崇めていた物は邪悪!?……其の2
解決の為に!
剛は買い物を終えた。ビーフジャーキーが気になるらしく、何度も首を捻っている。その証拠に、守人と落ち合うとすぐに質問した。
「ビーフジャーキー、どうすんだよ?」
「必要なんだから、しょうがないだろ?」
「どう必要なんだ?」
「少しすれば分かるよ」
「その少しが嫌なんだよ!」
「……我が儘だな~……」
「ふざけんな!」
守人、企んだ笑顔を見せながら、剛の質問をかわしていた。
買い物で買った荷物の入ったリュックを持った剛、守人と一緒にとある山の中に入って行った。守人の後を歩く剛、守人の入った洞穴の中に入る。やはり、入るまでは洞穴に気付かなかった。
「守人、狐だろ?」
「まぁな」
「……狐だけじゃダメなのか?」
「さて、どうだろ?」
2人が話していると、目の前に九尾の狐が表れた。
[剛、随分と久しぶりだな?]
「そう?この前会ったと思うけど?」
「剛、あれは江戸時代だぞ」
[守人と一緒だと、時間の流れが狂うだろ?……俺は数百年振りだ]
「数百年……流石は九尾の狐……」
「あ~……確かにそうなるな……これ、いつもの奴ね」
[悪いな……で、今回の用件は?]
「そうだな~……我蛇丸を始末するってのはどうだ?」
[我蛇丸を始末だと?……面倒な依頼を……]
「……あの~……九尾の狐でも、その~……今度の魔物は難しいですか?」
[誰に物を言っている?]
「剛~、素直過ぎだよ~。狐にも、ちっぽけなプライドが有るんだから~!」
[何だと?……守人、聞き捨てならんな?]
「……大蛇丸とどっちが厄介ですか?」
[変わらん……と言いたい所だが、我蛇丸だろうな……元は変わらんが、我蛇丸は色々とやったからな]
「剛~、そんな心配な顔すんなよ~。確かにこいつは、大蛇丸でさえ苦戦してたけどさ~……」
[待て!圧倒してただろ?]
「嫌だね~、年寄りはすぐに事実を捻曲げるからね~……」
[……ほう、死にたいのか?]
「まあまあ。でも、何でそんなに歯切れが悪いんですか?」
[……色々と有るんだ……]
「姦姦虵螺、知ってるか?」
「何だそれ?」
「その昔、物凄く強い大蛇が居た。その大蛇が村を襲っていたのだが、その大蛇を退治しようとした巫女が居た」
「……倒したのか?」
「いや、巫女は大蛇に食われたんだ。それも、村人達が巫女が不利だと分かると、大蛇に村と引き換えに巫女の命を差し出してな」
「……胸糞の悪くなる話だな」
「その姦姦虵螺が我蛇丸に着いている」
[そう。2匹同時は、ちときつい]
「こいつは弱いからな~……」
[馬鹿にしてるのか?……しかし、きつい事は確かだ]
「大丈夫!助っ人呼ぶから!」
「……ビーフジャーキーか?」
「その通り!」
[!?……あいつを呼ぶのか?]
「オフコース」
[……あの馬鹿を……面倒じゃないか?]
「……九尾の狐が狼狽えて……そんなに凄いのか?」
[狼狽えて等いない!]
「大丈夫なんだが……狐と相性が悪いんだよ……さて、そっちに行くぞ」
[……今回は、しょうがないから手伝ってやる……あの馬鹿にも言っておけ!]
「へいへい、伝えときますよ~……」
「……守人、大丈夫なのか?」
「おう、多分な!」
「……心配だ……」
笑顔の守人と複雑な表情の剛、次の目的地に向かった。
九尾の狐の棲みかから少し離れた山、そこにも不思議な洞窟が有る。狐の時と違い、少し地下に向かっている洞窟。やはり、守人が入るまでは剛は気付かなかった。
「……狐みたいのに助っ人をお願いするのか?」
「確かにそうだが、狐とは違うな」
「……もしかしなくても、ここでビーフジャーキーだよな?」
「オフコース!成長してるね?」
「この野郎……」
話をしながら奥に向かう2人、
[何の用だ?]
奥から声がする。明らかに威圧感が有る。
「俺だ。借りを返して貰おうと思ってな」
[……歓迎したくないが、しょうがないか……少し待っていろ]
話が終わると、ズルッズルッという音がこちらに近付いて来る。
[待たせたな、守人]
守人と剛の目の前に、巨大な白蛇が姿を現した。
「こ、こいつは……」
剛は腰を抜かし、地面に座り込んでいる。
「剛~、みっともないぞ」
「馬鹿!誰でも腰抜かすわ!」
「大丈夫だよ、こいつは蛇神様だから」
「蛇神様?」
[まぁ、私は一応は神を名乗る者。むやみやたらに殺生はしないさ]
「本来なら、龍神になって色々とやるんだが……こいつは変り者でね。龍神にならずに、蛇神としてこの地に居るんだ」
[守人程変わっておらん]
「確かに……守人の方が変わってるな」
「何処に納得してんだよ!……時に、借りを返して貰おうか?」
[しょうがあるまい。して、どんな依頼だ?]
「我蛇丸を消す」
[!?……姦姦虵螺も居るだろ?]
「両方消すさ。協力してくれんだろ?」
[……2体相手は……]
「大丈夫。狐にも協力依頼した」
[狐だと?……あやつは面倒だ]
「そう言うな。剛、ビーフジャーキーを」
「お、おう……あの、これ……」
[お~、これは有難い!……恩も有るし、協力するとしよう]
「物に釣られやがったな。神様の癖に」
[手伝うんだから、構わんだろ?]
「あの~……守人にどんな恩が有るんですか?」
[……恩人を助けて貰ったのさ]
「恩人?」
「こいつはな、まだ普通の蛇だった頃に罠に掛かったんだ。その頃のその村は大飢饉でな、こいつは食料にされかけた。それを救ってくれた子供が居たんだが、その子供は村人達に殺されたんだ。大事な食料を逃がしたってな」
「それだけの事で?」
「いや、飢饉てのはそれだけ厳しいんだ。こいつは助けられ、こうして力を付けた上で、俺にその子供の救助を依頼した」
「成る程、それで恩か」
「お前も少しは関連してるんだぞ?」
「俺が?」
[そう、本当に感謝している]
「……何をしたんだ?」
「桑門を覚えてるか?」
「おう、大蛇丸のだろ?」
「そう……あの桑門こそ、こいつを助けた張本人さ」
「はい?……話が見えねぇぞ?……大体、桑門さんは江戸時代の……」
「助けた子供の記憶を消して、江戸時代に連れて行ったんだ。そして、とある寺院に預けた」
「記憶を消す?」
「おう、俺の能力だ。剛が知らないのは、これで最後かな?」
[大蛇丸の時、桑門を助けて頂き感謝する。ありがとう]
蛇神は剛に頭を下げた。
「……情けは人の為ならずだな……」
「それに、今回は蛇が絡んでるんだ。こいつは適役さ」
「……しかし、守人は蛇神様に対しても失礼だな?」
「しょうがないだろ?俺のが偉いんだから!」
「罰でも当たれ!」
[はっはっは、仲が良いな!結構結構!……守人、昔とは顔が違うぞ?]
「大きなお世話だ!」
九尾の狐に加え、蛇神も今回の事に協力となった。何となくだが、解決となりそうな予感がする。
新たな仲間?




