崇めていた物は邪悪!?……其の3
強力な2人?
九尾の狐と蛇神に会って3日後、我蛇丸と姦姦虵螺との対決の予定となった。九尾の狐と蛇神より、2人でとある山の麓で2匹を待ち構えるとの話が有った。守人と剛、その場所に向かう事となった。
電車を乗り継ぎ、目的の山の有る駅まで来た。既に夕方とあり、狐が駅の入り口に座っていた。人の余り居ない、小さな村といった所である。
[やっと来たな]
「お出迎え、ご苦労ご苦労」
「本当に偉そうだな?」
「だから偉いんだって!」
[今夜だな……確認したい事が有る。守人、どうして過去に行かない?]
「過去なら、確かにもう少し簡単に倒せそうだな?」
「……我蛇丸は、その存在が海外の魔物から恐れられた。姦姦虵螺も同じさ。悪い事だけじゃないんだ。最も、本人達の思惑とは関係ないがね」
[……なら、もう少し過去に行って……少なくとも、武彦の左目や息子の事くらいは……]
「教訓が必要だろ?甘い期待は命取りになる。2匹を倒せば息子は大丈夫だろうが、武彦本人にはこの教訓を活かして貰わんとな」
「成る程……しかし、その2匹を見るのは怖そうだな?」
「しまった!?」
「どうした?」
「現物料が取れる……世紀の一戦として、1人20万円で……」
「がめついな~……」
[剛、この余裕が有るうちは大丈夫さ]
「そゆこと!」
「……心配だ……」
3人?は例の山の麓に向かった。
山の麓に着いた3人、そこには白い蛇が1匹居た。大きさもさほど大きくなく、普通の蛇の様な感じである。
[待っていたぞ]
「もう少し時間が有りそうだね?」
[ああ、まだ少し掛かりそうだ]
[時間が有る。聞きたい事が有るんだが……]
「どうして巫女を救わないか?……かな?」
「おう、俺もそれは知りてぇぞ!」
「……剛、何故に乗り気なんだ?……巫女が善意から村を救おうとして、それで村人から裏切られたのなら、俺もそうしたさ」
[違うのか?]
[善意じゃないと?]
「どういう事だ?」
「簡単だ。人間は、確かに醜い者も居る。裏切る者も確かに居るが、必ずしも全員ではない。では、何故に全員で巫女を裏切ったのか?……巫女は大蛇を退治する事を条件に、村で好き勝手やってたんだ。若い男を自分の好きにし、それこそ、気に入らなければ村から追い出す……追い出された者は、必然的に大蛇の餌さ。救い様が有ると思うか?」
「……最悪だな……」
「そう、だから救わない。全てを無に返すんだ。己の全てを否定してな」
[成る程、だからここでか]
[しょうがない、我々も頑張るとしよう]
「俺からも質問……我蛇丸は何故に祀られたんだ?」
「簡単な事だ。霊的な力が手っ取り早く上がる為さ。それこそ、神の力に匹敵するくらいにな……しかし、今回ばかりはやり過ぎだな。だろ?蛇神?」
[確かにやり過ぎだな。祀られていて、そのままなら目を瞑っていたが……]
「ちょっと待ってくれ!人が犠牲になってんだぞ?」
[だとしても、居る価値のが強かった]
[剛、物事は綺麗事だけじゃない。土蜘蛛を知ってるか?]
「土蜘蛛?」
[京都の奥底に住む、巨大な蜘蛛だ。それこそ、化物その物だ]
「……それがどうしたんだよ?」
[土蜘蛛が居るから、京都の安全は守られている。その代償に、とある村人には呪いが掛かっている]
[そう、死なない呪いがな]
「死なない呪い?」
[そうだ。事故に合っても、誰かに殺され掛けたとしても、決して死ぬ事は無い。死ぬ為には、土蜘蛛に食われる事だけさ]
「土蜘蛛に食われる?」
[そう、土蜘蛛に食われる事で寿命を全うする]
[そんな理不尽な事も、世の中には有るんだ]
「……………………………………」
「流石に言葉も無いか?」
「……本当なのか?」
「さて、それは神のみぞ知るだろ?」
[話はここまでだ]
[どうやら、相手が来た様だ]
狐と蛇が視線を向けた先から、ズルッズルッという不気味な音が聞こえて来る。その音がだんだんと大きくなり、やがて暗闇から姿が見えて来た。大きな蛇と巫女の上半身と蛇の下半身を持つ、いかにも化け物といった2匹が姿を表した。
【我等をお待ちの者共が居るな?】
【儂達の邪魔をするとは……命知らずめらが】
[俺に対して言っているのか?この馬鹿者共めが!]
九尾の狐は本来の姿に戻った。圧倒的な威圧感と、一目見ただけで恐ろしさが分かる。
[短気な奴め。しょうがない、私も本来の姿になるとしよう]
蛇神も大きな白蛇の姿になった。こちらも圧倒的な威圧感である。
【蛇神!?】
【九尾の狐!?】
[ほう、俺を知っているのか?感心感心]
[お前等は、少しやり過ぎだ]
【我等を止めるつもりか?】
【やろうってんなら、相手になるぜ?】
[はっはっは、止める等とは……そんな生易しい事等しない]
[ここで、お前達は完全に消える。それが運命だ]
【我等を消す?】
【出来るのか?】
[出来るさ。俺達は、お前達を叩きのめせばいい]
[そう、力のままに叩き潰す。お前達が、動けなくなるまでな……後は……]
「おう、俺に任せろ!」
【貴様は何奴?】
【たかが、人間風情が!】
[馬鹿の極みだな?時一族だぞ?]
[お前達が消える事は決定事項だ。その前に、今までの事を後悔するといい。生まれて来た事さえ、恨むくらいにな!]
【時一族だと?】
【……好き勝手にやられてたまるか!】
我蛇丸と姦姦虵螺は臨戦態勢に入った。それと同時に、九尾の狐と蛇神も臨戦態勢に入る。
「お?遂にやるか?楽しみだな、剛?」
「……………………………………」
「立ったまま気絶してる……器用な奴だな~……」
これから激戦が繰り広げられそうだというのに、守人は違う所に感心している様である。
遂に相対する時!