クリスマスに降る雪……其の2
怪しい2人……守人と剛、確かに怪しい……
守人と剛は茜を連れて近くのファミレスに行った。
「ここでなら、好きな物を頼んでいいそうだ」
「……少し遠慮してくれると助かる……」
「馬鹿なのか?女の子に奢るんだぞ?」
「嬉しくねぇし……」
「嬉しがれよ!お前の人生じゃ、そうそうねぇだろ?」
「無くて結構!奢りたくねぇんだよ!」
「……プッ……アッハッハッハッハ!食事を誘っておいて、この会話何?」
「だってさ~、守人はいつもこうなんだぜ?」
「お前がいつも足引っ張るからだろ?」
「引っ張ってねぇよ!」
「自覚が足りないんだよ」
「買い物とか、上手くやってるだろ?」
「その買い物のせいで、今はお前が奢るんだろ?」
「……漫才師か何かですか?」
「「違うわ!」」
「答えが息ぴったり!」
もしかしなくても、とても良いコンビである。
最初こそ、茜は2人を怪しく思っていたのだが、この掛け合いを見て態度が変わった。少なくとも、悪い人には見えなかった様である。
「所で、私に用事は何ですか?」
「……率直に聞くけど、病気だったんだろ?」
「!?……どうしてそれを……」
「誰にも言ってないのにってか?……だから言ったろ?俺達は未来から来たんだ」
「……信じろと言われても……」
「……難しいよね?いきなり目の前に、未来の息子ですなんて来ても……俺も無理だな~……」
「お前はどっちの味方なんだ?」
「そりゃあ……やっぱり、綺麗な人に決定だな!」
「ほ~う、なら、私も女装しましょうか?」
「辞めろ、気持ち悪い!」
「……M-1目指してるとか?」
「「だから違うって!!」」
なかなか話が進まない。
「とりあえず本題だが……そうだ、あいつに頼もう!」
「あいつ?」
「おう、出て来いこの野郎!」
守人が語気を強めると、入り口から1人の男が入って来た。見た目は違うがこの感じ、間違いなく死神である。
「……人使い荒いですよ?」
「人じゃねぇだろ!大体、お前も関わってんだ。協力しろよ」
「……分かりましたよ……では茜さん、私から説明しますね」
「あなたは誰ですか?」
「私は……」
死神は自分の面を外した。死神と言われると馴染みの顔が出て、死神はすぐに面を戻した。
「分かりました?」
「……はい、多分……」
「大丈夫ですよ。凄くいい奴なんで」
「剛君、それはそれで困るんですよ……さて、本題です。ドクターから、何て言われました?」
「……持って1年だと……」
「それで私に会うと、現実味が湧きますか?」
「……はい……」
「しかし、1年では死にませんよ。それは私が保証します。しかし、ずっとという訳にもいかない……分かります?」
「はい、物凄く分かります」
「まぁ、今は司さんとの時間を大切にして下さい」
「……死神さん、優しいんですね?」
「辞めて下さい。仕事に支障が出ます」
「それでなんだが……その司がさ~……」
「……その話し方だと、未来の守人ですね?」
「おう、悪いか?」
「そんな事、言ってないでしょ?捻くれてるな~……」
「……死神さんも、漫才師の仲間じゃないですよね?」
「誓って違います」
「待て、俺も漫才師じゃないぞ」
「説得力が無いんですよ。剛君が居ると、余計にね」
「俺まで巻き込むなよ」
「巻き込まれたのは私ですよ!」
「……ここだけ見てると、楽しい催し物みたいですね」
「催し物って……」
「確かにな~、死神に見えねぇ物な~!」
「それは言えてる!」
「あのねぇ……君達が悪いんでしょ?」
「自覚はねぇぞ?」
「俺も無いな」
「……これだよ……」
「死神さん、ご苦労様です」
「いやいや、とりあえずはこれで失敬」
死神の姿は消えていった。
「……誰にも気付かれないとは、流石に死神」
「まぁ、話が分かり易くて助かるけど……自分の最後を伝えられた訳だし……」
「いえ、逆に安心しました。残された時間もまだ有るし、司と目一杯楽しみます!」
「その目、それなら安心だ。病院の時は、ヤバかったからな」
「確かに、もう安心だね」
「はい、頑張ります!」
「じゃあ……いや、大切な用事が有った!」
「剛、忘れてたの?」
「いや~、解決だと思っちゃったよ~……すまん……」
「は~……疲れるな~……あのね、茜さん」
「はい」
「実は……その司が問題でさ……」
「司が?」
「そう……君が居なくなって、物凄~く落ち込んでて……」
「それこそ、勝手に死にそうなくらいに……」
「え?司が?……どうして?」
「雪の降るクリスマス……何か心当たりは?」
「……有る……ホワイトクリスマスに、一緒に願い事をしたいって……司、ずっと思っててくれたんだ……」
「そこでだ!君はこれからの人生を今の司と楽しく過ごすとして」
「……未来の司に、しっかりと別れを告げて欲しいってか?」
「流石は剛、その通りさ!」
「……私に、何が出来ますか?」
「そりゃあ……最後の思い出と、踏ん切りを付けさせる事だな」
「確かに、茜さんにしか出来ない事だね」
「……でも……司に、ずっと想っていて欲しい気持ちも有るし……」
「それでも、自分を追って来て欲しくは無いだろ?」
「知ってる?自殺は地獄行きなんだってさ」
「……地獄は困る……司には、幸せにはなって欲しいし……」
「なら、未来のあいつを頼む」
「辛いとは思うけどさ」
「……頑張ってみる……」
キーマンとなる茜を何とか説き伏せた2人、この依頼も解決へと導きそうである。
死神を入れて、トリオの漫才師!