の手袋を外した。その左手を武彦の方に手を開いて出した。甲には、金色の六芒星が輝いている。
「武彦さん、解決したのは観音様さ……あんたの信心が奇跡を呼んだんだ……」
六芒星の輝きが更に増した。
「何を言って?」
「いや、戯れ言さ……では、俺達はこれで」
守人は軽く頭を下げると、そのままルノアールを出て行った。剛も軽く頭を下げ、守人の後を追った。
公園でベンチに座り、ジュースを飲む2人。剛の手には、先程の観音像が入ったバッグが有る。
「守人、どうして観音様何て?」
「今まで信じて、それこそ何万回もお経を上げてんだ。助けて貰っても、罰は当たらんだろ?」
「いや、そうじゃなくて……」
「簡単な事さ。俺達の代わりに、助けたとされる人物が必要だ。居るか居ないか分からんが、居ても居なくても影響の無い人物となると……その辺が妥当だろ?」
「俺達の代わり?……例の記憶操作のあれか?」
「おう、その通りだ。化け物を倒すのは、人間じゃ困るだろ?また助けて貰えると思っちまう。だから、観音様が今回は助けたのさ。信心深い、武彦の願いを聞き入れてな」
「……確かにそれが、1番良さそうだな」
ジュースを飲み終えると、2人は事務所に戻った。
事務所に戻った2人、守人はすぐに黄金の観音像を売る手配をした。実際に、1000万円での取り引きが決まった。後日の話だが、金持ちのコレクターに1週間後に売る事となる。報酬もこれでばっちりである。
剛はというと、すぐにパソコンを立ち上げ、我蛇丸の事を検索していた。
戦慄の我蛇丸!?
我蛇丸といえば、平安時代の中頃まで、とある村で大暴れした大蛇である。その力と大きさから、村の者は色々と諦めていた。
そんな折、この村に成澤和尚が訪れる。長い修行の旅の帰り、この村で一休みといった所だったのだろう。
この成澤和尚の立ち寄りが、今後のこの村の運命を大きく変える事になる。成澤和尚はこの大蛇と対峙し、見事に封印する事に成功した。この村に誰もが諦めた平和が返って来たのである。
しかし、この大蛇の力は強く、成澤和尚はこの村に留まり大蛇の封印を守る事となった。
現在でも、何処かの村で成澤和尚の末裔がこの封印を守っているという。信じるか信じないか、それはあなた次第……
「嘘臭ぇ記事しかねぇな」
「事実とは違うしな」
「しかし……武彦さんの先祖、我蛇丸を退治しようとしてたのな?」
「そりゃあな。そこで手合わせしたから、我蛇丸は武彦の一族を利用したんだ。それだけ、武彦の一族は優秀だったのさ」
「成る程ね……しかし、優秀だからこそ、こんな事に巻き込まれた……」
「困った人を見捨てない。確かに立派だが……上手く行く事ばかりじゃないって事さ」
「……気を付けないとな……」
「お前は大丈夫だよ!無能だからな!」
「おい、俺は有能だ!」
「どの辺がだ?」
「そうだな~……買い物だろ~、パチンコ·パチスロだろ~……これだけでも有能決定!」
「……パチンコの戦績は?」
「少~し負けが多い」
「……馬鹿過ぎて、言葉が無い……」
この後、2人はいつもの様に揉めていた。命懸けの仕事の後だとは到底思えない。最も、そこがこの2人らしい所では有る。
この後、武彦は息子に観音様が助けた事を話した。守人と会った翌日、武彦の記憶は見事に操作されていた。これを機に、武彦は一層信心深くなっていった。
何とか解決!